やっと来れた異世界だけど
めっちゃ独り言多いです。
ハッとして目を開ける。
「まっぶし…」
そこにまるで、今まで彼女の目が開くのを待っていたのように太陽の光が差した。
腕を目元に回し、太陽光を遮って、ゆっくりと体を起こす。
すると太陽光も目に直接差さなくなったので、腕を下ろし辺りを見渡す。
「…えっ?ここ、どこ?」
そこは辺り一面を草が覆い、下の方には円形の城壁に囲まれた洋風の街のようなものが見える。さらに奥はうっすらと山々が連なり、海が少し顔を出している。
どうやら今私がいる場所はかなり標高が高いようだ。
手元に視線を落とせば、先程神様からもらった青い図鑑のような本がある。
「あれ?これって夢の中でもらったんじゃ…なんでここに?えっ?ちょっと待って。ウチってさっきどんな夢見たっけ?」
なんで“夢の中”でもらったものが現実に私の手元にあるんだ?ここはどこなんだ?これって夢?ほんとに夢?
寝起きで異様な美しい光景を目にしてパニックになっている私に、ブオーーっと間近で扇風機を浴びるぐらいの強さの風が走り抜ける。
思わず目を閉じて風が止むのを待って
「これ、夢じゃなくね?だって風感じるし、さっきから草の上に座ってるせいで、お尻のとこじめじめするし」
そう。よくありがちなほっぺをちぎって“夢じゃない…”って言う間もなく、私の触覚が現実と同様の感覚を示している。
「えっと、じゃあここって、夢にまで見た異世界?!」
異世界小説やアニメを好んで見ていた私は、とても胸が高鳴ったが、すぐに冷静になる。
「えっ、でもウチ何せばええの?これって元の世界に戻れんの?もし死んじゃったってんなら、ウチ未練タラタラなんですけど」
今まで何度も“異世界行きたい”“異世界転生したい”って思ったんだけど、やっぱり考えるんだよね。
“じゃあこの人生ここで終わりなの?” って。
別に今の人生投げ出すほど病んでもいないし、辛い悲しい嬉しい楽しいのバランスは丁度いい日々だった。悩むことはあっても“まあ、なるようになるし”って思って切り抜けてきたし、どうしようもない時は友達とか特にお母さんに話してた。結局解決しなくても、本当に話すだけでスッキリする。やりたいことはやってきたし、やり足りないことは明日に回して比較的気楽に生きてきた。
将来自分はどうなってしまうんだろう?
お父さんは?お母さんは?弟たちは?あのアニメの終わりは?これから出るかもしれない面白い小説は?
自分の人生が今終わって、例え異世界に転生できる夢みたいなことが起こるとしても、そんな疑問が滝のように流れてくる。
だからもし転生するなら長生きして老衰してからからがいいなあ って。
でもそれだとヨボヨボ婆ちゃんで異世界行くかもしれない。
だから夢の中で出来るだけリアルな異世界ものの体験がしたかった訳なんだけど…
『あなたには、とある世界の調査をして頂きたい』
『ここでの出来事、強いてはあちらの世界での出来事は、現実世界では夢として処理される』
「あっ、思い出したわ。これって現実っちゃそうなんだけど、あっちだと夢になんのか。え~、ちょっとウチ落ち込んで損したわ~」
あの神様…ん?神様なのか?あの人。まあ(仮)神様から何かいろいろ言われて、この本渡されたんじゃん。んで神様に
『何かと戸惑うと思うが、困ったら本を開け』
って言われてたんじゃん。
私は胡座をかいて、足の真ん中に本を置いて表紙を開く。目次を見るとかなりの量があった。それだけ丁寧に分けてくれたのか、単に内容がそれくらい多いのか。
さらっと目次を読んでいると気になる見出しを見つけた。
『協力者内包』
『↑先に開くこと』
本の文字の下におそらく手書きで書かれたメッセージ。
『先に開くこと』?えっとこのページは…
私は一度本を閉じて指でページを滑らせる。
バタンと見つけたページを開くと、見開き一面に表紙とはまた違った、けど似た傾向の模様が細かに描かれていた。
なんとなく凹凸感があったので触れると
「うわっ!?」
模様が光だし、白い煙のようなものがでてきた。
煙は私の前に溜まっていき、本から煙が出なくなると人の輪郭を取り始め
「…えっ?ここ、どこ?」
…しゃ、しゃべったあぁぁぁぁ!!