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ただただただ。 ~変わらないもの~  作者: けー
二十章

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生産廃人の本気



 さあ、ここからどうするんだろう。と思っていたら、お兄ちゃんはあの計画を本気でやる気だったらしい。


 連れてこられたそこそこ魔素の濃い山奥で、さあどうすればいい。と言わんばかりのお兄ちゃん。その手にはしっかりと、赤黒い液体が入った大振りの瓶がある。


「とりあえず、作ってお兄ちゃんがマスターになれても、あたしが上書きや停止はできるで?」

「上位者権限か? それとも種のせいか?」

「どっちかって言うと種やね。あと星との繋がり」


 溜息を吐くように言いながら、簡単な説明だけをする。


 今日この場にいるのも五人で、お姉とのり君は本当に久々に一宮ダンジョンに行き、その後二宮や三宮にも足を運ぶと言っていた。


 拓斗は慌ててたけど、面白いから止めなかった。それに今日はお姉が達いても暇だろうし、邪魔されればそれは危険だ。


「たぶんやけど、種にあたしの血を一滴馴染ませて、後はあたしがやったようにやれば大丈夫やと思う。ただ血の量も魔力もあたしより必要やで?」

「想定してどっちも準備しとる。絵里子製のマナポがぶ飲みすれば何とかなるやろ」


 止めても無駄だとわかっているから、せめて先に休む場所を作ろうと提案だけする。


「あたしより体力も時間もかかると思う。最悪を考えて寝場所だけでも作ってる方がよくない?」

「今回は俺と智は車使わせてもらうから、恵子らは帰るって言うてたし」

「俺達も一先ず車だけ出しておくか? 後タープを張って机と椅子を出して置けば一応は休めるだろ?」


 あたし達は元気だしそれで十分あろう。ここで一泊になればその時準備すればいい。


「考えていたんですが、血は繋がりだから無理としても、魔力は違う人も注ぐことはできないのでしょうか?」

「複数人で魔力を入れるってこと?」

「はい、魔力は初期エネルギーのような物なんですよね?」

「たぶん感覚的に言ったらそうなる。けど確かにそう考えたらいけるかも。血は一人じゃないとあかんし、魔力もたぶんその人の注いだ魔力量は越えたらあかんと思う」


 ダンジョンがちゃんと馴染むために、そこは同じにしとかないとずれが生じてしまう。近ければ何とかなってもややこしいことになる予感がする。


「ならば私でも手伝えますね」

「俺らもできますね」

「絵里子が作るときでも他が魔力を注いでも大丈夫そうか?」

「ちょっと待って、整理するからー」


 頭の中にある情報を、急に言われても取り出すことは簡単ではなくて、整理しながら考える。


 ダンジョンを作る際に必要な物は、姫巫女の種と血液と魔力。この三つがあれば作ることは可能だ。


 あたしの場合は種を植え、血液を水代わりに与え、地中深くと繋がりを作り供物の代わりとなる。


 初期エネルギー代わりに魔力を入れ、それがダンジョンの核と成長し、魔晶石の間を作り上げる。


 考えてみたら確かに初期エネルギーだし、他の魔力が多少混じっても大丈夫だ。あたしの魔力量を超すことはないだろうし、そこは安心してやれる。


 ただお兄ちゃん達の場合だと、そこを気をつけなければいけない。星との馴染みが弱いからあたしの血を付け、馴染ませた姫巫女の種が必要だ。それに魔素の濃い場所の方が作りやすくなる。じゃないと脆い弱いダンジョンしか作ることはできないだろう。


「たぶんできる。言ってたように魔素の薄いとこはあかんけど、そうじゃなくてマスターになる人の魔力量さえ越えへんように気をつけたら、誰でも魔力は入れれると思う」

「なら今回は確認して、できそうなら手分けもできるな」

「メンバーと他ギルドが間引きしてますし、その間にスタンピードが起こらないダンジョンを作れれば、また変わりますかね」

「どうやろな。その確認がまだ取れてないし、魔素の出方も。前ダンジョンを作ったのは魔素が弱いとこやからな」


 お兄ちゃんと智さんの間では色々話が進んでるんだろう。


「ならあたしはここの確認が終わったら間引き?」

「そっちの方が今はいいかもな。お前は濃い魔素の場所じゃなくても作れるし」

「危ないダンジョンに回って頂くことになりますが」


 それは仕方ないことだろう。お姉達やみんなも行っているし、それだけの強さがあるんだから。


 本当なら既存のダンジョンをあたしの物にできたら一番早いんだけど、それにはダンジョン最下層までクリア。と言う時間がかかってしまう。それを考えたら今は間引きを中心にして、少しでもダンジョン内の魔素を減らすべきだ。


