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ただただただ。 ~変わらないもの~  作者: けー
三章 姫巫女ってなんだ?

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忘れていたけど巫女だった



 一番最初に口を開いたのは、意外にも胡堂だった。


「俺はできれば、地下に部屋を貸してもらって住まわしてほしいです。生産系も魔法もできるだけやれるようになりたいんで」

「それはいいけど、家族とかいいん?」

「俺の場合は縁を切ってしまってるんで、関係ありません」


 お兄ちゃんは少し考えると、残り二人を見た。


「俺らは、仕事もあるし家族もおるからまだ決めれてません」

「なんでなん、胡堂さんと同じでこっち住んだらいいやん」

「摩耶、これは二人だけの問題ちゃうやん。おとんとおかんどうすんの? 爺ちゃんも婆ちゃんもおるんやで、みんなここで面倒見てもらえへんやん」


 たっちゃんの言い分に摩耶が噛みついた。あたしとしては苦しいけどたっちゃんに賛成だ。あたしたちで全ての人を守ることなんてできない。


「ただできればでいいんですが、俺の弟もダンジョンに連れてかしてください」


 たっちゃんはそう言うと頭を下げた。


「健也君やっけ?」


 あたしは記憶から思い出すように探す。たしか十歳離れてたはずだから今は二十四か。若いし確かに戦力としては申し分ない。


「ちゃんと契約書も書かせて、絶対に他言させません。それは身内の俺が保証します」

「お兄ちゃんそれぐらいいいんちゃう? これからを考えると戦える人間がおることは悪いことでもないし」

「お前簡単に言うなや」

「そんな気にするなら最初はお兄ちゃんの作った認識タグ渡したらいいやん、神社前に宿泊施設とかも作れるし」

「その手があったか。お前、今ポイントは?」

「足らんかったら午後にでも稼いでくる、自分の友達のことやし」

「ならお前は先に確認してこい、その間に話し詰めとくから」


 あたしは神社に向かい御簾の中に入る。なんか魔晶石が光ってるような気がするのは気のせいか?

 嫌な予感しかしないけど、見るしかないよね。


 起動させればあたしのステータス画面、ポイントの横に『管理』の文字、そしてそれが点滅してる。

 頭痛いけど確認が先か、あたしはそこを押すとのり君と胡堂たち三人の名前が浮かび、ステータスの確認できた。


 確か今までこんなものはなかったはずだ、違いはなんだ。と、色々触っていけばのり君の職業が色々出てきた。

 盾職、戦士、鍛冶師、ギャンブラーなど。他の三人は職業触っても何も浮かばない。あたしは仕方なくお兄ちゃんを呼びに地下の居間に戻ることになった。



 結局みんなで神社にやってきた。みんな画面が見えるわけでもないのに話しやすいように御簾を上げれば、その前には興味深そうな三人がいる。


「なんやろ、お兄ちゃんとお姉は名前はないのに四人はあるねん」

「もしかして認識タグちゃう? 四人とも絵里子が作ったやつやろ?」


 のり君の職業を紙に書いたものを見ながらお姉に言われ、確かに考えてみれば認識タグをお兄ちゃんもお姉も持ってない。


「それは達也君の弟が来たら確認しよか、あとは職業か」

「魔晶石を使ってレベル5から選べるはずやけど、選ばんでもレベル10で勝手に決まるはずやで?」

「そうは言っても魔晶石はここだけやろ? 閉じ込められてる人らもそんな簡単に職業選択なんて気づかんやろうし。のり君なにするか決まった?」


 お兄ちゃんは会話の途中でのり君に声をかける。


「このまま盾職がいいかと思うんですけど、お義兄さんどう思います?」

「俺ら考えたら戦士より盾のほうが有難いかな、胡堂くんどう思う?」

「宏さんが後衛職で恵子さんが前衛寄りの中衛、絵里子遊撃よりのはオールマイティーなら俺も前衛特化がいいと思いますよ」

「じゃあ、のり君がいいなら盾職選択してみよか。剣が振れんわけじゃないし」


 あたしがのり君を見れば頷いてくれる。それを確認してからのり君の職業から盾職を選べば『職業を決定しますか  はい いいえ』と出てきた。

 最後にもう一度のり君に言えば、笑顔でよろしく、と言われたので、あたしははいを選ぶ。


 それは選択した一瞬の間に魔晶石が輝き、のり君の体を金色の光が包み込む。のり君は慌てて自分の手足を見て、お姉が焦りながらのり君に触ろうとするけど、光に拒まれて触れない。


 あたしとお兄ちゃんが声を上げ、段を下りようとするより先にその光は収まった。


「のり! 大丈夫? 痛いとこは? 気持ち悪くない?」

「のり君どっかおかしいとこないか? 絵里子はすぐにのり君のステ確認し」


 のり君が心配だけど、お兄ちゃんとお姉に任せてステータスを確認する。本人気づいてなくてもステータスでわかることがあるかもしれない。


「大丈夫やから、落ち着いて恵子」

「そんなんわからへんやん、病院行く?」

「何をどう説明する気や、とりあえずお前は落ち着け。そんでのり君はほんま大丈夫なん?」

「はい、痛くも痒くも。逆にあったかいぐらいでこうほわっとすると言いますか」

「俺らが加護貰ったときみたいな感じか?」


 お兄ちゃんが首をひねりながら考えてる。


「のり君、職業固定されて力と耐久が上がったっぽい。体力が減ってるとかもないし、特に変なとこないで」


 あたしの言葉を聞いてお兄ちゃんとのり君が安堵の吐息を吐いた。お姉はまだ少し心配そうだ。


「姉さんすごい、姉さんも輝いてましたよ!」

「「は?」」


 ほっとしたのも束の間で、摩耶がキラキラとした目であたしを見上げ言う。お兄ちゃんとあたしの声は重なった。


「いや、ほんまですよ。薄っすらですけど。たぶん御簾下ろしたらかなりかなり神秘的に見えるかと」

「加護持ちにはわからんのか、もしかしたらのりさんに集中していたからわからなかっただけもですよ」


 たっちゃんと胡堂にまで光っていたと言われてしまうと、認めるしかないんだろう。認めたくはないけど。

 お兄ちゃんが要検証やな。と、言いながら何かを考えている。


「姉さん、レベル5で職業選べるんですよね? 姉さんにつけてもらえるんですよね?」

「た、たぶんな? あたしがやらんでも10なったら勝手に決まるらしいけど」

「嫌です、姉さんにつけてもらいます! それまで頑張ります!」


 そんな詰め寄らなくてもいいと思いますよ、後ろの旦那さんが諦めた顔してますから、とりあえず落ち着いて。


 このままここにいてもしょうがないと、あたしたちは地下の居間に戻った。お姉とのり君は確認のためにまたダンジョンに行くらしい。



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