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第六話 【新たなる敵】

カーテンの隙間から光が部屋を照らす。

部屋の棚にはぎっちりと本が敷き詰められている。

ぬいぐるみも何個か適当に置いている。

そんな部屋の片隅に敷かれている毛布に包まる女がいた。


「...会社行きたくなぁい」

二十歳を過ぎて、働き盛りの女が何を言っているのだろうか、

でもぉ、今はこのフカフカ毛布に包まっていたい...

ほら、自然と目が...目が...

視界が少しずつ狭くなっていく。


だが、その視界の真ん中に映るものがった、

「...えっとぉ、今は...」

私を何度も助けてくれたアナログ時計ちゃん。

視界がぼやけているせいか、

針がどこにあるのか分からない。


「うぅぅん?」

目を指で擦り、時計を寄せる。


長い針が8で...

短い針が...5...5?...


「ふぁいぶ?」

あろろ~?会社に到着しなければならない時間は~、シックスで~す。

「やばいじゃん!?」

毛布をすでに空いている棚にぶん投げる。

それと共に全身に力を入れ、リビングに向かう。

雑巾で床を擦りまくった時に出る独特の音が家中に響き渡る。

だって私以外に住んでいないんだから!


私は働いてから一年目だが、

一軒家を持っている。

いいところを挙げるとすれば誰かに何かを言われないこと、

欠点として、時々ものすごく寂しくなる。

...彼氏欲しい...


この家を建てられたのは、親からの支援もあれば、

私が今まで貯めてきた貯金を一気に使ったこともある。


今の会社には憧れる先輩もいるし、

私の好みの人も見つかったし、

全く親の会社に対して未練はない。


別に親の会社は姉が継ぐし、

姉が社長の会社なんかで働きたくないし。

私は今の会社で十分満足。


冷蔵庫に入っている残り物のサラダをテーブルに置き、

既に洗ってある箸で一気に口に流し込む。

「?」


なんか味が違うような...

「あ、ドレッシングかけるの忘れてた」

そんなこと言ってる場合じゃねぇよ!


シンクにボウルを雑に入れ、

服を一瞬で脱ぐ。


そして既に干してあるスーツをむしり取る。

そして瞬間的に着る。

このように遅刻しそうになったことは何回もある、

だからこそこんな時はどうすればいのかがわかる。

自慢できることではないんだけども。


家と車のカギを手に取り、

「鍵よし!食事よし!服よし!バックよし!」

これは忘れ物をしないためのルールのようなもの。

これをすれば忘れ物をすることは圧倒的に少なくなる。


「準備よし!」

玄関に置いてあるヒールを履き、

重たいドアを開ける。

そして瞬間的に鍵をかける。


車のカギのボタンを押す。

ピピ!と音が鳴る。

運転席のドアを開ける。

ボタンを押し、エンジンをかける。


そして、モニターに移された時間は、

「5時46分...フ、この程度なら余裕だぜ」

とか言ってますけど内心、

「あ、終わった」

という状態になっている。


まぁ運が味方してくれれば話は別!

神様!どうかお慈悲を!


この後、神は私に罰を与えた。

「どうしてだよぉ...」

はい、社内に入ったのは5時58分。


これはかなりの選択を迫られている...

エレベーターか階段...

だがエレベーターは人が大量に乗るから時間がかかる、

そして私が行かなければならない階は5階。


「どうか転びませんように...」

ヒールじゃなくて普通の革靴にすればよかったや。

私は一段飛ばしで階段を高速でかけあがる。

走るのは得意だ...

私の脚力を見せつけてやる...

誰に見せるのか分からないけども。


「ふぅ...ふぅ...」

どうにか5階まで来た...

多分遅刻じゃ..「おはよう、み の ちゃ ん?」


私の前には、魔王がいた。

私の目標でもあり憧れでもある人。

香賀詩 仁香先輩【既婚者】

「あ、あはは...」

やばい、殺される。

全身からスーっと何かが消えていく。

え?私死ぬの?


「えっと~?現在の時刻は~」

スーツの袖をめくる。


「6時1分23秒、1分23秒の遅刻ねぇ...」

うふふと不気味な笑いを浮かべる。

この人は普段は表情の変化がないが、

私が何か失敗する時は必ずこの不気味な笑いを浮かべる。

うん、最低だな、この先輩。


「で?昨日はあんなでかい口叩いたくせに?

