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ただただただ。 ~変わらないもの~  作者: けー
二十章

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現場



 出発は早朝となり、慌ただしく準備をして早々に寝る支度も整えた。それでも簡単に眠れなかったのは、目覚めた後に見る現実の重みの為だろう。



 少し重い目覚めではあるが、そんなことも言ってられないと冷水で顔を洗い、情けない自分に気合を入れた。


「おはよ、秀嗣さんはいつでも早いね」

「絵里子もな。おはよう」


 いつもと変わらない様子の秀嗣さんは、緊張したりしないのだろうか? そう考えながらコーヒーを淹れに台所に行く。


「多少でも朝飯は食べておけよ」

「わかってるんやけどね」

「昼が食えるかわからないからな」


 そう静かに言われ、その意味を理解すると気が重くなる。


「それは、経験?」

「そうだな。スープなら食いやすいか?」

「大丈夫、自分でできるで」

「俺のついでだ、気にするな」


 そう言って笑ってくれるこの人に救われる。仲間がいると言う心強さに、気にしてくれる人がいると言う心強さに。


「おはよーさん、相変わらず二人は早いな」

「拓斗も珍しく早い方やな」

「智ももう起きて来るやろ? 一軍の確認もあるし」

「ああ、忙しそうやな」

「宏さんは組合連絡終わらせてるし、ギリまで起きてこんやろ」


 そう考えるとやっぱり智さんが一番忙しい気がした。


「おはよう、拓斗も起きたのか」

「俺も準備だけで寝れた組やからな」

「それはお姉も一緒のはずなんやけど、最後のほうな不思議」

「あの人は現場で輝く人やから」

「失礼だが、間違ってはいないな」


 くすくすと笑い合い、それだけで勇気づけられる気がした。この後をわかって、普段通りに居てくれる二人に感謝しかない。




 そしてみんなも起きてきて、時間になれば境内に向かう。今回は緊急依頼と称して一軍も向かわせるので必要なことだ。


 すでに一軍は境内に出ていて、お兄ちゃんは大仲さんと皐月さんと何か話しているようだ。


「おはよ、姫様」

「おはよー」

「おはよ、二人は変わらんね」

「まあまだよくわかんないしね」

「そうそう、考えても規模も何もわかんないし、行くしかないじゃん」


 力みも虚栄もなくさっぱりと言われてしまうと、逆にこっちの力が抜けそうだ。それが今は有難い。


「紫藤も色々サンプル取りたいって楽しみにしてるし」

「けど魔素の関係で近付けん可能性あるで?」

「あいつなら根性で行くんじゃない? まだ見ぬサンプルって」

「キャラ崩壊やな」


 ほんと最初はそんな人に思えなかったのに、生産廃人とはみんなそんな生き物なんだろうか。


「そろそろ行こか。ほな大仲さんと皐月さんはよろしく頼むわ」

「はい、御無事のお戻りお待ちしてます」

「行ってらっしゃい」


 他にも出てきていた補佐など数人に見送られ、あたし達パーティーと一軍とプラス戸上さんと言うメンバーで転移陣に乗り、そのまま直接、二度目のスタンピードの起こった最初のダンジョン付近、その集落へと飛ぶ。




