表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/32

みよたみのりのこのはなだより 2022年5月14日オンエア

 この小説は、作者が「星空文庫」で執筆している『宗教上の理由』シリーズの世界設定を使ったスピンオフです。上記小説を読みたいという方は、星空文庫にて作品名または作者名「儀間ユミヒロ」で検索をお願いします。

 もちろん、この小説単体でも話がわかるようにしておりますので、安心してお読み下さい。

 山奥にあるという設定の、架空の小さな村、このはな村。この村にあるコミュニティFMを舞台に、小学生DJのおしゃべりを文字でお送りする、ちょっと変わった形の小説です。

 架空のラジオ番組の文字起こしという体裁のため、文法や文中記号の使い方が本来のルールとあえて異なった形になっている点をご了承願います。原則として地の文はメインパーソナリティのおしゃべり、カギカッコ内は他の登場人物のおしゃべりです。

また、この小説は言うまでもなくフィクションです。

 もう他人任せでは、いられない!


 みなさんこんにちは。みよたみのりです。三週続いてのこのはな村営バスの紹介、今週はボク自身がバスに乗ってリポートします。先週バスからリポートしてくれた松山さんごちゃんと伊佐リサちゃんは、スタジオで音響をしています。その様子がボクのタブレットにも映っているんですが……、なぜかバス停案内係の屋代杏さんがディレクターをやってます。このはなFMのディレクターは、局の代表さんがやってもいいよ、って言えば出来るし、杏さんも今日は案内の仕事お休みだから別にいいんですが、なんでさんごちゃんとリサちゃんを膝の上に乗せてるの……。その上でボクに向かって画面の向こうから投げキッスとかしまくってくるんで、うっとうし過ぎるんですけど……。

でも気を取り直して! コノハナサクヤヒメに守られし神の村、このはな村からお送りする、みよたみのりのこのはなだよりー!


 みよたみのりのこのはなだより。今日はボクみよたみのりが、村内を巡る子バスに乗ってお送りしています。先週の二人は村内を回るバスのうち、右回りのバスに乗ってましたが、今日のボクは左回りに乗っています。この左回りのバスは、まずレジャー施設が集まってるあたりを走るので、停留所に着くたび、お客さんが何人か降りていきました。そして今は、道の両側に別荘や住宅が並んでいるところを走っています。でも、このはな村では別荘も住宅も同じような作り方をしてるし、家より庭が広いので、両側には木がたくさん生えていて、林の中を走ってる感じで、気持ちいいです。


 先週の放送のあと、コメント沢山いただきました、ありがとうございます。えーっと、紹介しますと、

「キャッシュレスじゃ無いの?」

わー、いきなりこれ来ましたねー。そうなんですよ、村営バスは現金オンリーなんです。で、乗る時に運賃払うんですが、最近はICカードで乗れるバスが、このはな村みたいなイナカでも増えてますよね。だから、現金だけですよー! というのは、しっかり書いて欲しいですねー。やっぱ使えると思って乗ったら使えなかった、なんて人いるみたいですから。ちなみに、キャッシュレスは導入するのにお金がかかるから、このはな村では難しいみたいです。

 つぎ。

「今ちょっと聞こえたんですが百円で乗れるんですか?」

あ、これは先週さんごちゃんが、バスに乗ってからまごまごしてた人を実況中継してたときの感想ですね。そうです、百円で乗れます。このはな村を出ない限り村営バスは百円で乗れます。それに、この子バスから隣町との行き来をする親バスに乗り換えたときも、村の中で降りるなら追加運賃は不要で百円です。あと村の外まで行く時も割引運賃になります。親バスも、村内でだけなら百円です。

 「なんで、そんなことできるの? 赤字じゃない?」

あ、今送られたコメントですか? えーと、ご質問にお答えしますと、黒字です。このバスって、お客さん結構沢山乗るんですよ。おととしから観光のお客さんは少ないですけど、地元のボク達はよく乗ります。なんでか、って言ったら、うーん、たとえば、子バスは右回りが出た三十分後に左回りが、というふうに田舎にしては本数が多いしぃ、時刻によっては、右回りの方が道のりは近いけど、左回りが早く来るからそっちの方が先に目的地に着くということもあるんで、そういう時は、一時間に二本のバスに乗れるということになるんです。

 「ブーッ」

バスが停車しました。あ、このバスを降りるときの合図もちょっと変わってて、先週の右回りバスはどんな音だったか、覚えていますか? コメントは、分かんないって人が多いのかな? えーっ、さんごちゃんも忘れたの?

