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魔人の国の色んな意味でヤバい女秘書  作者: グレファー
第3話 八方美人さがヤバい女秘書
9/76

3-1

 ソフィの衝撃告白から数刻置いて、リズロウはようやく落ち着きを取り戻した。ほぼ半裸のソフィに自分のガウンを着せてやり、ベッドに座らせようとするが、ソフィが自分のガウンをにんまりしながら握っているのを見てキモイと思い、さっさとテーブルに座らせた。


「えーじゃあ出自の方は嘘偽りなくて、マジでアホな考えでこっちに来たわけね君は」


「な……なんか口調変わってません……?」


「こっちが“素”なんだよ俺は。魔王の座を引き継ぐまでは世界中放浪してた放蕩息子だからな。で、お前の目的の官能小説なうんうんかんぬんについて? 別にアスクランに来なくても、そっちで問題なくできるじゃねーか。なんでこっちに来たんだよ」


 リズロウはソフィ相手に取り繕うことをやめて、完全に素を出すことにした。それはソフィが思った以上に底の浅い人間だと思ったから――だけではなく、リズロウがソフィを信頼していることの表れでもあったが、互いにそこまで頭が回っていないようだった。ソフィは照れ隠しをしながら話す。


「その~……私、向こうじゃちょっとした有名人になっちゃいまして」


「……まあ、なんかしでかしてそうだけど、聞くと頭痛が痛くなりそうだからさっさと続きを話してくんねえか」


「なんですかその負の信頼感は……。まぁですので、私の目的を果たすにはちょっと都合が悪くてですね……。なら私を知らない魔人の国に行って一旗揚げたるわい! って思って来たわけです」


「わざわざこっちに来なくとも、西大陸から離れて北大陸とか、東大陸とか選択肢は無かったのか?」


 ソフィはリズロウからの最もな反論にどう答えるか少し悩み、そして先ほどのふざけた様子をなくし、真面目な口調で答えた。


「……私は過去に魔人に命を救われた事があるんです」


「ほう……」


「今となっては名前もわからないんですが、その経験があって、大陸を離れるよりも、魔人の国に行ってみたいという気持ちがありました。……信用します?」


 ソフィはおずおずとリズロウに尋ねた。筋は通ってはいるが、魔人に人間が命を救われたという点は確かに不自然ではあった。いつ救われたかはわからないが、まだ戦争中であった時期なのは間違いない。だがリズロウはその言葉にうなずいた。


「いや……信じよう」


 その理由があるなら面接の時に話せばいい、とはリズロウも言わなかった。――恐らくそれが信じられるようなものではないとソフィもよくわかっているのだろう。だがリズロウはそれを信じることにした。


「とりあえず……その……目的の方のがよっぽど信じたくないが、お前がスパイじゃないという事は信じることにした。お前を解雇しようにも、城の者たちがお前のやり方を吸収するのにあと半年は必要だろうからな……。とはいえ」


 リズロウはソフィの全身を値踏みするように見る。リズロウからの視線を感じたソフィは恥ずかしがって身体を隠す。


「な……何ですか……?」


「いや。……率直に言って、お前はこの国じゃモテないぞって言いたくてな」


 ソフィはリズロウの言葉にショックを受け、涙目で詰め寄った。


「な……! なんですかあ! 私絶対美人な方でしょう!? 決してブスじゃな……!」


「いや、この国ではブス寄りになるんじゃねえかな……」


 リズロウからの遠慮のない言葉にソフィはショックを受け、顔を崩して泣き始めてしまった。


「しょ……しょんなあ……うええ~ん……」


 流石の魔王も女の子の涙には勝てないのか、ソフィを慰めるように慌てて訳を説明した。


「違う違う! “この国”ではって言ったんだ!」


「ど……どういう意味ですかあ……」


「あ~……それはだな」


 アスクラン全体の人口は1000万ほどであり、アスクラン城下町には30万もの魔人が暮らしている。そして数十の種族が存在し、異種族婚も行われている。――が人間が基本的に同じ人種同士が惹かれるように、魔人も基本的には同じ種族同士で寄り合っている。


