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ただただただ。 ~変わらないもの~  作者: けー
十六章 ダンジョンアタック

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人の作る物

 


 宵闇たちとの交渉の次の日から、お兄ちゃん達は忙しそうに本殿から転移しては、あの赤と白の植物を植えに行っていた。


 さすがに植物と言う命を操り、転移陣の周りに生やすことはできないと言われ、これに関してはみんなで確認も込めて手分けしてやっている。


 有難いのは魔力で成長を早めれること。これのおかげで植えてすぐに、転移陣を囲むように植物を生やすことができるから。


 今回は一先ず、この国全域だけに転移陣を置いてもらうことにした。姫巫女がいることでのごり押しができることと、他国に設置するときは願いの延長で大丈夫だと望月さんが言ったからだ。


 そしてその転移陣の場所は、この神から貰った神職の証の指輪で確認できるとか素晴らしい機能付き。ただし面倒なのは、あたしが認めた者だけって宵闇からの指示らしい。本当に面倒な神だな。


 それは魔晶石を使えば許可も不許可も簡単に変えれますからと微笑まれたけど、一度は会ってなきゃいけないと言う、なんとも面倒な仕様。ただの嫌がらせにしか思えない。



 そして今、本当ならばあたしも確認に行くべきなのに、あたしは一人細工場で作業に精を出す。

 神職ではない高遠さんが確認できないから何かないかと聞いたところ、あたしが指輪を作ればいいと、あたしの加護があるなら、それを十分に使えると教えてもらった。


 ガーディアンの魔石とあたしの血、それに純度の高い聖魔鉄を使い、こうして頑張って細工中で御座います。神職ではないし、腕輪かネックレスの方がいいだろうかと思案中。


 あたし達は慣れもあるし、腐っても神が作った指輪。つけていてもそう気にならないし、戦闘中も邪魔にはならない。ただ今あたしが作っている物が、そうできるとも限らない。


 できるだけ高遠さんに合いそうな、つけてても嫌にならなそうなものを作るべきだろう。

 それにできたら、常に地上にいてあたし達にも近い一番危険な人だ。少しぐらい守りになるような、そんな願いを込めて作りたい。


 そう思いながら聖魔鉄を魔力を使い形を変形させ、何度もやり直しては作り続けた。




 居間にみんなが戻って来た気配がして、あたしは二つの器を持って向かう。


「おかえりー、確認終わったん?」

「まだや、この分やとあと二日はかかりそうやな。お前の方は?」

「お疲れ様、お兄ちゃんとお姉にこれに血入れてほしいねんけど」

「俺らの?」

「うん、ちょっと多めやけどしんどかったら今度で大丈夫」

「それぐらいやったら、あたしは大丈夫やで」


 そう言って手を伸ばしてくるお姉に器を渡せば、手の平を切り血を入れてくれる。お兄ちゃんもくれるらしく器を渡しておく。


「こんなもんでいい?」

「うん、ありがとう」

「ほれ、けどこれどうするんや?」

「今日中にはできるから、そん時見せるわ」

「確認してからじゃないと、やばいもんできてそうで怖いわ」

「酷いな、晩御飯やら家事しながら頑張ってんねん」

「今日のご飯何ー?」

回鍋肉(ほいこーろー)青椒肉絲(ちんじゃおろーす)に肉団子の甘酢餡と唐揚げ、中華で纏めてみました」


 この家族中華好きな人が多く、回鍋肉はお兄ちゃんの好物と知ってからたまに作ってます。そして拓斗とのり君の好きな物もいれて、明日は秀嗣さんと智さんが好きな和食かな。


「ラザニアはー?」

「グラタンならその内作ったる、たまには手伝ってくれてもいいで?」

「絵里子のご飯が美味しいから嫌ー」


 意味のわからない拒否だなと思いながらも、みんながお風呂に行ってる間にご飯の準備をしておくかと、あたしは台所に向かった。




 ご飯が終わった後、片付けはのり君や秀嗣さんが引き受けてくれたので有難く感謝して細工場に戻った。


 二人から貰った血も使い、腕輪を仕上げていく。


 ネックレスは邪魔かと思い結局、腕輪にした。聖魔鉄製で作れば繋ぎ目がわからない、綺麗な腕輪になる。それは本人にしか取り外しができなように、最後は魔力を入れてもらわないといけないけど、そこは人であるあたしが作った物だし仕方がない。


 細身の幅は五、六ミリ程度で、中央にはあたしの血とガーディアンの魔石を砕いた物を使い、左にお兄ちゃん、右にお姉の血とガーディアンの魔石を使っている。


 そしてデザインに見えるように少し彫り込んで、最後にあたしの魔力を流し固めてしまう。


 出来上がったそれを見て、思ったよりもいい出来じゃないだろうか、これなら男女ともに使えると思う。


 確認のために居間に行けば、お兄ちゃんと智さん、それに拓斗もいて何か話していたようだ。


「これ、確認して」

「俺らの血も使ったんか」

「うん、あたしの赤いのを中央にお兄ちゃんの白っぽいのとお姉の黄色っぽいの」

「機能は言ってた通りにできたんか?」

「転移陣確認と、何なら念話できちゃうようになっちゃった」


 そりゃ指輪に近い物を作ってるんだからなるよね。あたしも吃驚したが仕方ない。


「それ、俺らには?」

「できるよ、ただ高遠さんのはみんなの下位扱いやけど」

「神が作ったか、人が作ったかの違いやな」

「うん、それに相変わらず願いが込められてるらしいし」


 今回はそう間違ってはいない。できるだけ無事で元気でいてほしいと願いながら作ったから。その身を少しでも守ってくれるようにと、お兄ちゃん達にも血を貰ったわけだし。


「あの人は危険も多いしな、これで完成でいいんか?」

「高遠さんに本人に、登録として魔力入れて貰っといて。あとこれ、一応みんなの分作った。どこまで効果あるかわからんけど、少しはステータス上がるし、願いが籠ってるらしいし」


 そう言って六人分出しておく、後は勝手に魔力を入れて登録しておいてほしい。


「お前、素直やないなあ」

「そうでもないわ、疲れたしあたしは部屋に戻るで」


 三人の反応を見るのが恥ずかしくて、あたしはさっさと部屋に向かう。高遠さんもそうだが、みんなも危険は多い。だから少しでも無事で入れるように、願いを込めてみんなの分も作り上げた。


 おかげで結構魔力も使い血も使った。聖魔鉄って姫巫女の血を入れると強化できるんですよ。おかげで今日はさっさと寝てしまいたいと思ってたのに、部屋に戻ってすぐに拓斗が部屋にやって来た。


「恵子さんが腕輪を見て、テンション上げてお前にお礼言いたいって」

「しんどいから嫌や、寝ました、閉店。って言っといて」

「俺にあれを捌けと?」

「頑張れ守り手」




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