 しょうがないなあ、正解は、と、その前にスタジオから一曲お願いしまーす。


 はい、曲が終わったので正解を言うと、先週のバスは、

「ちーん」

でした。ベルとブザーの違いです。これは右回りと左回りで分けてるんじゃなくて、結構バラバラなんです。キンコーン、ってチャイムのバスもあります。なんでバラバラなのかっていうと、バスは全国から不要になったバスを譲り受けた中古車だからです。コミュニティバスって、赤字で廃止される所も多いみたいで、そういうところから超安くて、ちょっと古いけどちゃんと動くってくらいのバスが買えるそうです。でもちょっと古いから、走らないとかは無くても、ちょっとした故障、特に、とまりますのボタンとかは壊れやすいみたいです。

 だから、止まるときに押すボタンが一個壊れると全部外しちゃって、ロープ式にするんです。バスの窓の上と天井にヒモを張って、子供とかでも手が届くように細いヒモをぶらさげて、それを引っ張るとベルとかブザーとかチャイムが鳴って、運転手さんに降りたいと伝えられるんです。なんでロープかって言うと、壊れにくいからだそうです。ボタンは一個壊れると、直してもまた別のが壊れたりするから大変なんだそうです。


 「発車しまーす」

バスが再び動き出しました。曲の間も何度か停車しました。ここからはしばらく畑の中を走ると、林に入って少し上りになります。だからバス停はあまり無くなります。

 あっそうそう、このバス、さっきからとても車内が静かだと思うんですが、これは車内アナウンスが無いからなんです。なんで無いかっていうと、道が狭いしカーブや坂道も多いので、運転手さんがアナウンスのボタンを操作するのが危ないからです。じゃあどうやってバス停の名前を知るかといいますと、

「見る! 窓の外見てりゃ分かる!」

はい、ありがとうございます。あーんと、さっきからずーっと話したくてたまらないといった感じでボクににじり寄って来るこの方は、

「皆さん初めまして〜。霧積綾香でーす。このはな村で農家をやってまーす」

綾香さんこんにちは〜。綾香さんは農家をしながら、このはな観光協会の、

「きぃーーっ、ぴたっ。ばったん」

「おっと、バス止まった。出番出番、見といてねー」

あ、はい。今バスが止まって、お客さんが乗って来ました。って、お客さんの様子は実況しちゃまずいから、綾香さんの様子を見ます。

「ばったんこ」

「発車しまーす」

綾香さんお帰りなさーい。今はどんな感じだったんですか?

「ん? オンリーネコはすぐわかったした行き先のバス停も知ってるんさ。でもバス停を目で見つけるのは難しいっていうから、私か運転手が教えてあげる事になったん」

はーい、ありがとうございます。そうなんです、行き先のバス停が近づいたら、運転手さんや村人の他のお客さんが教えるんです。あと、オンリーネコという言葉の意味は、オンリーキャッシュがオンリーキャットになってオンリー猫になったみたいです。オンリーにゃんこと言う人もいます。

「こうやって村のもんが手伝ってるから、バスも安く走らせられるんさね。いちいち、えーあーうー、だか? 昔の総理大臣の口ぐせみたいなもの使わなくても、人が何とかすればいいんさ」

はーい、うーん、綾香さんが言いたかったのはAIだと思うんですけど、そういう機械とか買わなくても人間がやれることなら、わざわざ村のお金出して高い買い物しなくてもいいじゃないか、というのが村のやり方なんです。ね? 綾香さん。

「そうよ? つったって、機械を使った方が楽になるなら機械は使うけどね? でもバスの降りるところなんて客同士教え合えば済むことなんだから、わざわざ録音とかして流す事なんて意味無いさね」

なるほど! そっか、そうやって村のお金を節約してるから、バスもたくさん運転できるし、地方、なんとか税不幸じゃなかったふくふくふかふかうんにゃらかんにゃら団体、なんですねー?

「こらー、言いたいことは合ってるけど名前が間違ってるー。地方交付税交付金不交付団体でしょ? まいっか、社会の授業でそのうちやるでしょ。このはな村は、地方交付税が出来てからずっと不交付団体なんだってこと」

はーい、勉強しまーす。


 まよたみのりのこのはなだより。そろそろお別れの時間です。今日はこのはな村営バスに乗ってお送りしました。外の景色とか、あんまりお話できなかったんですが、雪もほとんど消えて、畑に色々作物が植えられて、木々の緑も増えてきました。

「ぶおぉぉぉー、ぴたっ。ばったん」

バスは、ちょうど今このはな村の一番奥にある天狼神社前バス停に到着しました。ここで何分か停車して時刻を調整します。こうやってダイヤに時間の余裕があるので急いでバスを走らせなくてよいのも、村営バスの特徴です。そしてちょうど良く番組もお別れの時間になりました。

 それでは、みよたみのりのこのはなだより、今週はここまで、また次回、よろしくお願いしま〜す。


 あっ、大事なこと言い忘れてた。小学生は、むりょ……。





 バスは時間に余裕を持って運行するけど、みのりちゃんのお喋りは時間に余裕が無かったようです。

 旅に行ったときの、地元のバスあるある、まだまだあります。よくあるのは、バス会社が違うと乗り継ぎが出来るかどうか分からないこと。テレビの路線バス乗り継ぎ企画でもよくありますが、バス会社ごとに営業エリアが分かれてるからその境界とかで隣のエリアのバス会社についてよく分からないとかって話。

 バス会社の境界と市町村の境界が重なるともっと厄介で(しかもよくある事)地図で見ると山上の楽園に湖が点在しててそれらを巡るのと楽しいと思うんだけど、点在エリアを分断するように市町境があって、バス会社も市の方は民営、町の方は公営で、民営の方は駅から乗れて便利なんだけど、そこから乗ると下手すりゃ公営バスがあることすら気づかない。

 そういうところも突っつきたかったんですが、話が冗長になって来たので今回はここまでにしようと思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