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ただただただ。 ~変わらないもの~  作者: けー
二章 戻っても日常には帰れない

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知らぬはあたしばかり



 お兄ちゃんの強い目は変わることなく、神を真っすぐに見て、話し始めた。


「神から与えられた恩寵は、人間の手には偉大過ぎて余るものです。それでも妹は必死に、私たち家族を守るために使いこなそうとしております」


 神はお兄ちゃんの言葉に嬉しそうにうんうん、と頷きながら聞いている。気づけばお姉ものり君も真剣な顔で、お兄の話を聞いてる。


 そこまで大それたもんじゃない。これからを考えて、守りたいものを守れるだけの力が欲しい、自分の我儘のためにただやってるだけだ。


「これから世界が変質していくにつれ、妹の存在は稀有(けう)で特別なものになってしまいます。そうなれば妹を手に入れようと様々な権力者や欲深いものが妹に群がることでしょう。私は兄としてできる限り妹を守り通す気です、この二人もそれは同じ気持ち、それでも私たちちっぽけな人間の命を懸けたところで、妹を守れる保証はありません。もしかしたら私たちが望まぬとも、人質となり妹を苦しめる可能性すら有るのです」


 いつもすぐ怒って頭叩く癖に、面倒なことはあたしにやらせるし、お使いとか無理矢理行かす癖に、なんでそんな真剣に言ってるの、なんでそんな必死に言葉繋いでるの?


