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ただただただ。 ~変わらないもの~  作者: けー
十六章 ダンジョンアタック

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リハビリ



 明日からまたダンジョン攻略に戻るとお兄ちゃんに言われ、自分の部屋で早めにベットに入った。なのにもやもやとする感情が邪魔をして、まだ眠れそうにもない。


 今回の事は、あたしに関係があるのにあたしの知らないところで終わった。それを望んでいたし任せていたのはあたしなんだけど、これでよかったのかと自分に問いかけてしまう。


 世界に場を作ると決めたのはあたしだった。けどお兄ちゃんや高遠さんに丸投げで、あたしは何もしてない。

 そしてそのデメリットすらちゃんと、自分で考えていなかった。


 姫巫女ってなんだ。聖魔の魔力ってなんだ。お兄ちゃんとお姉ちゃんが片方ずつ持ってる意味は?


 考えても答えはないし、人知を超えているとずっと思っている。けどもう少し考えるべきかもしれない。あの赤と白の植物を見て余計に思った。


 聖魔を片方ずつ持つことができるんであれば、あたしも片方ずつ使えるはずなんだ。たぶん使うなと言われ、どこかで考えないようにしていた。けど考えなきゃいけないんだと思う。


 姫巫女、唯一無二の存在で、聖魔の魔力を持つ者。その力はあたしが思うより本当は偉大で、もっとできることもあるはずだ。


 面倒だな、考えたりするのは苦手だ。けど守るためには必要なはず。


 答えの出ない自問自答を繰り返し、少し寝不足になってしまった。




「おはよう」


 そう言って居間に行けば三人に苦笑された、あたしの顔は寝不足とわかりやすいものだったんだろう。


「そんなんで、今日は大丈夫か?」

「恵子さん、地図を十九階まで作ったらしいぞ」

「あの人、ありえへんやろ?」


 お姉の速さに驚かされる。魔物の情報はのり君と秀嗣さんに聞いとかなくては。


「今日か明日には二十階ボス?」

「お前の動き次第やな、今日じゃないことは確かやわ」

「運動すれば寝やすいですしね」


 寝不足の理由には誰も触れず、今日は動いてさっさと寝ろと暗に言って来る。自分でも駄目だなとわかってるから頷いて、朝食をさっさと終わらせ、四人で転移陣に向かった。



 飛べば一瞬で森の中。切り倒された木もどこかに運ばれ、左右には赤と白のあの植物が植えられ、綺麗な道ができていた。


「赤と白の植物どうしたん?」

「恵子が弱いの面倒やって職員に植えさした」


 額に手を当て溜息が出た。何で職員さん使ってるの? 自分でやればいいじゃないか、それかギルドメンバー。


「放出系できんからしゃあないって言い訳らしい」

「最低やな、あとで言っとかな」

「ギルメンも中々被害者多いぞ、ほとんど十階は越したし」

「裏方は!?」

「パーティーに組み込んで護衛しながら、何回も一軍や二軍が行った」


 もう言葉が出ませんよ、馬鹿じゃないのかあの姉は。


「まあ本人らも望んでたし、多少は無理はさせてたけどいいんちゃう?」

「本人たちも、実戦に勝るものはないと言ってましたし」


 わからなくもないが、大変だっただろ。そんな会話をしてれば、すぐにテントが立ち並ぶダンジョン前に着く。


「えーりーこー」

「うざい煩い邪魔、ギルメンに無理させたんやて? それに職員さんも使うし」

「ギルメンは強制してへんもん、嫌ならいいって言ったよ?」

「ちゃうよ、できへんならやめとけが正解やん」


 後ろから聞こえてきたのり君の言葉、ようは煽ったんですね? その結果できます、とメンバー達は答えたんですね。


「けどさすがに、十五階のボスは行かせてないで」

「ワームは人選ばなキツいやろ」

「行ける奴もおると思うけど、全員ではないと思う」

「そうや恵子、行けそうなの連れてってこい。絵里子はリハビリがてら、俺と智と秀嗣でダンジョン言って来るから」

「宏さん俺は?」

「気配読めるし早いし魔法もいい、引率やろ」


 お兄ちゃんの言葉に拓斗は仕方ないかと息を吐くが、お姉は納得できない顔でお兄ちゃんを睨む。


「あたしも絵里子と行く」

「そこまでギルメンやらしてんから、ちゃんとやったれ」


 お姉が拗ねたような顔をするが仕方ないとも思ってるのか、それ以上の抵抗しなかった。


「十八階から水辺が出てくるから、気をつけるんやで?」

「マジで?」

「報告しろよ」

「大丈夫。魚の魔物出てきたから、ギルメンに夕食で出してもみんな元気」


 何が大丈夫かわからないが、安全性は大丈夫と言うことか?


