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ただただただ。 ~変わらないもの~  作者: けー
一章 閉じ込められたのダンション
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カーディガン



 戻ってきてすぐ半球へ。触れてポイントを確認すると驚いた。

 10ですって。

 あのスライムが? 鼠よりいいの? 怖くなかったよ?


 ただあの通路でスライムばかりと会えるとは限らない、鼠と出会ったら振り切ることはあたしには難しいだろう。スライムに会えたらラッキーと思うしかない。


 とりあえず今日の干し肉は手に入れておく。水の時同様、白い靄が現れ消えると麻袋に似たあたしの両手より少し大きい巾着袋に入った干し肉があった。

 この袋とかペットボトルとかどうなってんだろ?



 それからポイントの横に出た『買取』の文字。

 前に見たときにはなかったその文字に、嫌な予感がしながらもそこを押す。現れた画面には『買取品 極小魔石』と出た。


 やっぱりだ、魔石って何よ? さっき拾った石でいいんだよね?


 あたしがその画面を見続けても仕方ないと、極小魔石を選ぶと『20ポイントになりますがよろしいですか』と、はいといいえの選択肢が現れた。


 あの石だとしてここに閉じ込められてる今、置いておいてもなんの役にも立たない。ならポイントで食べ物か武器に変えたほうが絶対にいい。


 迷わずはい、を押すとポッケに違和感があった。確認すれば入れたはずの石がない。

 ほんとどうやってるのかわからないけど、人のポッケ触るとか痴漢か。



 画面を見れば最初の画面に戻っていて、ポイントはちゃんと20ある。これで最悪干し肉代は稼げた。

 ただ一つ気になっていることがある、スライムを倒して出てきたのが魔石だ。


 じゃあ、鼠は?


 あの時思い返しても、そこに力なく横たわった鼠がいただけで、他に何も落ちていなかったと思う。動かしたりしてないから絶対とは言いにくいけど。


 だからってあまり触りたいとも思わないし、もし落ちていなかったら体内にあるってこと? 剥ぎ取りってこと? RPGじゃなかったの?



 考えても仕方がない、鼠と出会ったら考えよう。倒せるかもわからないし、すでに精神力はかなり削られてる。これ以上はよろしくない。


 そんな気持ちから懐中時計を取り出して時間を確認すると、もう十九時だ。早いが食事をして寝てしまおう。

 食事って言っても干し肉だけど。


 初めて食べたけど意外と美味しい。硬いししょっぱいし水が必要だけど。よく噛むことでお腹は膨れそうだ。少し残しておくことにした。


 寝る場所はどうしようもないし、そのまま地面で。この地面汚れもないし、タイルや石みたいにつるつるだから何とかなるでしょ。明日の朝、体が痛そうだけど。


 通路から鼠やスライムが来るんじゃないかと正直怖い。それでも少しでも寝て体力回復させたいし、そこを考えたら体を起こして寝るより横になりたい。

 たぶん熟睡なんてできないからなんとかなるでしょ、と気楽を装い諦めただけだ。


 そんな感じで使わなかったカーディガンを自分にかけ、目を瞑り一日目を終わらす。

 これは遭難なのか監禁なのかどっちだろ、とか考えながら明るい部屋でごろりと寝返りをうった。





 何度も何度も寝返りをうち、浅い睡眠を繰り返した。寝る前の予想とは違い鼠もスライムもやってこず、なんとか数時間は寝れたかな?


