夢の中のたぶん神様
白い空間、ただ白く広がっている空間に私はポツンと立っていた。
そしてなんとなく 神様がいそうだなあ と思ったら、ぽんっと目の前に神様が現れた。
別に神様を見たことがあるわけではないけれど、その人を見て瞬時に 神様だ と認識した。
「おいお前…だからこんな有り体の謎空間やめようって言ったんだ!まさかそれが狙いだったのか?」
現れた神様は私とはあさっての方向を向いてずっと喋っている。いや、話し方からして遠くの誰かと会話しているのだろう。
とりあえず、話が終わるまでじっと待ってると割りとすぐにこっちを向いた。
「あ、えっと…あなたにはとある世界の調査をしていただきたい」
神様はさっき話していた口調とは打って変わって、少ししどろもどろになりながら話し始めた。
さっきのは友達に話していたようなもんなのかな。初対面の相手はどうも苦手のようだ。
「と言っても、あなたが現実世界で眠っている間だけだ。ここでの出来事、強いてはあちらの世界での出来事は、現実世界では夢という形で処理される。その為、基本的には現実世界に直接的な影響はない。…はずだ。ここまでは、よろしいだろうか」
私はコクっとうなずく。
何か質問したいことがあったような気がするが、頭がモヤっとして思い出せない。これは夢?だからなのだろうか。
「あちらの世界では自由を過ごしていただいて構わないが、目的は調査することだ。ここに調査対象や方法などいろいろ記された本がある。他の奴らの加護で他にもいろんな機能があるが、それはあとで確認しといてくれ」
そう言って神様は、表紙がA4サイズの青い本を私に手渡した。
本は金の金具で縁取られていて、表紙には何か複雑な模様が描かれている。図鑑のような厚さなのだが、結構軽い。
神様が片手で持ってる時はずいぶん力持ちだなあとか思っていたけど、そうでもなかったかもしれない。
っていうかこの大きさの本どっから出したん?
テレビで放送される変身ヒーロー並みにさりげなく腰の裏から取り出したけど?
「あとは、ご自身で確かめるがよい。百聞は一見に如かず。いくら人間は慣れる生き物だとはいえ、慣れるのにも時間もかかる。何かと戸惑うと思うが、困ったら本を開け。……“幸運”を祈っている」
神様が優しげに、でもどこか不安げに微笑んでそう言った。
自分でもどうしてかは、あとになってからも解らなかったけど……
その笑みに私はとても安心して、目を閉じた。
夢の中ってどんな突拍子のないことが起こっても、さも当然かのように流しちゃいますよね。
今の主人公は正にそれです。
次でやっと異世界に行きます。