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ただただただ。 ~変わらないもの~  作者: けー
二章 戻っても日常には帰れない

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楽しいけどそうじゃない



 朝、目覚めるといつもよりなんだかすっきりしている気がする。あのあと魔力操作に熱中してしまい、思ったより寝るのが遅くなったのに。


 でもその分だけ魔力操作はかなり上達した。元々コツを掴めていたのか、何かの感覚に似ているように思いながら、いい調子で魔力を感じることも循環させることもできた。


 そのまま調子に乗って、一か所に集めることに夢中になり過ぎたのが睡眠時間が削れた理由だ。

 それでも手に集めてみたり足に集めて見たりと、最後には成功していたから気分的にやりきった感はしっかりあったけど。


 それと昨日魔力操作をしながら気づいたけど、あたし鑑定使ってなくない?

 慣れれば人の嘘も見抜けるみたいなことをあの変態は言っていたはず、せっかくある武器を使いこなさないなんて意味がない。


 これからしばらくは無意味でもどんどんと使って行こうと思い、手始めに目に付いた部屋の物を鑑定していく。

 『テレビ:電気を使って動く人間の家電、情報や娯楽のなど発信されたものを観る道具』『箪笥:服を片付けるための物』『布団:寝具、使い古されている』

 使い古されていて悪かったな。



「おはよ」


 いつものように朝一番にお父さんとお母さんに水をあげ、そのまま手を合わす。そうこうしてれば三人も起きてきてみんなが居間に集まってきた。


 ダンジョンなんかなければ、こう集まることも少なかったと思うとなんだか今が少し不思議な気分だ。ダンジョンがある時点で不思議なんだけど。



 朝ご飯は各自、自分でしてもらうのが家のルール。お兄ちゃんが冷蔵庫覗きながら肉味噌食べていいかと聞いてくるからいいよと答えとく。

 朝ご飯を食べながら今日の予定を合わせる。最近ご飯の時間は家族会議ばかりだ。


 あたしは今日は神眼を使いこなすため鑑定をすることと、午前は薬学を進める気。お兄ちゃんは魔道具で意外なことにのり君が鍛冶に興味あるらしい。ただまだ本を読み切っていないのでそれかららしいけど。


 そして戦力になりそうもないお姉はダンジョンに行きたかったらしいが、お兄に応用や知識のためにいろ、と言われ渋々残ることに。魔道具の実験台のためではないと信じておこう。



 お昼にはまたみんなで集まると決め、各自がやることへ。お姉とのり君は誰かのスマホがなったらわかるように、家の居間にいるらしい。


 あたしは作業室で椅子に座り、手順を確認しながら必要なものを棚から取り出していく。

 薬学の基本になることが多い下処理済の回復草、それと極小魔石の粉、それからこれから作る魔力水。


 本の中ではこの三つは基本になり、様々なものを作るときに必要と書いてある。


 特に魔力水はそのままではどんどん魔力が抜けていくので、特殊な瓶などに入れるか必要な時に作るかのどちらかになる。

 この作業場にそんな瓶はなかったし、魔晶石でも売ってなかったから、その都度作るしか今のところはなさそうだ。

 ただ一日程度は持つので最初に大量に作ってしまえばいい。



 あたしは魔石で火が着くコンロの上に、中サイズの水瓶のようなものを置き、上にある水道から水を出す。置いたまま水を入れることができてほんとよかった、じゃなきゃあたしに持ち上げられたか怪しいから。


 そこから本のとおりに火ににかけ、人肌程度に温まるのを待つ。熱すぎても冷たすぎても駄目らしい、結構繊細なようだ。

 人肌に温まったらあとは魔力を注ぐだけ。と、なんとも簡単に書いてるけどそこが一番わからない。ただ昨日頑張った魔力操作があればなんとかなるはずだ。


 あたしは水瓶に両手を翳し、魔力を手のひらに集めるように集中する。ここまではすでにできていることだ、問題はこれからどう水に注ぐか。


 あたしは手の平から魔力が出るイメージを頭に浮かべ、手の平に感じる魔力の熱が水に落ち溶け込むことを考える。

 すると徐々にだが、滲み出るように熱が手の平から出ている気がする。


 本には水に魔力が入らなくなるまでと書いてあった。あたしはもっと多くの魔力が出るように、イメージを強くしながら魔力を注ぐ。



 初めてのわりに上手くいったんじゃないか、突然魔力が押し返されるような反発を感じ、あたしは手を止めた。

 こういうときに役に立つのが鑑定だ。あたしは目の前の水瓶を鑑定していい笑顔を浮かべるはずが苦い顔になる。


 『神水(しんすい):魔力水最上位、神か巫女にしか作れないもの、このまま飲んでも健康によく多少の不調を治す』


 そんなん望んでないですよ? 多少の不調は治すって、それもうポーション(微)じゃん。


 これでポーション(微)作れんのかな? 一応、魔力水とは書いてあるし、たぶん作れるとは思うんだけど、作っていいものかちょっと悩む。


 でもせっかくここまでし材料作ったし、あたしは見なかったことにして初めてのポーション(微)を作ることにする。


 お試しに一本分、ビーカーに魔力水を入れて温める。沸騰する前に回復草を入れ沸騰後に極小魔石の粉を入れる。

 あとは全ての魔力が溶け合うように自分の魔力を入れながら混ぜ、混ざったら濾すだけ。やること自体は簡単だ。


 出来上がったものを光に透かしてみて見れば、なんであれで赤になるのかわからないけど、それは透明度の高い赤で少しキラキラと輝いているように思う。

 鑑定の結果は


 『ポーション(微):巫女の祈りの入ったポーション(微)、治癒力継続小 作者絵里子』


 泣いていいかな?


 治癒力継続ってなに? しかも作った名前出るとか駄目だと思うんだ。ポーション(微)の鑑定結果と違いすぎて、どうしていいかわからなくなる。


 あたしは面倒なことはお兄ちゃんに擦り付けようと決め、他の物も作りながらお昼を待った。



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