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第2話 筋トレの腹筋運動

   

 昭和の昔、体育会系では、ウサギ跳びというトレーニング方法があったという。しゃがんだ姿勢でピョンピョン跳躍しながら進むことにより足腰を鍛える、という代物(しろもの)だ。

 ただし、昭和といっても80年代半ばくらいには、既に「ウサギ跳びは下半身を痛めるだけなので、むしろ逆効果」という意見が出回り始めていたらしい。

 ウサギ跳びに限らず、どんな分野においても「当時は効果的と思われていたが、今では逆効果だと言われている」という訓練法はあるもので……。


 僕が入った合唱サークルでは、練習の一環として、腹筋・背筋・腕立て伏せが取り入れられていた。

 要するに筋トレだ。

 合唱サークルは音楽系であり、体育会系でもないのに筋トレさせられるのは、最初はピンとこなかった。

 だが考えてみれば、声楽では自分自身の肉体が楽器なのだ。鍛えようによっては、おもちゃのギターがプレミア付きギターに変わるくらい、変化するかもしれない。そう思えば、なんとなく納得もできた。

 特に『腹筋』だ。腹式呼吸とかお腹から声を出すとか言われていたくらいだから、腹筋の重要性に対しては、疑問を挟む余地はなかった。


 それに、いざ自分が合唱サークルに入って、一つ思い出したことがある。

 小学生の頃の、音楽の時間の思い出だ。

 音楽の先生が、合唱部の女の子を仰向けに寝かせて、その女の子のお腹の上にバスケットボールを落としたのだ。

 ボーッと見ていた僕は「酷いことをするものだ」と感じてしまったが、別にイジメではない。音楽の先生の意図としては、ボールが高く弾む(さま)をみんなに見せて、

「歌声はお腹から出すものであり、重要なのは腹筋!」

 と示したかったらしい。

 ちなみに、この『小学生の頃の思い出』は、平成ではなく昭和の出来事だった。


 そんな記憶もあったので、合唱のトレーニングとして腹筋運動は適しているのだろう、と僕は素直に受け取っていた。

 ただし、一般的な腹筋運動で鍛えられる部位よりも、少し下の辺りの筋肉が合唱には必要だったらしい。「腹筋運動をする際は、お腹の下の方を意識して!」と言われたり、一般的な腹筋運動ではなく足上げ腹筋と呼ばれるトレーニングが行われたりもしたので、一応当時から「一般的な腹筋運動ではダメ」というのは知られつつあったようだ。


 なお、先ほどウサギ跳びの話を例に出したように。

 令和の現代では「合唱トレーニングにおける腹筋運動はむしろ逆効果」という考え方もあるらしい。なまじガチガチに腹筋を鍛えてしまうと、妙に(りき)んでしまうことに繋がる、という話だ。

 合唱において「(りき)む」のが問題なのは、それこそ僕が大学で合唱を始めた当時から、常識のように言われていた。

「上半身の力を抜いて、下半身だけに力を入れて歌いましょう」

 みたいな言葉を、何度も聞かされた気がする。

 だが、この「下半身だけに力を入れて」という話。

 これも普遍的なものではなく、そもそも下半身にすら力は入れない方がいい、という指導法もあった。

 僕が(かよ)っていた、ボイストレーニングの先生だ。

   

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