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ただただただ。 ~変わらないもの~  作者: けー
三章 姫巫女ってなんだ?

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これを最後にはしない



 今朝は早くからお兄ちゃんは地上に、会社が休みなのり君は、お姉に連れられてダンジョンへ。胡堂たちは今日は四人で三階ボスをクリアしたいようだ。


 あたしは一人で今日は六階へ。最近あまり行けていなかったし、このままじゃお姉にレベルが負けそうな気がする。


 お兄ちゃんも本当はダンジョン行きたいけど、加賀美さんの連絡がいつ来るかわからないから、地上でできることを細々とやると言っていた。



 六階は通路はそう変わることなく、ただ部屋が増えたのか出てくる感覚は狭い。それに部屋の大きさもまちまちで、草だけじゃなく岩場や中には細い川がある部屋なんかもあって驚いた。


 おかげで今までよりも宝箱が見つかりにくい。その変わりじゃないけど採取できるものは増えた。


 岩場や川の近くからは鉱石や金属らしい物、それに白い砂、草も上階よりも種類が増えて薬学も進みそうだ。



 まだ昼には時間があるし、今日はどこまで進めるかな? と考えてたらカフスからコール音。あたしは周りを確認してから通信する。


 『姉さーん! ボスクリアしました』

 『おお、やったやん。怪我は?』

 『みんな大きい怪我はありません、ポーション(微)使ったから大丈夫です。少し早いんですけど上がるつもりです。姉さんはどうするんですか?』

 『じゃあお昼の支度もあるし、あたしも上がるわ』


 試しで渡した通信カフスも上手く使えてるようで安心した。通信を終わらせて、あたしは六階の五階への上り階段に向かう。


 五階ボスを倒したあと、ダンジョンの入り口すぐのところに小部屋ができていた。中を覗くと数人が乗れそうな魔法陣、それに乗れば六階の入り口、階段踊り場にできた小部屋に飛ぶことができた。


 ただこの小部屋は五階クリアしないと見えないのか、神職限定かわからないけど四人には見えていなかった。


 これのおかげで階下に行きやすくなったから、あたしとしては有難い。ただ三階でも探してもなかったんだよね。


 一階に上がればまだ四人は帰っていなかった。魔法陣のおかげであたしのほうが早かったみたいだ。


 その時にお兄ちゃんから指輪を使った通信があった。


 『思ったより国の反応が早いかもしれん。午後は三人に帰ってもらえ。恵子とのり君と絵里子は地下の居間で待機や』

 『ご飯食べる時間は?』

 『…早めにせい』


 その通信の途中で台所へ向かう。こうなる可能性も昨日のうちにみんな聞いていた。そのために三人は急いでレベルを上げ、胡堂も一緒に連れてボスに挑んでいた。


 頭の中で作る料理のこと、三人に渡す物、色々考えながら支度を進めていけば後ろから声がかかる。


「手伝います、急いで作っちゃいましょう」


 さっきの通信より少し元気なく摩耶が入ってきた。お兄ちゃんがカフスで伝えたんだろう。どうにか笑顔を作ろうとした摩耶が、あたしに何を作るか聞いてくる。


 またすぐ会えるなんて曖昧なことは言いたくない。だからあたしはそこに触れず、今の時間を楽しむように摩耶と料理を完成させていく。



 カフスは指輪と違って多人数の会話ができない。それに自分が知っている魔力じゃないと通信できないそうだ。

 どうゆう作りになってるのかお兄ちゃんが教えてくれないから、詳しいことはあたしにもわかっていない。



 出来上がるころにはお姉とのり君も帰って来て、今日もなかなかしごかれたようで、ゾンビなのり君が座ってる。

 試しにレベルを見てみれば、のり君が13、お姉が14。高くなると上がりにくいはずなのに、この人どんなレベル上げしてるの? あたし少し焦らなきゃ駄目な気がする。


 お兄ちゃんの分を地上に運ぶため、先に食べといてもらう。お兄ちゃんは机の上に色々なものを散らかして、何かを作っているようだ。


「片付けてよ、ご飯置けへん」


 そう声をかけてご飯を見せれば、お兄ちゃんが端に寄せる。


「いつぐらいに来そうなん?」

「あの感じやったら夕方には来るんちゃう?」


 いただきます、と食べ始めるお兄ちゃんには緊張も何もなく、当たり前のようにそう言ってみせた。


「気にしてもしゃあない、お前は座ってるだけでなんもかわらん」

「それはわかってるけど」

「なら、そんな不安そうな顔すんな」


 お兄ちゃんの苦笑で自分の顔を触るけど、そんな顔してた気なんてなかった。


「別に不安ちゃうよ、お兄ちゃん達のこと信じてるもん」


 お兄ちゃんにそう言って、あたしもご飯を食べに地下に行く。後ろからお兄ちゃんの笑い声が聞こえた気がした。




「じゃあ、姉さんお気をつけて」

「どっちかってと摩耶達こそ、気を付けて帰るんやで?」


 抱き着いてきた摩耶を受け止めて、たっちゃんを見る。その後ろにはまだ少し不満そうな健也君。


「ほんま気をつけてな、なんかわかったら連絡するから」

「おう、できるだけこれ付けとくわ」


 たっちゃんがカフスを持ち上げて見せてくる。お兄ちゃん曰く作るのに時間がかかるため、たっちゃんにしか今は渡せていない。

 他にも武器と防具、それに大量の魔物肉とポーションなどの薬類など、色々詰め込んだマジックバックをそれぞれに渡している。


「またダンジョン行けるようになったら言うから」

「あんま無理すんなよ」

「それはあたしよりお兄ちゃんとお姉や」


 色々考えたり作ろうとして作業場に籠り続けるお兄ちゃんと、少しの時間でもダンジョンに行こうとするお姉。たぶんあたしが今は一番何もしてない気がする。


 薬学と魔道具をやってはいるけど、家事なんかもあたしがやってるからどうしても時間が限られてくる。誰かやってくれる人増えたら本当は楽なんだけど。


「ほら、そろそろ行き。見られても困るやろ?」


 名残惜しそうに力を込めた摩耶の肩を叩き顔を上げさせる。


「そんな顔せんで、こっちは大丈夫やから。摩耶たちもほんまに気をつけてな」

「はい、姉さんも絶対に無事でいてください」


 摩耶の言葉に力強く頷いて、その肩を押す。


「じゃあ、またな」

「おう、また」

「はい、また会える日楽しみにしてます」


 健也君は礼儀正しくお辞儀してくれた。

 三人が見えなくなるまで手を振ると、つい寂しくなってしまう。胡堂は見送りには来なかったけど、最後に地下でたっちゃんと何か話していたしそれでいいんだろう。



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