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ただただただ。 ~変わらないもの~  作者: けー
十六章 ダンジョンアタック

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始まりはいつも通り



 散々やり合って、可哀想なくらいにへこまされたお試しの探索者達。それでも三軍にもいい機会だったようで、ギルドハウス内であたしを見る目は変わった。


 おかげで資料室に行きやすくて有難いねと、それも暫くはお預けになるけど。


 境内前にフル装備で、お兄ちゃんと智さんを除いた五人で待っている。気づいたギルドメンバーが出て来て、言葉を交わしながら。


「普通、日程ぐらい言っていかない?」

「そこはギルマスのお兄ちゃんに言って、パーティーの予定も決めてるのお兄ちゃんやし」

「姫さん達、どれぐらいの期間行くか知ってるの?」

「知らん、その間ギルドの事は頑張ってな」


 警備部門もこの間のお姉との組手が効いているのか、いい感じで回ってるらしいし、お試しメンバーも全員心を入れ替えたように訓練に身が入っているらしい。


 魔武器を貰った裏方四人も、まだ探索者としては弱くても、これまでの訓練の結果の武器の取り扱いや魔力操作の上手さを見せつけることができ、仕事もしやすくなったことだろう。

 全体的にいい結果に収まったなら良かったと、あたしはほくそ笑むことができた。



「遅れて悪いな、なんでギルメンこんなおるねん?」

「そりゃこんな姿で揃ってたら、何かあるかどっか行くのかわかるからじゃん」

「今回はギルメン連れてかんけどな」


 その言い方は、いずれは連れて行くと言うのだろうか? 違うな、出張依頼として行かせるのか。


「さっき大仲さんにも言ったけど、暫く頼んだで」

「最近、姿を見せない我々パーティーを侮る人は増え始めていますが、無駄に喧嘩は売り買いしないで下さい。品位が下がりますから」


 お姉達も最近はあまり地上には出ず、組合に顔も出してない。行ってもつまらないからと言う理由が泣けるが、戻ってきたらまた、一宮のダンジョンを掘り下げるのもいいかもしれない。


