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魔導書取り扱ってます  作者: もんた
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「・・・で此処はどこであんた何者?おれに何か用?」


痛む額に手を当てながらおれは目の前小さいじいさんを睨む。

オールバックの長髪長髭に赤系のローブを着こなし、手には何の変哲もないじいさんの身の丈くらいの杖。


(おれの知ってる魔法使いスタイルだけど全身が焔に包まれてるって初めてだよな。少なくても乗っかられてる胸は熱くない)


半目で睨みながら相手の観察をしつつ返答を待っているとじいさんは喉がいがらったのか『うぉっほん』と咳をひとつ。


『わしは【焔の最強魔導書】。お主に頼みがあってこちらの世界【ムートリア】へ来てもらった。是非協力してもらいたい』


は?

な  ん  だ  っ  て  ?


「それってゲームとか小説であるあるの【異世界召喚で世界を救え!】とかいうのでは・・・?無理無理アラサーにはこっぱずかしくて無理だわー。もうちょっと若い子にそういうの頼んで。じゃあ用事終わったんなら元の世界に還してくれない?今なら午前半休で出勤できるから」


片手を左右に振ってご期待に添えませんとキチンと申し出たのに『話をちゃんと聴かぬかぁぁ!』とさっきよりも強めに額にクリティカル。解せぬ。

じいさんは倒れたままのおれの胸の上にあぐらをかいて座り込んだ。どうやら長期戦の構えらしい。


『お主の言うところの【異世界人召喚】はこちらの世界の主に国家や団体などが魔物に対する最終手段として行っているものじゃ』


何とおれ以外にもどうやら拉致られ仲間は存在するらしい。

この世界大丈夫?

あ、大丈夫じゃないから拉致られるのか。

でもわりと平和ボケの現代社会から魔物が跋扈する世界に連れてこられても何もできなくない?普通ならムリゲーだろ。


『国家の行う【召喚】はお主の世界に魔力反応でこちらに召喚する【陣】をいくつも張るものじゃ』


えーっと魔力感知設置トラップホイホイかな?

おれの頭の中には嫌われ者のGを駆逐する罠が思い出された。


『対してわれらの【召喚】は国家のものとはまるで法則の異なるものでな。【東出健斗】という人間に狙いを定めて行っておる。故に術式が巨大になってな。【ムートリア】に【陣】を張ると世界が崩壊するので【ムートリア】の【裏の次元】にお主を喚んだのじゃ』


ん?チョットイミガワカリマセンネ。

まずおれはターゲッティングされて一本釣りされたと。何でか知らんが。

で、じいさん曰く呪文が違って一本釣りの方がこの世界に影響する魔力がでかいから【裏の次元】ってナニソレ?


「【裏の次元】とは?」


先生質問です。と言うように右手を挙げてみる。

おじいちゃん先生は長髭を扱きながらおれの質問に懇切丁寧に答えてくれた。


「元々この世界とお主の居た世界は次元がちがうのじゃ。【召喚】とは無理矢理その次元に穴を開けトンネルを通すものだと考えればいい。

あとは【魔導】。この世界には【神の力の行使で神秘をおこす】ものと【魔の力の行使で破壊をもたらす】もの。そして【自然元素の力をもってこれらに対抗する】ものがある。わしらは【自然元素=マナ】じゃな。そして【マナ】を使って魔導を発現するには最初に触媒として【魔導書】で【マナ】の使い方を知識として履修しなければならん。わしは【焔の魔導書】の最上位じゃ。ここまでは良いか?』


コクリと頷く。

どうでもいいがこの寝ながら胸の上のあぐらをかいている小さいじいさんの話を聴いてるのは体勢的にちょっと苦痛だ。


『先程の国家の行う【召喚】はお主の世界の魔導の力が少しでも認められたら機動するもの。我らの【召喚】は魔導の力が全くないお主だけを喚ぶもの。少しずつじゃが最強魔導書がその力を行使するのじゃ。世界崩壊ぐらいするじゃろ。それを防ぐために【ムートリア】の直ぐ裏側の次元にこの世界の大地のみを写しお主を喚び寄せた。中継地といったところかの』