遅刻するなんていい度胸じゃない?」


あぁ...そういや言ったっけ?...

ノルマ2倍と...

異勤してくる人の指導...

うわぁ...だる、あんなこと言わなければよかった...


「いやぁ...車が故障しちゃってぇ...」

そうすると、先輩は後ろに指を指し、

「へぇ...その割には随分と飛ばしてきたわねぇ...」


「...え...えっと...」

私は両手を腰に添えて、

腰を45度に曲げ、


「しゅみましぇん」

と、謝った。


「ノルマ3倍ね」


----

「愛宮 琴乃です、よろしくお願いします」

う、うそぉ...何この人...

私が想像していた人とは何倍もキレイな人が来るとは...

顔立ちは仁香先輩と同等レベル...

あとはあの体形だな....

仁香先輩は食事とか私生活に力を入れてあの体を手に入れてるけど、

この人は完全に筋肉質...


それに対して私はただ頭がいいだけ、

そんのそこらの雑草のような顔立ち、

体形は普通。


...そりゃ独身だわ。

はぁ...しかも私好みの人は仁香先輩の旦那さんだし、

奪える気もしない。

まぁ...これから作戦を立てていくのだけども...

そんな風にこの先のことを考えていると、


「えっと~...美野先輩でいいんですか?...」

と、申し訳なさそうな表情で尋ねてくる彼女がいた。


「あ!うんオッケーオッケー、それじゃ説明するね!」

あぁ...仕事したくない...


----

「ちょっといいですか?...」

愛宮さんは私の前で頭を下げる動作をして、


「あそこにいる香賀詩先輩って人って怖くないですか?」

うわぁ、早速言われてますねぇ...

私はそれに対して平然を装い、


「そうかな?慣れれば楽だよ」

と、嘘をついた。

あの人は怒らせなければそこまで怖くない。

怒らせなければの問題なんだよなぁ...

私も過去に怒られている人を見たことがあるが、

その人は明日に自殺でもするんじゃないかって思うほどひどい顔をしていた。


「そ、そうですよね...なんかすみません」

愛宮さんはペコリと頭を下げ、

自分の机に移動した。


「はぁ...ノルマ3倍はキツイよぉ...」

だがこれはあの先輩からの命令...

先輩の権限は会社内でもずば抜けているため、

一度命令されてしまったら、その命令を完遂しなければならない。


いやぁ...マジだるい...

いつもなら仕事に集中できるのになぁ...

そうしていると、後ろからトントンと肩を叩かれる。


「ちょっと!美野ちゃん!」

そこには、少し焦っているような表情の先輩がいた。


「どうしたんです?先輩のミスを私に擦り付けないでくださいね?」

まぁそんなことはしないんだろうけど。


「あんた愛宮さんになんて口調で喋ってんの!?」

あれ、マジで結構焦ってるな...

てかここまで先輩が焦ってるところなんて初めてかも。


「いや、あの人客観的に若いんであの口調にしただけっすよ?」


「あぁ...言っておくけど...」

先輩はハァと大きなため息をつき、

意を決したように言った、


「愛宮さんは私よりも年上だし、

会社内でも上の階級よ?...」


私はこの言葉を聞いてから、

数秒間フリーズしていた。


「あはは、後で土下座でもしておきますね」


----

...気まずい...

いつもならウハウハなんだけど...

呼んだ相手がなぁ...


「はぁ...あ、生ビール2つ!」

とか言ってるけど注文はちゃんとする。

ちなみに愛宮さんはまだ来ていない。

枝豆を口に運ぶ。


「やっぱおいしいなぁ...」

この店は以前から気に入っている。

少々値段は張るが、味は極上...

今までこの店で仁香先輩と飲んだ回数は計り知れない...

まぁ全部私から誘ってるんだけども。


いっつも飲みの誘いは私からであって、

仁香先輩から私を誘ったことはほぼない。

それに対して仁香先輩は旦那さんのことをどう誘うかで迷ってるらしい。

この前だが、仁香先輩はガチで悩んでいた。

確か...半年前ぐらいに、私がいつもどうりに飲みに誘おうとしたら、


「もうどうすればいいのよ...」

と、スマホに向かってにらめっこをしていた。

私は気配を消して後ろに回り、画面を覗き込んだ。

そこには私が予想だにしないものが映し出されていた。


今日早めに切り上げるから、

ごはんにでも行かない?

嫌なら別にいいけど。


この瞬間私は、

(ツンデレかよ...)

