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ただただただ。 ~変わらないもの~  作者: けー
十六章 ダンジョンアタック

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ネタばらし



 夜に念話で呼ばれ、ギルドマスター部屋にみんなで移動することに。


「お姉は別にいいねんで」

「絵里子が行くなら行くー」

「のり君ごめんな」

「俺も気になるし、気にせんで」


 拓斗と秀嗣さんは、あたしが行くなら決定しているようなものだし、あたしは目の前の扉を、いつもより重い気持ちでノックした。


 中にはもう六人が揃っていて、紫藤さんはなんとなくわかっているんだろう。柏原さんと清水さんは呼び出された理由もわからずに、少し緊張気味だ。


 あたしとお姉はソファーに座り、拓斗はいつも通りあたし側のひじ掛けに、秀嗣さんとのり君はそれぞれ後ろに立つようだ。


「まあ人数多いけど、我慢したって」


 智さんが淹れてくれたのはホットチョコレートで、あたしが緊張していると心配してくれての事だろう。


「まず一軍に聞きたいのは、俺らの最大で重要な秘密、知りたいか?」

「なに当たり前のこと言ってるの?」

「それ聞いたらお前ら、何があっても俺らの下から抜けさすことはできん。抜けるときは命ないと思え」


 いつもより低くしたお兄ちゃんの声。普段、本人が忘れがちだが、元は国家重要機密で、世界に例のないただ一つの存在だ。

 それでもその脅しに顔色を変える者は誰も居なくて、信也さんがみんなを代弁するように、いつもののんびりした口調で言う。


「元々俺は骨を埋める気だし、他もそうだと思うよ?」


 そう言ってみんなを見れば強い目で頷いて、誰も反対意見は出てこなかった。


「ならまたこれ書いてくれ。内容は簡潔やけど破れば死ぬ。簡単やろ?」


 配られた契約書。あたしは内容を知らないけれど、紙もインクもあたしが作った物だ。そして智さんがサインされたそれを集め、あたしに渡す。


「ほんまに、いいねんな?」

「うん」


 緊張しているあたしと違い、信也さんは気楽に頷く。あたしはそれに一つ息を吐いて、契約書に魔力を注ぎ締結させた。


「これで神との契約は成立した。あたしが説明していいの?」

「ええで、お前が一番わかってるやろうし」


 お兄ちゃんの許可を得て、あたしは思いだすように視線を上げた。あれは母の四十九日も終わった春先の、まだ肌寒い頃だったな。


 始まりは家の押し入れと言う、なんだか情けないもの。それを下れば閉じ込められて、武器も何もなく魔物を倒し、ダンジョンを進み、浮かんだ家族の顔だけを心の支えに、ダンジョンをクリアした。


 そして諸悪の根源、神と出会った。


 この神がまた意味不明の変態で、最初はただの巫女として唯一のものとして選ばれた。


 約三ヶ月後にはダンジョンができると、その時に初めて知った。


 そしてようやく家に帰り、まずは三人に説明したんだ。

 すぐに信じれるものではないが、それでも現実にある洞窟と地下の広間、お兄ちゃんが色々検証を始めて、そこからは四人レベルを上げ生産をして、最初は国に家も自由も奪われないために頑張っていた。


 お兄ちゃん達が神職になったのは、あたしを思ってのこと。そしてあたしは姫巫女に変わり、場は神社になった。


 そこから拓斗やたっちゃん夫婦、健也君や秀嗣さんと戸上さん。そして国に伝え、智さんとも出会った。


「この神ってのがまたいい加減で、最上位がこの星では宵闇って言うねんけど、思ったよりダンジョンも魔物も増えそうやから神職増やすわって、何もできへん力も格もない神職増やしてあの会見」

