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みよたみのりのこのはなだより 2022年5月7日オンエア

 この小説は、作者が「星空文庫」で執筆している『宗教上の理由』シリーズの世界設定を使ったスピンオフです。上記小説を読みたいという方は、星空文庫にて作品名または作者名「儀間ユミヒロ」で検索をお願いします。

 もちろん、この小説単体でも話がわかるようにしておりますので、安心してお読み下さい。

 山奥にあるという設定の、架空の小さな村、このはな村。この村にあるコミュニティFMを舞台に、小学生DJのおしゃべりを文字でお送りする、ちょっと変わった形の小説です。

 架空のラジオ番組の文字起こしという体裁のため、文法や文中記号の使い方が本来のルールとあえて異なった形になっている点をご了承願います。原則として地の文はメインパーソナリティのおしゃべり、カギカッコ内は他の登場人物のおしゃべりです。

また、この小説は言うまでもなくフィクションです。

 観光立村このはな村、お陰様をもちまして今年のゴールデンウィークは、


 閑古鳥鳴きまくりでしたぁー!


 みなさんこんにちは。みよたみのりです。ゴールデンウィーク、全国各地で行楽に出掛けている方が多いようですが、このはな村はそれ程でもありませんでした。お陰様で昨日も村民の新型ウィルス感染者はゼロ。これでおととし日本初の感染者が出て以来続く感染者ゼロ記録がまた更新されました! すごい!

 それでは、コノハヤサクヤヒメに守られし神の村、このはな村からお送りします、みよたみのりのこのはなだより。今日も元気にお送りしまーす。


 みよたみのりのこのはなだより。本日はスタジオからお送りしますが、ボクのお友達、松山さんごちゃんと伊佐リサちゃんが、このはな村営バスに乗っています。さっそく呼んでみましょう。さんごちゃんとリサちゃーん!

「こんにちはー。松山さんご、でーっす!」

「こんにちは。伊佐、リサです」

こんにちはー。で、二人が今日バスに乗っている理由は、先週このはな村営バスの紹介をしようとしたところ、バスの乗り換え案内をしている屋代杏さんがボクとイチャイチャする方に必死になって全然紹介が進まなかったので、今日は二人にバスに乗ってもらって、紹介することになりました。いま、どの辺を走ってますかー?

「はーい。あ、さんごでーす。バスは駅からやってくる大きな親バスの通るメインストリートを少し戻ったと思ったら、すぐ曲がって、保養所通りに入りましたー」

おー。ということは村の中をぐるっと回る子バスに乗ってるんですね。あ、先週聴けなかった方のためにおさらいをしながら番組進めまーす。このはな村営バは、隣町の駅と村とを結ぶ親バスと、村内を回る子バスに分かれています。子バスは名前の通りちっちゃいバスで、細い道路も走れます。それで、保養所通りということは、え、あ、はい。

 失礼しました。村の外で配信で聴いてる方は保養所通りといっても分かりませんね、いまディレクターさんから言われて気がつきました。この保養所通りというのは、東京とかにある学校や会社の研修所とかセミナーハウスとか何とかいうのがいっぱいあるので、保養所通りと呼ばれてます。道の真ん中には、木が生えるくらいの立派な中央分離帯があって、歩道も広いのですが、かわりに車の道は狭いです。だから、ちっちゃいバスがピッタリです。それでは、今バスに乗ってる^_^気分ってどんな感じですか?

「はい、あ、リサです。わたしは初めてここ通るんですけど、緑がいっぱいで、気持ちいいです。保養所は道からずっと奥の方にあります、あ」

「ちーん」

「あ、バスが止まりました。お客さんが降りていきます」

おっ、グッドタイミングですね。子バスは保養所通りではどこでも乗り降り出来るんですよねー。

「そうですねー、とっても便利だと思います」

うん、それに保養所一軒一軒に停留所作ると大変ですからねー。乗ってくる人はいますかー?

「あ、さんごでーす。まだいない、あ、いた! 学生さんかな? なんか、おそるおそる手を挙げてまーす」

あー、バスあるあるですねー。最初乗る時って、乗り方が合ってるか不安ですよねー。

「だからー。ウチもすごく不安でしたよ、でも村営バスは心配無用ですからー」

だよねー。だってー、

「あ、乗ってきた乗ってきた。お、ICカード持ってるけど使えないの知らないみたいで戸惑ってます。財布に手を取って、いやスマホだ、スマホ決済したいみたいだけどそんなん無い無い、お、やっと財布出した。運賃は百円均一だってば、五十円二枚でも十円十枚でも良いんだから早よせーやー、わじわじするー、ふー、ようやく払ったよ。よししゅっぱーつ!」

 おー、さっそく出ました、手を上げてバスに乗る人。あとさんごちゃんも言ってましたが、子バスはおとなでも運賃百円です、あ、さんごちゃーん、

「んー?」

ディレクターさんから話あるってー。その間に曲掛けるねー。それでは、えーと何曲目だっけ? あーこれこれ。うん、只今パーソナリティ自らCDを掛けるワンパーソンスタイルの生放送でお送りしています。それでは、umyuこと下黒石魔香、「来世で逢いたい」。


 「来世で逢いたい」お送りしました。えーこの間に、バスはどこまで進みましたか? さんごちゃーん、リサちゃーん?

「あ、はい、リサです」

はーい。リサちゃんは、きちんとしたリポートは初めてだよね、大丈夫、緊張してない?