という感じだった。


この時はまだお堅い人だと思っていたから、

とてつもなく印象的だった。

しかも、仁香先輩に彼氏がいることも驚いた。


実際には結婚していたらしいけど、

この時の私はまだ独身かと思っていた。

うぅぅ...この時の私は無意識の内に仁香先輩を独身仲間だと思っていた。

旦那さんは私の好みに全て当てはまってるし...

写真見てちょっとドキッとしちゃったし...

クソぉ...クソぉ...


一気に酒を体に流し込む。

ジョッキを机に思いっきり叩きつけたいところだが、

そのタイミングで愛宮さんが来たら。

ものすごいぐらい印象が悪くなりそうなので、

自分の感情を無視して、

おしとやかに、ゆっくりと置く。


「私だって...普通の恋がしたかった...」

青春と呼ばれる高校時代。

世間的にはとても輝かしいものと思われているが、

実際はそこまでのものではない。

だからこそ自分の理想と現実との落差がありすぎて、

すこし残念がるひとも私は何人も見てきた。


でも私はそれを事前に知っていたので、

そこまで期待もせずに入学をした。

まぁだからこそ彼氏ができなかったんだけどね。


その時の私には他人と何かを共感することはできなかった。

だからこそ友達がいなかった。

いっつもひとりぼっち。

別にひとりぼっちが悪いわけじゃない。

でも私はただ単に寂しかった。

でも私が入った高校はレベルが高い、

だからこそ、私は寂しいという感情を隠すために、

勉強に打ち込んだ。


はぁ...それで入った会社の先輩の旦那に一目惚れって...

「私の人生ってなんなんだろ...」

ジョッキ片手に落ち込む私...

うん、いいざまになってるわ...いやほんとに...

と、ものすごく落ち込んでいる時に、

彼女は現れた。


「あ、いたいた!てか早いね!?まだ10分前だよ?」

と、会社の時の口調とは違い、

とても軽いものになっていた。


...かわいいじゃねぇか...畜生...

愛宮さんはザ 運動系女子という服装をしていた。

半袖にジーンズ...

てか筋肉すご...


「あ、いえ、さすがに先輩との飲みに遅刻はできませんよ」

うん、この口調でいこう。

さすがにため口は殺される。

聞いた話だと課長よりも上って聞いたから...

...考えるのはやめよう、頭が痛くなってくる。


そうすると、愛宮さんはキョトンとした表情で、

「?あぁ~、ため口でいいよ!私全然気にしないから!」

と、天然100%の笑顔で私に微笑みかける。

...すごい...全然作り笑いじゃない...

この人...絶対モテてた人だ...


この後には、今後の仕事の説明や、方針、

その他に社員の名前などを教えた。


結構真面目な雰囲気になると思いきや、

時間が経っていくにつれて、

何故か恋バナになっていった。


「うぅぅ...そうなんですよ...私の高校生活なんて最悪でしたよぉ」

この際はっきりと言おう。

愛宮さんは、かなり人と接するのがうまい。

私は結構口が堅いと思っているんだけど、

今の様に溶け切った態度になっている。


「よしよ~し、がんばったがんばった」

愛宮さんは私の背中を、

まるで赤子を撫でるかのようにさすってくれた。

うん、この人が出世した理由分かったかも。


「あ!あいさんの恋バナも聞かせてくださいよ!」

私も自分の黒歴史を他人に言うだけでは癪に障る。

この人の歴史も聞いてやるぅ...


「え!?私!?う~ん...多分つまんないよ?...」

なんかものすごい恥ずかしがっている...

まさか...私と同じような黒歴史を持っているんじゃ?


「それでも聞きたいんです!」

そうすると、愛宮さんは少しづつ話し出した。


「私には...そのぉ..弟みたいな子がいたんだよね...」

「みたいなってどうゆう意味ですか?」


「いやぁ...家族ではないんだけど...ずっと一緒にいる子がいて

そのこのことを...そのぉ、忘れられないんだよね...」


「......」

なんだろう、こんなおっとりとした人を、

これほどまで惚れされる人って逆にどんな人か見てみたい...


ブクマ、ポイントお願いします!

投稿遅れてすみませんm(__)m

色々と忙しくて...

あ、これからの更新頻度は3~4日になります。

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[気になる点] タイトルが不穏。 [一言] まだまだ日常回。 だが、そこはかとなく不穏な影が。
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