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ただただただ。 ~変わらないもの~  作者: けー
十七章 証明

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射貫く目



 階下になればなるだけ、道が複雑になって来たこのダンジョン。おかげで予定より進まずに、夕方過ぎに二十八階に下る階段まで来ることができた。


「今日はここで泊りやな。結界石と魔物避けの香準備しよか」

「誰も来うへんってわかってるからできることやんな」

「組合はあまり、階段の踊り場に溜まらないように言ってますからね」


 今のところは安全だと言われている階段だ。六畳間ぐらいはありそうな広い踊り場は、休憩場所としては有難いが、どうしても人が溜まりやすいだろう。


「仕切り作って簡易のシャワー出すから、先に絵里子終わらして飯の支度してくれ」

「はーい」

「他は寝場所の支度と警戒な。それと魔物の解体も少ししてまおか」


 階段の上で解体をしてしまうようだ。人数もいるしたぶん大丈夫なんだろう。要らない物は捨ててしまい、荷物を減らして行かないと採取と魔物で溢れてしまう。


 あたしはさっさとシャワーを終わらせて、マジックバックからコンロと鍋を取り出していく。他にも焼くだけでいい物なんかも幸康さんは入れていてくれて助かります。


 手早く仕上げて温めて、それだけでご飯の支度は終ってしまい逆に申し訳ないぐらいだ。メンバーの分は大丈夫かな? と少し心配になったが、最悪取りに帰るつもりで用意してくれたんだろう。


「ご飯もうできるよー」

「早いですね。解体組に声を掛けてきますから、姫様は休んでいてください」


 そう言われてコンロを止めた。そのまま敷かれた柔らかな敷物の上に転がる。毛並みが良くて触りたかったんです。


「なんや、眠いんなら飯食ってから寝ろよ」

「違うわ、これ堪能したかっただけ」

「それ、今回お前の寝床に使われてるで。智の拘りやそうや」


 おう、マジですか。有難う御座います。と、智さんに言えば微笑まれた。


 みんなのシャワーも終わり夕食を食べ始める。


「けどダンジョンで寝るなら、もう少し進んでからでもよかったのに」


 どこか拗ねたような不服そうなお姉の声。それにお兄ちゃんは呆れたように溜息を吐いた。


「あほか、初日やからどうなるかわからんから早めにしたんや。ちゃんと寝れそうなら明日は朝早めに出発、ただ階段に辿り着くタイミングによって寝起きの時間が変わるから、そこだけは注意やな」