「ちょっと待った。世界崩壊って軽く言ってるけどその【最強魔道書】ってどんだけあんの?」

『【焔】【水】【風】【地】【光】【闇】の【マナ】がこの世界にはある。それぞれの【マナ】の組み合わせや比率によって魔導もいろいろできるようになるが基本は魔導書で履修。これはこの世界の絶対の理じゃ。

そしてお主を喚び寄せるには我ら最強六種の力を行使するしかなかった。あんな馬鹿デカイ召喚術、この世界に発現してから初めて作ったわい』


はーやれやれと言いながら肩をトントンしているがあんた人じゃないんだろ?

っていうか。


「何でおれなんだよ。魔導の力が全くないんだろ?それに喚ばれた訳もまだ聞いてない」

『おー、そうであった。まずお主に頼みたいのは【我らの居場所と契約】してもらいたい』

「??【居場所と契約】?何じゃそら」


ちっとも意味がわからん。


『我ら【最強魔導書】はそれぞれが唯一無二で魔族に対抗できるものだ。ただし我らを手にできるのは厳しい試練と我らの目通りを得て相性の合う者のみ。しかも生涯その相性の合った【最強魔導書】しか持てぬのだ。

現在【光の最強魔導書】に相方がいて留守になっているが、相方のおらぬ時はソルダン王国のガイナという町の【魔導書屋】におる。お主にはガイナの魔導書屋と店主になる契約をしてもらいたい』


日本のコンビニオーナーでもあるまいに契約?

そのためだけにおれこんな場所に拉致られたの?


「店の店主になるだけならおれじゃなくてもいいじゃん。地元民でもいいじゃんかー」


あまりの理不尽さにブーブー文句垂れれば『今まではそうじゃったんだが』と髭を一扱き。


『店主には魔導の力がない方がいいんじゃ。この世界の人間は多少なりとも【マナ】の力の恩恵を受けておる。そうすると否が応でも我らの影響を受けて肉体に狂いが生じてしまうのじゃ』

「じゃあおれ以外のあっちの世界の人間は?」

『正直向こうの世界に執着のある人間は連れては来れない。後は精神が未熟者でも無理じゃな』

「おれだって未練タラタラなんですけど」


連れてくるなら予告してくれたら実家だって処分したし、仕事もちゃんと引き継いで辞表出してきた。貯めてた預金だってどっかに寄付して来れたかもしれない。あー。親の形見くらいは持ってきたかった。


『お主の言う未練とは執着とは違うじゃろ?それにお主は文句は口にするが割り切ることができる人間じゃ。だから我らは【東出健斗】を【最強魔導書の門番ゲートキーパー】として喚んだのじゃ』


なるほど。未練と執着は違う・・・ね。

確かにおれ自身は連れ合うカノジョは居なくなり、泣かせる両親も先にあの世界から居なくなった。一番気になるのは動産・不動産くらいだ。

そしてどうやらほかの召喚連中とは違って戦いに強制参加ではなく強制店長を仰せつかっているぶん気楽なのかもしれない。

あとゲートキーパーも恥ずかしいからヤメテ。


「無理矢理拉致られたんだからおれにも何か利益があってもよくない?」

『ふむ・・・無体を強いているのだから当然の言い分じゃな。我らでできることなら協力するぞ』

「まずは何か飯喰わせてくれね?朝からまだ何も喰ってないんだよ」


体勢もキツイし何より腹が鳴りそう。

もうこんな空と大地しか見えない場所で腹を鳴らしながら条件折衝している場合じゃない。


『面倒なヤツじゃのう。【地】と【光】と【闇】よ。転移術を【庭】に頼む』

『はいよー』


どこからか楽しそうな声が聞こえておれの周りには光のカーテンというか洪水というかとにかく光で真っ白に染まっていた。

どうやらこれが【表】へ連れて行ってくれる術らしい。



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