起きたんだが…
―ビビビ ビビビ ビビビ……
私は布団から片腕を出し、音源のある枕元をさぐる。
手に取って見ると時刻は午前七時。気分的には寝ていたいけど、これ以上はさすがにバスに間に合わなくなってしまう。
猫のようにうつぶせで膝を折って伸びをする。
今からでも倒れればそこは布団だぞ という誘惑を振り切り、荷物を持って階段を下りる。
結局お弁当のおかずを作る時間がなかったので、冷蔵庫にあった惣菜を適当に弁当箱に詰める。
それから朝ごはんを食べて洗面を済ませ着替えをし、荷物を持ってバス停に小走りで向かう。
家からバス停は3分程で着くが、それでも間に合わないかもしれない時間なのだ。
バス停にはお年寄りが2人と女の人が1人。あと別方面のバスに乗るいつもの高校生が1人。これから乗るバスはそんなに人は乗ってないので普通に座れるだろう。
やがてバスが来てそれに乗り込み学校に向かう。
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「えっ?どした?えーー!?大丈夫か!?」
この異世界では夕方になって、私たちのこれからの行動方針も決まった! というところで最初からいた方の“私”がバタッと突然倒れた。所々、人間としての輪郭が崩れ、無色透明のジェルのようになってきている。
「えっ、えっ?どゆこと?擬態が解けてるってこと?あっ、こういう時は!」
元“私”のジェルの中から“私”が神様から貰ったという青い本を取り出す。ヌルヌルベトベトかと思ったが、神様方が施したらしい強力な防水加工が効果を完全に発揮している。
私が異世界に来てからこの本は大体読んだのだが、目次が追加されているようだ。
『現実世界に意識が戻った際の肉体について』
この見出しが赤字で書かれている。
横に記されているページを開き、速読する。
「あーそゆこと?起きたんか、あれ」
人間としての原型が跡形もなくなってぷるんとした水溜まりになっている“私”に視線を移す。
どうやらあの“私”は現実世界で覚醒してこっちの肉体が仮死状態になったらしい。ただ、通常の仮死状態とは違い、意識、実質“魂”のようなものがこっちの肉体には無い為、擬態が解けたらしい。
となると心配なのが2人とも現実世界で覚醒してしまった場合なのだが、その時は即座に本を通じて神様に回収されると書いてあった。
取り敢えず心配事は解決?したの、かな?
「んま、いっか。ウチもいつ起きちゃうか解らんし、アリムの体も無事回収したし。ひとまず打ち合わせ通り、進めとくか」
そう呟いて私は森の中を歩いて行った。
2人の名前はアリムとオリムにするつもりです