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ただただただ。 ~変わらないもの~  作者: けー
十四章 変わりゆく日常

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残り少ない静かな日常

 


 境内から出ないあたしにはわからないが、境内の中でもバタバタとしている人たちは多い。あたし以外の誰かを捕まえて講義内容の確認をしたり、説明を聞いてもらったりと大変そうだ。


 そしてあたしは唯一の楽しみの、三人の監督役から外された。外されたと言うより、三人が訓練学校に通うからそんな暇がないというのが正しい。


「けど三人とも、なんかあったらちゃんと言いよ?」

「大丈夫です、そんな心配しないでください」

「大人が多いやろし、見下してくる人はおると思うで?」

「わかってます、それでも俺達には必要ですから」


 ええ子や、この子たちになんかあったらモンスターペアレントになりそうで自分で怖いなと思うから、押さえなければ。


「自分の手に余る、それはちゃんと考えな? お兄ちゃんもギルドは仲間って言ってたやろ?」

「どうしようもなかったり辛い時にちゃんと言います」

「ん、ならいいねん。ただレベルや魔力のこと言えへんから、大変やと思うけど無理せんでな?」

「お前はどこの親や、モンスターペアレントにでもなる気か」


 心配になりすぎているのはわかっている。それでも気になるんだからしょうがない。


「子供たちのほうがしっかりしてるな」

「秀嗣さんまでそんなこと言うー」

「なんや珍しく拗ねてるやん」

「拗ねてるわけでもない。三人にはいろんなもの見てほしいし、上手く行けば友達もできるやろ? けどその反面」

「ああ、ギルドメンバーとしてか」

「それに子供からも敵視される可能性はあるやん?」

「それは私たちもわかってます、恵まれているのは本当ですから」

「けど学びたいことがあるから頑張れます」

「ただ、もし本当に駄目な時は相談に乗ってください」

「いつでもおいで、三人の為ならどんなことしても時間を作るから」


 あたしの言葉に胡堂と秀嗣さんは呆れていたが、三人がどこか嬉しそうにしていたからいいんですよ。


 三人は本当に努力して魔力の巡りも良くなり、簡単に暴発させることはないと思う。それに他の空いた時間に武器の扱いなんかも質問しているみたいだし、性格もその辺の大人よりできているから大丈夫だとは思う。けど、だからこそ無理しないかが心配なんですよ。


「三人とも明日からなんやろ? 準備は終わったん?」

「はい、宏さんからノートとか貰いました」

「それに頑張れって、ペンなんかも」

「お揃いの鞄と一緒に頂きました」

「お兄ちゃんもたまにはいいことするね」


 その言葉で丁度良く広間に入って来たお兄ちゃん。


「たまにはってなんやねん、たまにはって」

「あたしからしたら事実でしかない」

「こんなあほほっといて、三人明日からやろ? 暫くは一緒に受けんねんな?」

「はい、どんな人たちが来るかもわかりませんから」

「なら授業態度や気になる人、それに講師の教え方がどうやったかとか教えてくれると助かる。ただメインは勉強やから、無理ない範囲で気になったこと少しメモってくれるだけでいいねんけど」

「それは俺達の目線で、ってことですよね?」


 窺うように聞く真翔君、それにお兄ちゃんの口角は上がり乱暴に頭を撫ぜた。


「偉いな、よおわかってるわ。けどほんまに無理する必要はないから、なんかあったらいつでも言っといで」


 お兄ちゃんは忙しいんだろう、それだけ言うとさっさと行ってしまった。

 そしてなんだかんだとこの三人を、お兄ちゃんだけでなくみんなも可愛がっていることは知っているから、大丈夫だとは思うが少し気になるのも本当だ。


 それでも色んな経験が力に繋がる、だったら多少のことは本人たちに任せるべきだ。


 三人とも仕事もあるし、これ以上引き留めるのは悪いかと、あたしも立ち上げる。


「明日からまた大変やろうけど、頑張ってな」


 あたしの言葉に笑顔で元気に返事をしてくれる三人に手を振って三階へ向かう。


「なあ、あたしは当たり前でしばらく境内前」

「禁止だろうなあ」

「特に子供、孤児も増えてるからな」

「問題なさそうならいいねんけどな」


 三階に上がると丁度良く、扉が開き智さんが顔を出した。その顔は苦笑しているように見えた。


「これからお帰りですか?」

「やることないしなあ」

「もうしばらくは御辛抱をお願いします」

「その言い方やったらなんかあんの?」

「まだ未定ですが境内前、せめて訓練学校が落ち着かないことにはなんとも」


 そうなんだよね、これが上手く行けばお兄ちゃん達の手も少しは空くし動きやすくなる。お姉も女性のコースで張り切ってるし、暫くは大人しいからお兄ちゃんは安心だろう。


「んー、あとで久々に一宮に行って大丈夫かな?」

「どうかされましたか?」

「少し気になって、それに体を動かしたいし」

「できれば神社のダンジョンにお願いします」


 にっこり微笑む智さん。空ができてたまに忘れるけど、最近は長いこと地上に出てない気がするが、今は仕方ないことかと、わかったと言って智さんと別れた。


「二人はこの後どーすんの?」

「何人か最終確認」

「俺も実技を見てほしいと言われている」

「やったら別に、あたしとこっちまで来んでもよかったのに」

「一応?」

「念のためだ」


 ギルドハウス内で何を気にすることがあるんだと思ったが、まあいいかと転移陣にある部屋に入る。


「なら今日は夕飯を頑張ることにするか」

「それは楽しみだ」

「唐揚げ食いたいー」

「胡堂はそればっかやな」


 くすくすと笑って、じゃあなと手を振り転移陣へ。すぐに神社本殿に出て、あたしは居間に行って倉庫の確認から始めた。



 あたしが境内前で聞けていることは、二宮からの農業支援で何人かが来てくれていること、それぐらいだ。


 孤児院にどれだけの子供がいるかも、女性コースにどれだけ人がいるかも聞いてはいない。

 あの場はあたしの場であってあたしの場でない。そんな感覚になりそうだが、お兄ちゃん的にもほぼ組合丸投げで、場所の提供と資金の提供だけらしい。


 あとは講師が変なのに捕まらなければいいと言っていたが、まあたぶん大丈夫だろう。下手打てばどうなるかなんてわかっているし。



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