「俺見た、あれ見て神職って意味ねえなって思った」

「俺らもあれ出てほしい言われたけど、全員で断った」

「ちゃんと説明責任果たしてたし、ここのダンジョンは国が使えるようにしてたし」

「そうですね、思い出すだけでも腹ただしい国の対応でした」


 元国側の智さんがそれ言っちゃいますか。


「そっからはダンジョンできて、魔物が溢れて、こりゃやばそうだって、隊員さん達に物資支援したり、組合を作るんにお兄ちゃんが裏で噛んだり」

「そう考えると、色々あったなあ」


 しみじみとあたしも思ってしまう。お母さんの一周忌どころの話じゃなくなったなあ。


「質問があるんだけど、姫様がその宵闇?様から貰った物って、なんなの?」

「あのあほみたいな装備と武器、あと指輪に、それにこの場と加護やね」

「寵愛もやろ。けど逆に面倒な事ばっか招いてるけどな」

「ほんまにそう思う、ぶっちゃけ戦闘も魔力操作もほんまに自分で努力してきたし、最初の頃は睡眠時間削ってやってたし」

「ギルマス達も加護や寵愛が?」

「俺は職業が姫巫女補佐、望月様っちゅう主神補佐から加護と寵愛ついてる」

「あたしは副姫巫女、副神、十六夜様の加護と寵愛。もらった物は絵里子と同じ」

「智は俺の補佐で加護付いてるし、残り三人は守り手って職業で各自の神から加護が付いてる」


 途中愚痴のような説明も入ったが気にせず進め、六人の様子を窺う。


 ある程度わかっていた紫藤さんまで、驚きであたしを見ている。


「姫様はお一人で、あのダンジョンを?」

「閉じ込められてたし、まあ行くしかないよね」

「姫さんが最初の巫女ってこと?」

「まあそうなる」

「姫巫女としてできることって、何かあるの?」


 聞かれるとは思っていた。どこまで言うべきかと一瞬お兄ちゃんを見てしまう。


「ぶっちゃけ俺らにも全部はわかってない。今わかってるのは魔力の質違いと特殊スキルやな」

「あ、そんなんあったな」

「恵子も真言あるやろ? たまには使え。俺は真眼、絵里子はその上位の神眼と神言や」

「そう言っても普段使ってないし、あたしが副姫巫女とか言われても困るもん」


 あたしもそう使ってないけど、そこまで開き直れるお姉は凄いと思うよ。


「一応神眼は鑑定系やけど、普段はあんまり使ってない。それこそ頼りすぎるなってお兄ちゃんの教育方針で」

「魔力残量や気配、自然とわかるようならな危ないからな」

「じゃあ普段って、姫巫女として何してんの?」


 驚きながらも言われた質問に、あたしが止まり首を傾げた。言われてみたら姫巫女として、何してる?


「何もしてないし、何も使ってない気するなあ」

「そうやな、ただ信也は気付いてるんやろ?」


 お兄ちゃんの言葉で信也さんを見れば、その顔は確信していた。


「前に他国の神職が来たのって、姫様関係でしょ? 組合にも噛んでるなら」

「そうや、その辺りの権力関係も聞いとくか?」


 頷く六人を見て、お兄ちゃんは口を開いた。


「まあ簡単に言うと、絵里子は安全圏を作れる。ただし条件やら縛りはあるが」

「それで他国の神職が来てたんだ」

「神さん達は、人間を減らす目的でダンジョンと魔物を作った。だからこの星全域に安全圏を広げることはできんし、全ての人を助けることもできん」

「だからこそ隠すし、だからこそ強くならなきゃいけなかったのか」


 利用されることも、自由を奪われることも、誰かを取られることも嫌だった。ただそれだけのために、あたしはダンジョンに行き続け力を求めた。


「まあ予想以上に全方向に力を持つことなったけど、どこにも何も奪われる気はなかったからな」


 今この世界で、あたし達に何かを言える人はほぼいない。力も生産も全て含め、組織としての強さもできた。


「絵里子は姫巫女として、今も神さんが気にする存在ではある。けど本人は全く持ってそれを有難みもせんし、なんなら」

「投げ捨てたいな」


 お兄ちゃんが苦笑してあたしを見てくる。確かに感謝する部分もあるのはわかっているが、それでもそれ以上に面倒なのも本当だ。


「普段そう力を使ってるわけじゃないし、元々のもんか力なんかわからんけど、時々勘がいいだけやもん」

「まあこんな感じで絵里子でおることを望んでる、みんなもそのつもりでおって」



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