 お姉とのり君も真剣に神を見て、お兄ちゃんの言葉は二人の言葉でもあると証明してるように。


「ですから、どうか、どうか、この弱い脆弱な私たちに少しの力を与えてはいただけないでしょうか」


 お兄ちゃんと同時にお姉とのり君が頭を深く下げる。あたしこんなこと聞いてないよ? いつ決めたの? いつもいい歳した大人がって言うくせに。


 泣きたくないのに鼻の奥が痛くなってくる。止めたいのに、ただ俯いて隠すことしかできない。


「そうすれば俺の巫女は救われると?」

「わかりません。ただ希少性を少しでも下げ、隠すことはできるかと」


 頭を下げたままお兄ちゃんは言う。いいよ、こんな奴に頭なんか下げなくて。と、言いたいのに上手く声にならない。

 ふむ。と神が考えて三人に頭を上げるように言う。そのまま左右の男女にどうしようかと聞き始めた。


「元々主神様が勝手に巫女様など置くから悪いんですわ、わかっております?」

「俺も同意見ですね、仕事増やさないでください」

「たまには楽しみを増やしたいじゃん」

「おかげでみんな大変ですけどね」

「バランス崩れすぎて帳尻合わせ、誰がすると思ってるんですか」


 もっと責められるがいい神め。と、会話を聞きながら思ってしまう。


「でも、わたくしは彼を気に入りましたわ。主神様ほどではないけれど、わたくしの加護を貴方にあげましょう」

「じゃあ俺は彼女に、これからもその熱意ある願いのまま進めるように加護を与えよう」


 あたしが止める間もなく、女性がお兄ちゃんに、男性がお姉にそれぞれ近づくと額を合わせ力を送る。


「額でできるやん!?」

「絵里子の場合は特殊だよ?」


 驚くべきところも止めるところも違う、そうわかっているのについ口にしてしまった。


 笑うな変態、やっぱり変態。そんなことを思ってるとお兄ちゃんたちに力を与え終わったのか、二人は戻っていく。


「素養があるので楽に加護を与えることができましたわ」


 ここで初めて女性の顔をちゃんと見た。プラチナの細い髪に透けるような白い肌。それはまるで妖精か女神様のように美しかった。変態より主神が似合いそう。


「素養、ですか?」

「ええ貴方たち兄妹は素養が高く、楽に加護を与えられました。巫女様もここまで素養がなければたとえ主神でも、この星では強い力は与えられなかったでしょうね」


 頬に手を当て困ったように微笑む女性、あたしとしては素養がなければこんなことになってなかったという衝撃的事実。


「昔お母さんが巫女家系やったとか言ってたの、ほんまやったんかな?」

「あたし嘘やと思ってた、それにこの星の信仰と神様たちの力は別物って言ってたはず」

「基本的には別物だ、ただこの国の信仰は近い物があっただけだろう。自然現象が信仰対象になる国なんだから。それが素養に繋がったかはわからないけどね」


 お姉との会話に神が入ってくる。同時にお姉にお菓子を進めるのは止めていただきたい、晩御飯入らなくなるから。

 なんか緊張が薄れた、あたしもお菓子をつまみながら会話を聞いていく。


「有難う御座いました」


 お兄ちゃんはそう言いながら頭を下げる。のり君もそれに続きお姉はお菓子を選んでて聞いてない。


「君はまだ話があるんだろ?」

「さすが主神様ですね」


 神の言葉にお兄ちゃんは一瞬驚いたあと、何かを悟ったように力を抜いた。


「では名残惜しいけど三人は先に戻そうか」


 そう言うが早いか、お兄ちゃんを残した三人の下に白く光る魔法陣が現れる。


「え? お兄ちゃんは? 待って、お兄ちゃんも一緒に」

「お兄、手を伸ばして!」

「お義兄さん!!」


 お姉が大声をあげ手を伸ばすが届かない。一瞬の間にお兄ちゃんたちの姿消え、あたしとお姉とのり君は魔晶石の間で立ち尽くした。


「お兄、どうしよ…」

「もう一回三階のあの部屋行ったら行けへん?」

「あたし何回も行ってるけど出てきたことないで…、そうや」


 あたしは急いで魔晶石を起動されると、行動を読まれていたのかメールが入っていた。


『愛しの俺の巫女へ

 あんまり話せなくてごめんね、次は色々話せると嬉しいんだけど。変わりじゃないけどお土産にお菓子ポーチに入れといたから、お姉さんと仲良く食べてね。そうそう、君のお兄さんはもう少し話を聞いたら帰すから心配しないでね、遅くなるかもだから先に寝てて大丈夫だよ

                 絵里子の愛する主神より』


「死ね、ぼけー!」


 あたしが大声で叫ぶと、後ろでお姉とのり君が驚くのがわかった。けど今そんなこと気にしてられない。

 すぐ画面を触り返信できないのか試していく。


『変態へ

 お兄ちゃんになんかあったら殺す。さっさと返せこの変態。

                         絵里子』


 どうやっても宛名が必要だったので変態にしといた。とりあえず無事かどうかはわからないけど、帰すとは書いてあったからお姉とのり君に説明しとく。


 ついでにお姉のステータスの確認も済ませてしまう。副神の加護が増えて各能力も少し上がっていた。


 あとは特殊スキルに真言と神託が増えた。神託に関しては(副神)と書かれていて、加護を与えられた神としかできないみたいだ。

 それと大事なのは、お姉も職業が巫女になって属性に聖がついてた。神託が付いた時点でそんな気はしてたけど。



 そしてあたしはなぜか姫巫女に。


 馬鹿じゃないのか? いい歳したおばさんが姫とか。今のところあたしのステータスは誰にも見えないから言ってない、言いたくない。


 けど、どうせお兄が帰ってきたら確認するとかいいそうで怖いよね。


 素養の問題かのり君には特に加護はないけど、それでもお兄も含めて三人になると少しだけ安心したのも本当で。

 あんな真剣なお兄を見たのも初めてで驚いたけど、今度お兄の好物でも作ろうかなとは思う。


 お姉には先にポーチに入っていたお菓子を多めに渡してあげ、ご飯好きなのり君にも好物でいいかな?


 お兄がいつ帰ってくるかはわからないし、ひとまず地上で晩御飯の支度だけしてしまうことにする。



「なあお姉、ほんまによかったん? 加護なんてついて、巫女になってしまって」

「なんでそんな顔してんの、お姉ちゃんは絵里子と同じになれて嬉しいで。これからどんどんレベル上げて、絵里子より強くなって、絵里子が泣くようなことにはさせへんからな」


 だからこれからも笑っていて。と、お姉は言うと、優しく笑うとのり君と地上に上がって行った。たぶんあたしが知らないところで三人で色々話ししてたんだろうな。


 素直にありがとう、と言ったところで受け入れる人たちじゃない。ならあたしにできることを考えなくては。

 お兄ちゃん達があたしを守ろうとしてくれるように、あたしもみんなを守りたい。そう強くあたしは思う。




 あれから数時間経つが、お兄が帰ってくる気配はない。のり君は仕事もあるし先に寝てもらった。お姉も気にはしてたけど、眠気が我慢できずに寝ると部屋に戻った。

 あたしはどうしても気になって、魔晶石の間で本を読み返しながら待ってる。


 ボス部屋に入ったのは夕方、戦闘は時間がかからなかったことを考えると、神たちの場に行ったのも夕方頃だろう。

 すでに時間は日付が変わってる、さすがに遅すぎじゃないだろうか?


 最近は規則正しい生活をしていたから、さすがにこの時間には眠くなってくる。頑張って本を読もうとしても眠気から頭に入ってこない。



 次に気が付いたのは、お兄ちゃんに揺すられて起こされた時だった。


「こんなとこで寝てないで、早く布団行って寝ろ」

「お、おかえり。大丈夫やった」

「おー、俺は疲れたから飯食って寝る、話は明日や」


 あたしを置いて地上に上がろうとするお兄ちゃん、作っておいたおかずを温めるか聞くと、自分でやるからさっさと寝ろと追い払われた。

 心配してたのにちょっとひどくないでしょうか、お兄さん。


 お兄ちゃんの行動を優しさと受け取ることにして、あたしは部屋に戻り布団に入ればすぐに眠りについた。



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