「今のところ魚と蟹は確認できた、どちらも美味いそうだ」

「止めようよ、せめてお兄ちゃんかあたしがいるときにしようよ」

「魔物肉をあれだけ食べてたら一緒かなって」

「そうやけど」


 あたしかお兄ちゃんがいたら、鑑定でせめて毒の有無はわかるし、食用かも確認できる。それもせず食べさせるお姉が怖い。


「最悪、毒消しもあるし、あたしらおらんときダンジョンで新しい食材見つけたら困るやん?」

「自分も食べてたら、説得力ある言葉やったわ」


 間違ってはないし、そういう人は今は多いだろう。普通の食べ物を手に入れるのが困難だから。

 けどお姉は食べてないじゃないか。


「残念なことに、あたしは困らへんもん」

「それ言ったら、ギルメンも基本は困らんはずや」


 地下には畑もできたし、魔物肉も在庫はたっぷりある。飼い始めた鶏とヤギからも卵とミルクは採れてます。


「できればヤギじゃなくて、牛の牛乳がいいよなあ」

「北海道で六本足の、気性の荒い牛が見つかったそうやぞ」

「マジで? 家畜化は?」

「気性が荒くて捕獲ができてない」


 お兄ちゃんの言葉を残念に思いながら、ここが終わったら北海道に行ってみようか真剣に悩む。

 ヤギも悪くないが、たまにはちゃんとした牛乳がいい。魔物の時点でちゃんとしてるのかわからないけど。


「あほ言ってないで、荷物置いてさっさと準備してこい。昼は幸康に弁当頼んでるから」

「はーい」


 言われた通りに荷物を車に置き、装備は終ってるからポーチだけ確認する。外に出ればお姉とのり君と拓斗がいた。


「ほんまに気をつけるんやで? なんかあったら呼ぶんやで?」

「わかってるし、大丈夫やから」

「俺じゃあ恵子さん止めれんねんから、マジで頼むぞ」


 真剣な目の拓斗に笑ってしまい、何とか頷く。


「のり君おるし、なんとかなるって」

「絵里ちゃんになんかあったときの暴走は、俺には無理やで」

「頑張れ旦那」

「頼みましたよ旦那」


 無理やって、と笑うのり君を見て笑ってれば、智さんがやって来た。


「姫様、そろそろ行きましょうか」

「わかった、それじゃあそっちも気をつけてな」

「おう、お前もな」

「全員、十五階クリアさせるからなあ」

「早めに帰ってきてなあ」


 返しがおかしいとは思うのに、もやもやしていた感情はみんなのおかげで小さくなる。それにこれからダンジョンだ、少し気を引き締めないと。


「この四人て、レアやな」

「そうやな、前衛の秀嗣が大変やろうけど頼むわ」

「ああ、大丈夫だ」

「あたし中衛兼遊撃?」

「そうですね、リハビリも兼ねて体動かしてください」


 そんなに長い期間戦ってなかったわけじゃない。けどこれだけ階下に行くのはそうなかったかと、ダンジョンに向かう。

 転移陣で十五階と十六階の間に出ると、お兄ちゃんが地図を確認する。


「何階が目標?」

「戻るん面倒やから十六でいいかと思ってたんやけど、十八階も気になるよなあ」

「さんせー、お魚と蟹! お鍋しよ」

「焼くだけでもいいですよね」

「みそ煮や煮付もいいな」

「アクアパッツァでパスタもいいなあ」


 結局みんな食い気です。すっかり魔物を食べるのに、抵抗なんてありません。


「でもフグみたいに、毒があるのとかないんかな?」

「そこはお前、神眼様の出番や」

「普通の素材は鑑定を使うな言うのに」

「食い物は命に直結するからな」


 確かにそうだけど、最初にウニ食べた人は凄いと思うけど。


「まあぼちぼちやってって、行けるとこまで行ってみよか」


 お兄ちゃんの言葉で、珍しい組み合わせの探索が始まった。



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