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ただただただ。 ~変わらないもの~  作者: けー
十七章 証明

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平和な日々

 


 数日経ってお兄ちゃんに見せられた一枚の紙、それは緋色を一面にし上下に白の横線が引かれ真ん中には左から白、濃い赤、黄色が黒線で囲われ描かれていた。


 白の少し下にはもう一回り小さな白が、赤の上下には一回り小さな赤、黄色の上には一回り小さな黄色、見る人が見たらすぐに何を差すのかわかりやすい絵柄だ。


「明星言うくらいやから星をイメージして俺達七人をそのまま表してる、智がお前の赤をどうしようか悩んでたぞ」

「背景も赤やもんな、背景薄い紺とかでもいいと思うで、夜明けの色で。形はわかりやすいっちゃわかりやすいしいいんちゃう」


 もうギルドの名前が決まってるならマスコットとして確定している、今更色や真ん中赤でいいの? と言うのも違う気がするから素直に頷いておく。


「んじゃ大まかなデザインはこれでいいと、一応こっちもあるねん」


 そう言って差し出されたのはさっきの七つ星の後ろに黒塗りで剣のシルエットを描いているもの、他にも同じように盾やポーション瓶と弓、それにポーション瓶だけの物もある。


「剣は探索者、盾は警備、ポーション瓶と弓は生産、ポーション瓶だけが裏方、氾濫の時とか救護の際に裏方とかわかりやすいほうがいいって皐月さんの案」

「わかるけど危険も増えるで」

「俺も言ったけど覚悟の上やって、一応お試しやぺーぺーは各部署のリーダー判断で星だけかこのマークかになる」

「部署のマークがない人はまだ認められてないってことにするん? きつくない?」

「そこまでとは言わんけどそれだけ看板背負うのは重いってわかりやすくなるからいいってよ、二軍まではしっかり背負えるやろ」


 確かにそうだけどそれを皐月さんが言う辺りが本当に凄いと思う、あの人の覚悟はいつも驚くほど硬く見上げるほど高い。


「一軍がそれでいいって言うならいいと思う、ただしっかりと覚悟の見極めするように言えば」

「今のところそれなりに纏まってるからな、まあ確認してこれで進めていくわ」

「ギルド説明会は決まったん?」

「そっちも高遠さんと話はしとる、ただメンバーどうするかや」

「どうするとは?」

「俺らの全員出席か少数に絞るか、出席数もわからんしまだ色々未定やけどな」


 どこでやるかによっても大きく変わってくるだろう。他のギルドがこの説明会に対してどう考えるか、あたし達ギルドをどう思っているかでも変わってくる部分もあると思う。


「できるだけ早くするつもりやし、詳細決まったらまた言うわ」


 そう言って居間を出て行くお兄ちゃん、相変わらず忙しいんだろうなと見送ってあたしはどうしようかと迷う。


 今日は珍しく居間に一人だ、拓斗と秀嗣さんは一軍に頼まれて訓練に付き合っている。

 この間のダンジョン攻略以降、メンバーみんなやる気に溢れお姉やのり君もよくご指名を受けて訓練を見ているようだ。


 まだお試し期間の人もいるが、今回はもう問題はそう起きないだろう。ダンジョン攻略の間に仲が深まり、あのダンジョン消滅を見たことで、あたし達パーティーに対する気持ちは大きくなったようだ。


 ただそのおかげでみんなが訓練に駆り出され、あたしは一人裏に籠ることが増えた。境内前に行くにしても一人では駄目だと言われているし、できれば資料室も一人はやめてほしいと過保護組が言う。


 仕方ないとあたしは立ち上がり、朝行ったばかりの庭に行く。空があり開放感があることで、最近はこの東屋で時間を潰すことも増えてきた。



 植えた植物の状態を軽く見ながら東屋に行き、お茶を淹れてノートを二冊取り出して机に置いた。

 一冊は庭の観察ノート、もう一冊はあたしの頭の中を整理するためのノートだ。


 姫巫女の力、聖魔の魔力、それに新しく星の魔晶石が加わって頭がパンクしそうだから、わかることを少しずつ纏め始めている。


 どれもわからないことは多いが、こうして書き出すことで少しずつでも整理ができたら何か見えてくるかもしれない、そう思ってやり始めたことだ。


 おかげで少し試していることがある、たぶんばれたら怒られるんだろうなと思いながら、みんな忙しそうだしと自分に言い訳して。


 簡単に言うと聖と魔の魔力を単体として使えないか? ただそれだけだ。


 お兄ちゃんとお姉は片方ずつ持っているし、書き出したことで初めて聖魔を使って秀嗣さんを回復させたときのことを思い出した。


 あの時、強くお兄ちゃんから使うなと言われていたから考えてこなかったけど、状態異常回復は魔属性、治癒や再生が聖属性、もう一つは今は置いておいて、こう考えると属性として全くの別物なはずなんだ。


 それに他の人を考えても属性無しの自分の魔力は無属のはず、じゃないと生産が効果や効力にもっと偏りが出ておかしくなるはず。


 だったらあたしも聖と魔をしっかり別属性として使うことができるはず、それができたらきっと無属性の魔力放出もできるはずと地道に頑張ってはいる。


 ただそんな簡単じゃないから今までできなかったんだよなあと、魔力を巡らせながら今日も思う。


 どうしても今までの使い方で慣れ過ぎていて、何度も試行錯誤しながらここで一人試しているが、今のところ何一つ見えてこない現状。

 誰かに相談してみるべきかと思うけど、みんな危険だからやめろと言いそうで相談できていない。


 もうしばらくはこのまま一人で頑張るしかないんだろうなあ。



 そうして暫くは一人の時間を潰しながら、ギルド名がメンバーの満場一致で(あけ)明星(みょうじょう)に決まり、ギルド印としてあの七つ星のマークで決定登録したと聞かされる。


 わかっていたしそうなるとは思っていたけど、やっぱりあたしはどうかと思います。


 そして智さんがギルドで生産した物にもこのマークを入れるのはどうかと言い始めた。ただしあたし達パーティーの許可が出た物だけ。

 そのマークは生産メンバーのやる気を上げるための餌だと拓斗は言っていた。そのうち緋の明星ブランドとか言われるのかと思うとなんだかやるせない。


 それでもその噂を聞いた生産メンバーのやる気は激しく上がってるようで、最近訓練以外にも前以上に時間を取って訓練と生産に励んでいるそうな。

 やる気になるのはいいことだからいいんですけどね、たぶんその噂を流したのも智さんですよねと、思ったけど口にはしなかった。



 そして庭にも少し変化はあった。あの聖魔の魔力を注いだ赤と白の合体した謎植物、あの実が徐々に透き通るようなシャボン玉のような色合いになってきた、けどあたしの勘がまだだと言うからそっと観察しているが、早く他のも大きくなってほしいものだ。



 そうやって平和だけど暇な日々は暫く続き、庭でノートを書いていたら、やっぱりお兄ちゃんの突然の呼び出しで忙しい日々がやって来る。




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