 体も思ったより痛まず、これなら今日も何とかなりそうと思いながらも気が重い。


 本当はね、まだ信じれていなかった。目覚めるといつもの家で、すごい夢を見たって笑いたかった。

 父と母に手を合わせ、疲れてるのかな、気を付けるよって。


 こんな硬い床で目覚めたくなかった。家に帰りたい。


 考え始めると感情が止まらない。どうして、ばかりが湧いてきて鼻の奥がツンとする。

 でも泣きたくない、泣くもんか。帰るって決めたんだから。


 歯を食いしばり顔を上げる。大きく息を吐きペットボトルを手にすると昨日残った水で顔を洗う。気持ち分だけはさっぱりした気がする。



 よし、もう異常者でもなんでもいい。ここはダンジョンでモンスターが出る場所、そしてそれを倒してステータス画面でポイントと食べ物を交換。


 解放される条件はわからないけど、たぶん進まなきゃ帰れないんだろう。

 せめて帰れると思わなきゃやってられない。人間、開き直りだ大事って言うし。



 あたしは立ち上がると腕を伸ばしたりと準備運動を始める。運動部なんてしたことないから適当だけど。


 そしてポイントで水を購入する。驚いたことに空になったペットボトルに水が入った。瓶みたいに値引きはないんだね。

 でもほんと魔石拾っててよかった、残り15ポイントで最悪今日の保険はある。

 できればまたスライムに会って、ポーション(微)を手に入れたいとこ。


 合言葉は命大事に。これ、何より重要。


 昨日残していた干し肉と購入した水で食事をとり、この後、体を動かすことを考えたら食欲なくても食べたほうがいいだろう。

 水は昨日と同じくここに置いていく。特に変化もなかったし大丈夫だろう。他に手段もないし。


 手にするのは昨日使わなかったカーディガン。心細さしかないけど何もないよりはいいと思う。

 命のやり取りなんて、これまでの人生で考えたこともなかったけど、帰るため藻掻こうと決めたんだから、この先に帰るための道があると信じて行くしかない。


 あたしは決意を新たに通路へと向かう。





 相変わらず明るくて不思議な場所。通路には草も生えていないし綺麗に見える。そんなことを考えながらも気を緩めない。奥から微かに聞こえてきた音で足を止めた。


 鼠かスライムか、それとも違う生き物か。決意したって緊張することに変わりない。

 耳を澄ましてみれば這いずるような音ではない。それに近づいてくるのも早い。


 鼠だ。


 姿が見えた鼠は、前と同じく真っすぐ向かってくる。あたしは身構えるとカーディガン広げ持った。


 やっぱり鼠は早い。一目散にあたしに近づくと、噛り付こうと飛び上がる。その瞬間を逃さないようにカーディガンを鼠にかけた。

 飛び上がった勢いでカーディガンに包まれるように落ちていった鼠、あたしは急いで袋状になるようにカーディガンを両手で掴んだ。


 キィキィと袋の中で暴れる鼠、意外に力強くこのままじゃすぐに逃げられそうだ。


 どうしようと考えるよりも先に体が動いた。力いっぱい振りかぶるとそれを壁に叩き付ける。一度ではまだ鳴き声が聞こえた。


 何度も何度も壁に叩き付けていると、気づけば鳴き声はやんでいた。


 はぁはぁと息が荒くなってる。まだ両手で握りしめているそれは動くこともなくだらんと袋状に垂れ下がっていた。


 動かないのに、まだ叩き付けた感触が手に残ってる。強く握りしめすぎて白くなった手。覚悟決めたからって平気になるわけじゃないんだ。


 さすがにカーディガンを開いて見ようとは思わない。確認したいことがあるし、一度オブジェの部屋へ戻ることにした。




 戻る間も鼠は動くことなく、カーディガンに包まれたまま。あたしはそれを中が見えないようにオブジェの横に置くと、ステータス画面を開く。


 もし鼠が魔石を持っているのなら、このまま買取できるか確認したかったんだ。剥ぎ取りはさすがにできる気がしないし。

 不安に思いながらステータス画面を見ると『買取』の文字。あたしはほっとしながら買取を進めていくと驚いた。


 スライムの時と違って『買取品 極小魔石 牙 皮 肉 全て』の文字、一つずつ確認していくと極小魔石20牙20皮20肉5。それに倒した鼠のポイントをいれると70ポイント。


 え、鼠ってすごい? 鼠狩ってればすぐ武器とか買えちゃう?


 そんなこと考えてしまうがハッとなり頭を振る。戦闘後の高揚感とポイントの大きさに気が大きくなってるみたいだ。

 今回はたまたま上手くいっただけ、そんな毎回上手くいくとは限らないんだ。気を緩めるなんてあってはいけない。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] コピペミスなのか、同じ話の繰り返しになっていました。
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