「まあさっさとここに作ってしまおか。とりあえず最初は俺だけでやってみるから」

「あたしが魔力入れたらあたしのになるから、あたしは入れれんで」


 星との繋がりで馴染みがいい分仕方ないことだ。まあそのおかげで、一人で時間さえあれば作れるんですけど。


 あたしのときで小一時間と言っていたっけ? お兄ちゃんでどれくらいかかるだろうか。様子を見て、みんなも手伝うだろうけど。


 そんなことを考えていればお兄ちゃんが適当に穴を掘り、あたしに手を差し出してくる。その手に血を付けた種を渡せば埋めて始めるようだ。


 瓶を開け一本、二本とその場に赤黒い液体を注ぎ流し、それは地に染み込んで飲み込むように消えていく。何本準備してるんですか。


 前回と同じく、消えていく血液に不思議に思いながら、それが何本目かで溢れるように消えなくなる。


「これで次、行ったらいいんか?」

「うん、それで種に意識向けて魔力入れてく感じ」


 こうやって客観的に見てると、やっぱり黒魔術だな。お兄ちゃんの魔力を飲み込むように、どんどんと吸い取って、地中に魔力が溜まるのがわかる。見える人から見たら驚きの光景だろう。


 お兄ちゃんが少し苦しそうに額に汗をかきながら、片手でマナポーションを開けて呷る。まだもう暫くかかるけど、耐えれるだろうか。




 心配で見ていれば、お兄ちゃんの周囲には何本もマナポーションの瓶が転がり、汗から顔を伝いながらも、お兄ちゃんは魔力を入れることを終わらすことができた。


「お前、やっぱバケモンやろ」

「妹に対して最低やな。伊達に姫巫女ちゃうわ」


 繋がりや魔力量と質、それを考えればあたしより大変で、時間がかかっても、一人でやり遂げたお兄ちゃんの方が化物だ。


「ここなら人が来てもあたしら追っ払うし、先に休んだら?」

「そうやな、さすがにちょっときついわ」


 そう言って気怠そうに車に向かうお兄ちゃんを見送れば、智さんが小さく息を吐いた。


「無事になんとかなりましたね」

「お兄ちゃんも魔力量はそれなりにあるしね。悪いんやけど瓶の回収お願いしていい? あたしが近寄って、下手に魔力入れたくないから」

「わかった、絵里子は昼飯でも頼めるか?」

「そうやね、お兄ちゃんも起きたらお腹減ってるやろうし」



 お昼も作り終わって暫くのんびりとしていれば、お兄ちゃんが起きてきたのは昼を過ぎてからだった。


「おはよ、体調どう?」

「おはよーさん、それなりに疲れとれたわ」

「ならご飯しちゃおか」

「先、食っててくれてよかったのに」


 手早く準備をしてお昼を食べながら、お兄ちゃんが休んでいた時の話を進める。


「なら種入れる強化は、基本的に俺かお前しかできんのか?」

「まあそこはマスター権限と上位者権限やもん」

「サブを智にするとしても、強化できんのは辛いな」

「単独で動くなと言うことですよ」

「転移陣置いてたら一瞬やないか。それに先にある程度種を入れて強化してたらいいんやろ?」

「ここなら器を広げてたら、ある程度、勝手に貯まるんちゃうかな? ただあたしのより馴染みの関係で、今はまだ貯まり辛いと思ってて」

「馴染みなあ」

「その内に星に馴染んで普通になるわ」


 星からしたら異物とまでは行かなくても、違うものでしかないダンジョンだ。時間が経てば馴染み、エネルギーの貯まりも良くなるだろうが、最初は少し時間がかかるだろう。


 それも直接魔力を入れたり、姫巫女の種を入れることで多少改善できる。


「飯食い終わったら、とりあえずやってみるか」

「原案の地図は三十階までは作ってます」

「素材の確認もできてますよ、ただ前回のようにできるか確認がいるみたいです」

「のりからも色々武器や防具を預かっている」

「ありがとうな、助かるわ」


 みんなもなんだかんだとやる気ですよね。あたしだけやることがない。下手を打って魔力が混じっても困るし、気をつけて見守るしかないだろう。



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