「そうですね、道も複雑になってきましたし、一階ごとのエリアも広がってる気がします」

「地図を見ても間違ってないと思うし、その日の終わりどこでつけるかやね」


 多少は魔法で強引に進んではいるが、それでもここまで来るとそれだけでは進めない。魔物の質はかなり変わってきているし、強くなってきている。


「明日からも注意怠らずやな。なんぼレベルあっても死ぬときは死ぬんやから」


 死は平等だとあの横暴な神は言った。その言葉が最近なぜかやけに重く感じてしまう。


 誰も死なす気はないが、絶対はどこにもない。それをわかっているから、あたしは覚られなように食事を続けた。



 寝床はあたしとお姉の所だけ一応仕切りが立てられ、地面に薄いマットを引いて、その上に柔らかな毛皮の敷物、それに毛布をかぶれば出来上がりだ。

 本音を言えばお姉と一緒は嫌だったけど、お兄ちゃんが注意してくれたから大丈夫と信じてる。ちゃんと寝ないと、明日のダンジョン探索できないと言われているし。


 今日は早く休んで、明日早くに出ると言われ寝床に入ったけど、いつもよりかなり早い時間だ。簡単に眠気はきそうにない。

 ただ智さんのおかげで床は柔らかく、体が痛くならなそうなことは助かったけど。


「なあ絵理子、起きてる?」

「寝た」

「絵里子はこれからどうしていきたい?」


 寝た。と言っているのに、言葉を続けるお姉。無視しようかと思ったけど、その内容にあたしは一瞬止まった。


「どうしてって、どうゆうこと?」

「んー、絵里子はダンジョン間引きをしたほうがいいと思ってるんやんな?」

「うん、それは間違いない」

「ダンジョンは潰したほうがいいと思ってるの?」


 それはそうじゃないんだろうか? 潰せるとわかったし、潰すことで人の生活圏が増やせる。


「潰せることがわかったから潰す。ってなってない?」


 真っすぐなお姉の目が、薄闇なの中で見透かすようにあたしを見てくる。それをなぜか正面から見れなかった。


「自然氾濫を考えれば、ダンジョン間引きは必要やとお姉ちゃんも思ってん。けどまだ魔素を出し切ってないのに、ダンジョン潰しても、またできるやろ?」


 確かにその可能性もあるが、絶対に新しいダンジョンができるかもまだ分からない。ただ魔素のことを考えると、その可能性は高いと思われる。

 けど、それじゃあいつか、人の生活圏がなくなってしまう。


「正解はわからへん。ただ絵里子としての考えと、姫巫女としての予感がごっちゃになってない?」


 どこか心配そうなその声に、そこでお姉が何を言いたいのかようやくわかった。


「確かにそうかもしれん、焦ってるんかなあ?」

「お姉ちゃん的にはそう見えるよ」

「無意識やねんけど」

「人の未来なんて絵里子が気にすることじゃないで。もしダンジョンができたことに責任があるなら、それは全人類、全てとあの神たちや」


 様々な要因でできた汚れ、そこに人も関わっている。それが今、魔素になり、世界中でダンジョンと言う形で吹き出している。


「責任、背負うつもりはないけど、それでも色んな人と出会ってしまったからなあ」


 一宮の高遠さんや組合職員さん達。二宮にはたっちゃん達もいるしお爺ちゃんお婆ちゃん達。東北でも道中に応援してくれた農家さんがいたし、この間の市では石鹸を売っていたお姉さんやおまけしてくれたお肉屋さん。他にも様々な人と出会い今がある。


「この世界がなくなればいいとは思えへんねん。そんでただ閉じ籠ってればいいとも」


 善い人、悪い人、様々だけど、それはまた角度を変えて見れば、きっと変わってしまう。


 ダンジョンは魔物を産み出し人を殺す。けどその真逆に、人に様々な物を与え生活を豊かにしている。

 一概に全てが悪いと思えなくなってきてしまってるんだ。


「お姉ちゃんは姫巫女なんて関係なく、絵里子の好きにしたらいいと思う。絵里子が姫巫女を知りたいって言うなら協力するし、星の魔晶石が欲しいって言うなら取ってくる」

「そんな簡単な事じゃないやん」


 苦笑しながら言えば、お姉の真剣な目があたしを射抜いた。


「絵里子の願いを叶える。これがお姉ちゃんのやりたいことで夢やから、どんなことをしても、絵里子が嫌がってもやり遂げるよ。だから絵里子もこれぐらい我儘でいいんやで」


 本当にいつもこの人には驚かされる。他人に興味がないようで、他人を見ていないように思うのに、実際の所は誰よりもわかっていたりするこの人には。


 お姉には今のあたしがどう映っているんだろうか。


「お姉ちゃんとしては絵里子に危ないことしてほしくない。けど絵里子が望むなら守るだけ。だから一人で危ないことだけはせんで、誰にも言わずにどこかに行ったりしたらあかんねんで」


 それはまるで願いのような、祈りのような言葉で、その真剣さだけは伝わった。


「わかってる、それに一人行動は今、誰も許してくれんよ」

「絵里子は隠すん上手いからな。秀嗣辺りは簡単に騙されそうや」

「秀嗣さんに酷いな」


 普段道理に返せばお姉の声も普段に戻る。それにくすくすと笑うのに、胸の内をなんとも言えない感情が渦巻く。


「お姉ちゃんも絵里子が閉じ籠ってるだけじゃ笑ってくれへんってわかってるから、ただ無茶だけはしたらあかんよ」

「わかってるって、そんなんした日にはみんな大変やん」


 無茶の内容にもよるけど、失敗すれば阿鼻叫喚の地獄絵図が広がりそうだと思えば自然と笑えた。誰がこの姉を止めるのか、とりあえずお兄ちゃんとのり君が大変そうだなと浮かんだ。



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