 昨日のことだからか、まだ火が消えてない木造物だった板や物が溢れ、踏み荒らされ壊された物。

 その隙間に見える黒く煤けた人型の何かや、赤黒い染みのついた人。


 転移陣を中心に集落を作っていたと聞いていた。本当にその通りで、人が賑わう場所だったんだろう。後方に居た誰かが嘔吐(えず)く音がした。


「魔素に対してどないや」

「俺は平気、少し空気が重い?」

「そうだね、重いけど動けなくはないし辛くもないよ」

「戦ってる最中、動きづらい可能性があるっすね。その辺り注意かもっす」


 さすが関東組と言うべきなのか、信也さん武雄くん戸上さんは変わらない。


「俺ら調べるもん調べたら次に飛ぶから、無理そうな奴は帰っていいで」

「だ、大丈夫です。これが、現実なんですね」


 辛そうな少しくぐもった清水さんの声。それを聞きながら、あたしも目の前の光景を現実として受け止めるのに必死だ。


 焼け焦げた匂いに混じった鉄臭さ。鳥が肉を食みにそこかしらを飛びかい、自分のいる時代が信じられなくなりそうな映像のようにも思う。


 だけど匂いが、感じる空気が、目の前の光景が現実だと告げ、どこかでそれを拒否したくなる。


「お前は戻るんか?」

「…、あほ言え」


 拓斗の小さな言葉に、それだけしか返せなかった。


 拓斗はそれを聞くとお兄ちゃん達と調べに行き、あたしの横には秀嗣さんが寄りそう。

 お姉は残党をやりに行くと、動きの確認も込めて一軍達を連れて行った。


「あたしも動き確認しとこか」

「大丈夫か?」

「まだ、始まってもないのに?」


 自分で言った後に皮肉っぽいな、と思ってしまった。


「覚悟はしてても辛い物だろ」


 そう苦笑してくれて、救われたけど。


「ありがとう。けど、知りたいから、ごめんやけどお願いな」


 何に対しての謝罪かわからないけど、少しだけ情けない顔でそう言えば、秀嗣さんは少し驚いた顔した後笑ってくれた。


「任せておけ」




 残っていた魔物相手に動きを確認しても、そう困ることはなさそうだが、不思議なことに魔法の威力が違うことに気が付いた。


「魔素のせいかな?」

「可能性はあるが、絵里子だからと言うことはないのか?」

「秀嗣さんは身体強化に影響ない感じ?」

「そうだな、正直、俺は感じないな」

「じゃあお姉達も気付かんかった可能性あるな。一軍達どうやろか」


 そんな話をしていれば集合の念話が届き、転移陣に向かう途中でお姉達と会うことができた。


「なあ、魔法使った人おる?」

「使ったけど、やっぱりおかしかったよね?」

「恵子さんや清水は変わりないって言うんだけど、誤差程度に威力が変わってる気がするんだよね」


 あたしと秀嗣さんは顔を見合わせた。


「秀嗣さんも影響ないって言ってたから、放出系の魔法だけで体の内を巡らすのには影響ないんかな?」

「あー、それはあるかも。集めるだけとかは感覚変わらないのに、魔法として発現させたときにイメージと少し違うんだよね」


 さすが元々四属性の器用が高い武雄くん。しっかり分析されてるじゃないですか。


「微々たるもんでも、咄嗟の判断に気を付けな危険かもね」

「魔法使う人は要注意かな?」

「ほら、やっぱりやったやん」

「身体強化も同化も変化ないから、のりがまた変なこと言っとると思ってた」


 さすがお姉。けどのり君もお姉に否定されても言っておこうよ。


 紫藤さんはお兄ちゃん達とサンプルや素材を採取しながら色々試したらしく、やっぱり同じことを言っていて、お兄ちゃん達も気付いていたようだ。


「ほんなら、そろそろメイン行くけど抜けるやつおるか? こっからは地獄の可能性もあるぞ。動けんくなっても助けられるかわからん」

「結界石が効かない可能性もあります。その時は転移陣まで撤退するまで気を抜けません。無理だと思う方は素直に申し出て下さい」


 今回のメンバーで危険そうなのは柏原さんと清水さんか。紫藤さんはメインが戦闘職ではないが、興味から抜けることは考えてなさそうだ。


「大丈夫です、行きます」

「私も、この惨劇の原因を見たいんです」


 今この場はスタンピードが起こった結果でしかなく、その物ではない。それを理解し二人も行くと言う。


「わかった。できるだけ誰も死なす気はない。無理やと思えば早めに言え。できる限り道は作ったる」


 それがギルドマスターとしての仕事だと、お兄ちゃんの目が言っていた。



嘔吐くって方言なんですね。

変換で出ず調べて始めて知りました。

表現方法としてどうしようかと思いましたが、それ以外浮かばなかったのでそのまま採用しております。

感覚的には吐いてはないが抑え込むような感じでしょうか?


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