チルトワを助けた女の子
数日ぶりです。たぶん今後も投稿周期は安定しないかと…
今度は倒れていた女の子目線
何かが腕に当たっている。
ひんやりとしてちょっと湿った感触。
何かな って思って腕の方を見る。
誰かが私の腕をつついているようだ。
その誰かを見ようと視線を上げると、目が合った。
「うわーーー!」
目の合った女の子はそれに驚いて大声を上げた。
その声に私もビクッと驚いたが、声は上げなかった。
女の子は黒髪に黒い瞳で見たことのない系統のデザインの服を着ていた。まだ、驚いた時の余韻があるらしく、「びっくりした~。いや、マジでビクッた~」と呟いている。
「あの~」
「はいっ!」
女の子は私の声に即座に反応してピシッと座り直した。
ちょっと動きが面白い。
「こんな森の奥まで来てどうされたんですか」
ここは私の家があるエルルナ村の隣の森だが、村の人口は少なく、この森に立ち寄るのも村人だけなので、見覚えのない彼女に違和感を感じたのだ。
「えっと…んと…」
彼女はしばらく上を向き下を向きを繰り返して、ぽろぽろと話し始めた。
「私、遠く?から、来たんですけど。疲れて、草原で寝てたら、日が暮れかかってて。取り敢えず、食糧は見つけないとなって、思って、歩いてたんですけど…」
遠くからって一体何をしに?というか荷物はどうしたのだろうか。食糧が尽きたとしても鞄くらいは持ち歩くはずだ。代わりに持っている青い本は何だ?
疑問を解決させる為の質問の答えに余計に疑問が浮かんでしまった。
起き上がって空を見上げれば、西の赤く、東は青く染まっている。村が近いとはいえ、完全に日が暮れる前に村に帰らなければ危険だ。
「あの~、その鳥は大丈夫なんですか?」
彼女を声で手元を小鳥を確認した。
小鳥は胸元の羽を真っ赤に染め、口ばしでは血が固まっていた。
私が意識を失う前まで、心臓をつかんでいるかのように感じられた脈が、今や出血によって濡れた羽を乾いてしまい、ただ同じ質量の石を持っているかのようだ。
「うん、大丈夫というか、私がここに来たのはこの子を埋葬する為でしたから。」
この小鳥は子どもの頃、森に遊びに行った時によく懐いた鳥だ。最初に見つけた時は今よりもっと小さくて、毒キノコの上で倒れていた。
そのキノコは胞子を長時間吸ってしまうと危険なのだが、倒れているチルトワという種類の鳥は特に耐性が無く、瀕死の状態なのが見て分かった。
私はその小鳥を安全な場所に移し、家から治療道具を持ってきた。
家に連れて帰らなかったのはチルトワの種類の特性で、親鳥が雛を見つけられないと、雛を探して奇怪な声で仲間を呼び、木を倒してしまうからだ。親鳥自体の感知能力は非常に鋭いのだが、密閉された空間の中までは感知できないのだ。
小鳥の治療が終わった頃、周りにはたくさんのチルトワが集まってじっと小鳥を見ていた。
「もう、大丈夫だよ。…じゃあね」
私は周りのチルトワに警戒されないようにゆっくりと立ち上がり、小鳥を置いて下がった。
数日後、再び森に入るとたくさんのチルトワがいて、一羽のチルトワが私に近寄った。それを確認したその他のチルトワは一斉に飛び去り、残った一羽は私の胸元に飛び込んだ。
「もしかして、あの時の?」
そう言うとそれはこちらを見つめコクンとうなづいた。
それからは、あのたくさんのチルトワを見ることは無かったが、恐らくあの時助けた一羽は森に入る度にいつも出迎えてくれた。
…それが途絶えたのは今朝のことだった。