「だ、大丈夫です」

えー、先ほど松山さんごちゃんが、バスに乗ってきた人の様子を実況したことで、ディレクターさんに怒られてショボンとしてるので、代わって伊佐リサちゃんがメインでお話してくれます。それで今、どの辺ですか?

「はい、今は村の北側の道に来ています。このはな村は台地の上なのですが、その端っこで、道路の下の方にも高原が広がっていて、ゴルフ場とか牧場が見えます。あ、バスが停留所に着きました」

お、着きました? 停留所の名前は何ですか?

「牧場南売店前・ノースカニョン九番地です」

はい、ありがとうございます。今リサちゃんが読んでくれたバス停の名前は、画期的なんですよ。なぜかというと、バス停の名前って地元の人じゃないと分からないような名前って多いんですよ。牧場南売店と言ったらボクたち村人は分かりますけど、スマホのマップアプリとかだとここはどこなのかってのが分かりにくいことがあるので、こうやって番地を付けて調べやすいようにしたんです。こういった細かいところに気を配って、バスを運営しています。

 

 ここで、村からのお知らせです。

 先週お知らせしました、適格請求書等の保存についての制度変更に関してのお知らせです。今回から、分かりやすくこの制度とそれに伴う村の対策について説明します。

 今日の一例。年間の売り上げが一千万円未満の工場で作った部品を、一千万円を超える売り上げがある問屋が仕入れて、同じく一千万円を超える売り上げのある小売店に卸すとします。この場合、工場から問屋、問屋から小売店に売る際、それぞれ消費税が発生しますが、実際は小売店で買い物をする人を消費者と呼びますので、繰り返し消費税が取られることになります。

 この消費税をダブって納める状態を解消するため、問屋と小売店は、仕入れ飲み時に余計に払った分の消費税を、手続きすることで返してもらえます。ところが新たな制度が実施されると、適格な請求書というものを工場からもらわないと、余計に払った消費税が戻ってきません。

 ところが、この工場は売り上げが少ないので、消費税の支払いを免除されていて、そのためにこの適格な請求書を出すことが出来ないのです。消費税を納める事を免除されることによって、売り上げの少ない工場は助かっています。その場合、この適格な請求書を出すことができないのです。

 ではどうすればいいかというと、問屋が払い過ぎた消費税を返してもらうのをあきらめるか、工場がそれまで免除されていた消費税を払うようにして、適格な請求書を書けるようにしなければなりません。しかし問屋も、これまで返してもらえた余分な消費税を返してもらえなくなっては困りますので、適格な請求書を出すことの出来る別の工場に乗り換えるかもしれません。すると工場は製品を卸す先が無くなるので、少ない売り上げの中から消費税を納めるか、仕入れ先への値段を無理して下げるほかありません。

 したがって、売り上げの少ない事業所への負担は高くなると予想されます。このはな村ではこの負担を軽減するための施策を検討中です。詳しくは今後もさまざまな方法でお知らせして参ります。

 以上、村からのお知らせでした。


 みよたみのりのこのはなだより、もうすぐお別れの時刻です。今日はこのはな村営バスから、車内の様子をリポートしてもらいました。リサちゃーん、今どの辺ですかー。

「はーい、今は台地のへりから離れて、七草が原の中を走っています。秋の七草が全て見られると言われているところで、まだ雪は残ってますが、ところどころにある低い木に、新しい葉が出てきています」

おー、いよいよ春ですねー。この七草が原はもう少しすると春の花がどんどん咲いて来ますので、ハイキングにぴったりです。ゴールデンウィークのうちはまだ雪が中途半端に残ってるので、観光には向いていないかもしれません。

 それではお時間となりました。お相手はみよたみのりと、バスの中からの中継は、はいどうぞ。

「伊佐リサでした」

今日もお聴きくださり、ありがとうございます。それではまた来週、さような」

「待ったー、最後くらいしゃべらせろー!」

あ、さんごちゃんはダメー! さっき言われたでしょ、他人がバス乗るのにまごまごしてるのを公共の電波でばらしたりしたらダメだって! 今日はおとなしくしてなさーい!

「ええー? いやうち反省してるしー。もう実況しないからさー、さっきの人小銭足りなくて二円おまけしてもらってとか言わな」

切りますよ、はい、皆さんさようなら〜。


 

 ゴールデンウィーク明けの仕事始め二日目、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 今回も前回に引き続きバスの話です。「このはな村」という設定が僕自身の願望を相当量投影して作られたものなので、この村営バスについても「こんなバスだったら使いやすいのに」と僕が思う理想像が反映されています。なにせ、鉄道は日本中どこに行ってもたいがいどんな風に乗るのか想像が付くけど、鉄道の駅を出たところにバスが待っていたとして、これは乗っていいバスなのか、自分の行きたいところに行ってくれるのか、そういうの意外と分かりにくいものです。観光地ならともかく、ちょっと外れると路線図を探すのも一苦労、なかには路線図がサイトではなかなか見つからず、逆がバス停の名前を知ってる体で乗り換え案内アプリに丸投げしちゃってたり、グーグルマップを流用してたり。普段乗ってる人じゃないと乗るのに勇気が要るというのでは、なかなか乗客も増えないと思うのですが。

 村営バスのくだりだけで、結構かかってしまっていますが、少なくとも次回くらいまでは理想の路線バス像を突き詰めていきたいです。

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