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ただただただ。 ~変わらないもの~  作者: けー
十五章 鬼はどこまで行っても鬼。

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鬼は鬼で変わらず



 お兄ちゃんと拓斗がダンジョンまで、タイミングを合わせて魔法を使い道を開いていく。そこを走りながらあたしは取りこぼしを狙い魔法を使う。


 ダンジョン前で一度、あたしが龍を出し魔物を倒す。それにすぐに合わせて秀嗣さんが入り口前に陣取り、拓斗が取りこぼしを倒して魔物を止める。ギルドメンバーに整える時間をあげるためだ。


「裏方は自分の周囲に気をつけて、生産は各リーダーの言葉よく聞いて」

「探索者は前出すぎないように、自分のポーチのポーションの残り数は把握して早めに声出して」


 信也さんと武雄くんの声掛けにしっかりと頷く者と緊張で固まっている者、様々であるがお兄ちゃんの判断は全て突っ込むで変わりない。


「なら行くよ、やればできるからやらされるって理解して」


 うん、信也さんの言葉そのままが答えだろう。だから安心して立てなくなるまで全力でやってきてほしい。

 後方にはあたし達もいるし、危なくはなっても死ぬこともないはず。だからとあたしは見守る。


 先陣を切り一軍がダンジョンに入って行く。それに続くメンバーを見ながら、どう対処するんだろうかと少し楽しみになって来た。


 入ってすぐの広間で、信也さんと武雄くんがまだ未完成ながらも龍を作り出し、魔物に向かわせた。


「できるようなったんや」

「まだ未完成で、強度も範囲も狭そうやな」

「それでもあれが使えるか使えないかで、かなり変わってくるだろう?」


 まだ不慣れだからか、二人はすぐ後ろに下がり息を整えるようだ。その間に他の一軍の指示が飛び、メンバー達を動かしていく。


 初撃としてはいい感じだろう。後はこの流れをどこまで勢いをつけて遡って行けるかだ。


「三軍も少しは耐性ついたかと思ったけど、そんな違うもんかな?」

「まだ見ぬガーディアンのせいちゃうか?」

「見たことないなら、軽く考えそうな奴らなのにな」


 まったくもってその通りだが、三軍の動きが硬い。あたしはさすがに少し不安になる。


「それも想定済みや。疲れも残ってるし、俺らが手を出さん言うたんもあるんやろ」

「それごときで動けないとか、最初の威勢はどこにいったのか」


 呆れたような智さんの言葉に納得しながらも、注意しながら状況を見る。氾濫の面倒なところは次から次へと湧き出てくる魔物。ガーディアンを倒すまでどこからともなくやって来る。