「じゃあお前ら、忘れもんないな。行って来るわ」

「行ってきまーす」


 軽いノリで転移陣に向かいながら手を振る。呆れたように手を振ってくれる信也さんと他数人、武雄くんは笑ってたし。




 次の瞬間にはここは山だろうか? 木々が生い茂るが平地っぽいから、森か。


 円形の転移陣を囲むように、赤と白の植物が入り混じりながら一メートルほどの幅で円周に植わっている。丁度ここだけがぽっかりと穴が開いたような感じだ。


「前来たときより、木々の成長が早いな」

「魔素の影響でしょうか?」

「前こんなんじゃなかったん?」

「それなりに木々はあったが、ここまでじゃなかったな」


 前回と言うと、転移陣の確認と植物を植えに言ったときだろう。それからまだそんなに経っていないのに、驚くほどに木々が成長しているってことか。


「車で行く気やったけど、間引きしながら歩いて行こか」

「この木、切り倒して道開いていいの?」

「ダンジョン潰す予定やから使わんくなるけどまあいいか。智に方角だけ聞きながらやれよ」


 お姉だけでは厳しいと、拓斗も道を開く作業に駆り出され、他は魔物に警戒しながら進んで行く。

 途中に薬草や茸、それに生産で使える実なんかも見つけて、あたしは採取に忙しかった。


「地上の自然も、結構変わってそうやね」

「魔物もそれなりに居ますし、これは各地も色々危ないでしょうか」

「今回の結果で全部は無理でも、ある程度の間引きは考えななあ」

「それこそギルドメンバーを行かすか。上層階だけでいいなら、そこまで怖くはないだろう」


 氾濫さえなければなんとかなると思う。最近は柏原さんと紫藤さんも龍の練習の許可が下りたらしいし。


 そうやって暢気に歩いて行けば木々が少し少なくなり、またぽっかりと空間が空くように、ダンジョンが姿を現した。


 小さな土山は苔生していて、何十年とそこにあったような風格を持ち、小さな草花と温かな木漏れ日、不思議な空間が出来上がっていた。


「これできたん、他と変わらんはずやんね?」

「そのはずや。見つかったのが最近やから、絶対とは言えへんけどな。先にテントとか準備してまおか」


 お兄ちゃんの言葉で動き出し各自が動き出す。あたしはポーチから結界石を取り出して、適当に距離を空けて起動させていく。

 その間に秀嗣さんが車を出してテントを張って、あたしは他の物を出しては、休める空間を作っていく。


「結界石は無理やったけど、魔物避けの香は少しは強化できたしよかったわ」

「全員で行くならだいたい六時間が限度か、結界石の使用時間伸びたら有難いんやけどなあ」

「あの植物、手強いねん」」


 様々な生産職が調べているが、まだ成功例は少ない。あたしとしても早く結界石を強化したいが、簡単ではない。


「準備できたけど、行っていいん?」

「初っ端ぐらい全員でって考えないんか? まずは間引きやろうし」

「絵里子も地図持ってるし、上階ならどうせ弱いやろ?」


 お姉の言うことももっともだけど、初見のダンジョンで二人で行こうとするのはどうかと思う。


「準備できたら最初は全員でや。採取系や珍しい魔物以外は無視でいいで、とりあえずさっさと五階ボス目指す」

「はーい」

「時間には一度、全員か分けて休憩に戻る予定です。ダンジョン内は魔物が多くなっていると予想されますので、気を付けてください」


 装備はもう終わってるし、ポーチの確認も終わってる。みんなも準備は万端らしく、早速その洞窟に向かい、先頭をお兄ちゃんと拓斗が行くらしい。


 途中で階段になり、その終わりが見えると通路だと思うのに、魔物の気配は濃い。


「魔物同士は戦わへんのかな?」

「種族によるっぽいで」


 お姉の言葉に三宮のオークとミラーアントを思い出し、戦ってたなと思った。けどゴブリン同士や同種だと、戦わないと言うことか?


「まあどっちにしろ俺らがやること変わらへん。先行で俺が撃つから拓斗続けて、その道を走って、どっか広間まで行きたいな」

「小部屋なんかはとりあえず無視?」

「とりあえず無視やな、もし気になったときはすぐに言え」


 返事をする前に、お兄ちゃんが通路に向けて龍を放つ。逃げ場のない魔物たちの叫び声がするより早く、それは飲み込み魔物を倒して行く。


 その後をすぐ追うように拓斗の龍が走り、あたし達も駆け出す。時折横の通路や小部屋から魔物が出てくるが弱く、それを倒しながら広間に到着した。


「こっから本番やな。各自、気をつけろよ」


 それに応えるより先に、お姉はのり君と魔物の群れの中に突っ込んで行く。呆れ顔のお兄ちゃんを通り越して、あたしもそれに続けば、拓斗と秀嗣さんも左右についてきてくれる。


「今回は飯のこともあるし、無理すんなよー」

「わかってる。けどまあ総菜も多めに作ってきたし、何とかなるやろ」

「全員だし、今日中に一階は終りたいな」

「そうやねー、無視して進むには多すぎるしねえ」


 強くはないから会話しながらでも余裕だ。それでもこれまで放置されたダンジョンは魔物の数が多く、まずこれをどうにかしなくては先には進めない。



 ただ魔物を倒す作業に近く、積み上がり邪魔だと流されたり燃やされる魔物だったもの。


「組合の職員さん連れてきたら、これ査定してくれたんかな?」

「可哀想過ぎて、よう頼めんな」


 それならかなり損傷や焼け焦げた跡があるから、無償で提供でいい気がする。魔石は取れるから、組合としては無償なら有難がってくれるかもしれない。


「それやったらギルドからも、誰か数人連れてきてもよかったな」

「魔石取り出す要員にですか? 食事とかどうするんですか」

「それなあ、毎日交代ってどうや?」


 一瞬智さんが有りかもしれない顔をした。選ばれた人、可哀想過ぎる。


「けどそれも五階までやろ? ボスは越せへんやろうし」

「我々を分けてパーティーに組み込めば、それなりの数は行けると思いますよ?」

「探索者に雑用をやらせる気や」

「思ったより魔物も多いですから、実地訓練として放り込んでもいいですけどね。私たちは別で階下を目指せば」


 確かにそうなんだよね、今回は新規のお試しメンバーは林間学校も無しだし、その代わりみたいな感じか。


「少し早めに昼休憩して、そん時に高遠さんと大仲さんに言ってみるか」

「恵子さんも作業状態に飽きてますし、いいと思いますよ」

「ボスの許可は出したるの?」

「それは確認してからやな」


 もし間引きと魔石を取り出すだけだとしたら、本当に可哀想だな。ただあたし達は何階かわからない、最下層を目指すことになるから、それに付き合わせることはできない。


 あたしはとりあえず、お昼までは目の前の魔物を倒すことに集中することにした。



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