 言ってしまえば別の種族の異性に惹かれるのは20人に1人ほどの少数であり――とはいえ1000万人いれば50万人以上はおり、そして年々その割合は増え続けていた。


「……で、まぁ俺がアスクランを今の国にしたのも魔人は種族同士でいがみ合うのではなく、みんなで手を取り合うべきだと考えてな。なんだけどもやっぱ“人間”相手ってなると、ちょっとなぁ……って奴らのが多いんだ今のところは」


 リズロウからの理路整然とした説明を聞き、ソフィは鼻水を垂らしていた。ああ、もうこいつマジだったんだ。本当に何かエロいハプニング期待していたのか――リズロウはドン引きしながら確信した。


「で…でも! リズロウ様は私を見て美人だとかエロいだとか思ってくれたんですよね! まだワンチャンありますよね!?」


「お前は逆の立場だったらスパイ疑惑持ってる部下が、言ってもないのに勝負下着姿出来たら驚くより先に引くと思わんのか」


「う……うええ~ん……」


 ソフィはとうとう泣き出してしまい、リズロウは言い過ぎたと思い、目をそらしながら謝った。


「悪い。……本音を言えば、俺は正直お前を直視できんほど、お前は美人だとは思ってる。その姿も見てたらいろいろと危ういけどな……」


「じゃ……じゃあ!」


 リズロウの言葉にソフィは目を輝かせるが、リズロウはため息をついて答えた。


「言うつもりは無かったんだが……俺はバツイチなんだよ」


「えっ」


「誰にも言ってないけど10年前に嫁さんと娘とも別れてる。さすがにこの年になって、娘と同じくらいの女を抱くのはちょっと……。それにもう流石に次の相手とか考えてないからな……」


「えっ、ちょっ……」


 リズロウからしたらソフィの告白を聞いてしまったことへの罪滅ぼしの告白だったが、ソフィは背中からビッシリ汗が流れていた。とんでもない爆弾を全く覚悟していない状況から投げわらされたようなものであり、ある意味どんな国家機密より危ういものだった。結局ソフィとリズロウは互いに気まずい雰囲気になったまま、夜は明けていった――。


× × ×


 そして次の日からまたいつもの1日が始まった。リズロウとソフィはあの夜のことは互いに全くおくびにも出さず、いつも通りに過ごしていた。というよりも出そうにも出せないといった方が正しかった。


 ソフィが立ち上げた新しい街を作る計画は各方面の利益の都合が整い、本格的に進められる事になった。リズロウは一度、なぜソフィが周囲に警戒されるような有能さを発揮したのか尋ねたことがあった。


「……もう少しできない人間という事にしておけば、周りから警戒されることもなく、何なら手頃な夜伽相手を探してる奴に目を付けられるとかあったりしたんじゃないか?」


 わかりたくはないが、ソフィの目的がわかってしまった今、リズロウはソフィの目的に対し、想像の範囲内での手法を考えていた。だがソフィは首を横に振って答えた。


「いや~……それは何か違うんですよねえ……。私の理想のシチュエーションはあくまで対等の主従関係で生まれるリビドーというか、主人のアレを慰めてあげる方向というか」


「タチの悪いエロ本の読みすぎだ……」


「タチの悪いってなんですか!それにエロ本って言い方!ストーインじゃ普通に一般向けの恋愛小説でもあるシチュエーションですから!“蜜柑と百合”って小説!取り寄せてあげましょうか!?というかこっちの図書館にもあるでしょう多分!3年前のストーインにおけるベストセラーですし!」


「いらんわ!」


 といった具合で互いのことをよく知って―そしてアレな面に辟易しながらも、順調に時は流れていった。

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