 そうなると地上に出さないためにも、入り口を死守する者が必要になって来る。


 最初から話はついていたんだろう、柏原さんが一グループを率いてここに残るようだ。


「ここ、誰か残らんでいいの?」

「ほんまは恵子に頼むつもりやったけど、大仲さんにお願いした」

「皐月さんもこちらのグループらしいので、何とかなると思いますよ」


 よく考えれる二人だし、結界石は多めに持ってるそうだから何とかなるか。


「念のため玄ちゃん置いとく?」

「甘やかすな、いつマジなん来るかわからんからな」


 それを言われてしまえばその通りで、何かあれば連絡が来るだろうし、その時はダッシュかと考え、仕方ないと先へ進むメンバーを見守ることに。


 今回は裏方もいるから、それを守りつつ進まなければいけない。信也さんを先頭に、左右に少しずつ広がり下がるようなフォーメーションで中に裏方を置いている。


 悪くはないがこれ信也さん達一軍が死なないかな? ただまだ龍のような大技使えるのは信也さんと武雄くんだけと思えば、多少は無理も必要か。


 できるだけ取りこぼしがないように、二軍も頑張って魔物を倒して行く。後方の入り口に行く魔物が少ないように考えてのことなんだろう。


「信也さん、かなりきついやろうね」

「あいつの事やから、ガーディアンは他にやらす気ちゃうか? 自分は雑魚中心で道を作るって考えてるんやろ?」

「おお、さすがお兄ちゃん、そんな考え方もあったんや」


 普段どっちもやってるあたしには全くなかった考え方だ。確かに人数がいるからこそできる方法だろう。


「大技出せる人間限られてるから考えたんやろ、それにその大技も完璧やないし」


 咄嗟にはできないだろうし、体力も多く使ってそう。魔力制御も完璧でないから魔力も多く必要だろう。そうなると何回打てるかで変わってくるか。


「みんな何階までか知らんのよね?」

「そりゃ訓練ってまだ言ってないからな」


 当然だと言うお兄ちゃんに、どっきりよりも質が悪いと本気で思う。それでもフォロー体制がしっかりしている状態で、経験できることは悪いことではないけど。


「お兄ちゃんて、鬼やんね?」

「こんなに優しいのに、酷い言い様やな」

「獅子は我が子を、ってやつですか」

「できると判断したからこそですよ」

「それでも昨日についでの今日だからな」


 さすがに秀嗣さんまで苦笑いだ。あたしなら本気で勘弁してほしいし、あとでわざとでした、なんて言われたらとりあえず殴らせてと言うだろう。

 まあ今回はメンバーに、そんな元気が残っているかはわからないけど。


 メンバー達の必死の戦闘を見ながら、のんびりと五人で会話しついて行く。時折こっちに来た魔物は倒すけど、自分から倒しにはいかない。


 それでもいい速さで行けているんじゃないだろうか? 問題はどこにガーディアンがいるかだ。


「どの辺りに仕掛けたん?」

「内緒や、見てればわかるしな」


 そうだけどと思いながらメンバーの様子を見れば、三軍が上手く機能しなくなってきている。


「あれ連れてって大変やな」

「裏方が必死にポーション運んで立て直ししてるわ」

「あほや、下手に魔力を使うからこうなるねん」

「三軍は帰ったら訓練メニュー考えるか」


 緊張で硬くなった体、そんな状態で正しい判断もできないし無駄に力むことになる。二軍や裏方、それに紫藤さんと清水さんが声掛けをしてなんとかしようとしているが、これは難しそうだ。


「他は今のところいいんちゃうの?」

「そうやな、裏方は新規メンバーもよく見れてるし、やっぱり上手いな」

「二軍も気合が入り直してからよくなりましたね、信也たちをフォローできるようになってます」

「それ言ったら信也の言葉も増えたからな、それに武雄もいい感じに信也をフォローしてるし」

「メンバーの顔立てて、のり君には悪いけど残りの三軍は残留やな」

「たぶんもうわかってると思うで、お姉に近づけたら自分でどうにかするやろ」


 珍しくのり君が怒りを出していたことだ。ただ理解はしてるだろうし、のり君だから受け入れると思う。ただし、お姉に近づくなと言うだけだ。


「のり君の前に、のり君を煩わしたって理由でお姉が沈めそうやなあ」


 つい思い浮かび、言葉にすれば四人がなんとも言えない顔をする。


「そこは一軍に期待しよか」

「一軍、何でも屋みたいやな」


 ギルドのことは何でも一軍に投げ始めたお兄ちゃん。それでいいのかと思うけど、最初はサブマスターに丸投げ予定だったなと思い出した。


「お、信也、二発目行くか」


 拓斗の言葉であたしは先頭に目を向ける。清水さんと武雄くんが時間を稼いで魔力を練る信也さん姿が見えた。


「未完成とは言え頑張るねえ」

「あいつ属性なんやったっけ?」

「確か火と風と土じゃなかったっけ?」

「あえて複合でなく、単属性で大技にする判断は正しいですね」


 不慣れだからこそ威力が上がるとわかっている複合でなく、今度は単属性の火で魔物を焼き尽くしていく信也さん。まだこれだけの大きさの魔法に慣れてはいないようだけど、それでも発動は早いほうだろう。


「信也さんと武雄くんの今後は楽しみやねえ」

「紫藤もできるようになるやろうな」

「たぶん柏原さんは教えたら早いと思うで、あの人、魔法寄りやし」

「問題は体力だろうな」


 大技は体力も使いますからね、大事なことです。



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