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ただただただ。 ~変わらないもの~  作者: けー
二章 戻っても日常には帰れない

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強制終了は心配だから



 ダンジョンは順調で、今日はレベルが上がり11になった。ただ約束より少し時間は押したが、ちゃんと帰ってきたらお兄ちゃんたちの姿はまだない。


 さすがにこのままは嫌なので、先にお風呂を済ませて地上に上がる。今日のご飯は何にしようか考えながら冷蔵庫を覗けば、中はぱんぱんだ。


 時間もないから作り置きと何かメインをと考えてたら、昨日解体したお肉が熟成終わってるはずだと気づいて、あたしはまた地下に下りると丁度三人が戻って来てた。


「おかえりー」

「ただいま、ご飯はー」

「メインは熟成ウリボアのステーキ、てか誰か手伝ってよ」

「俺に料理を求めるな、風呂行ってから上がるわー」


 お兄ちゃんがそう言い、その後ろをのり君が申し訳なさそうについてく。お姉はお姉ですでにお風呂に行ったみたい。


 あたしはしょうがなく思いながらもお肉を取りに解体場へ。昨日使ったはずのそこは、未使用のように綺麗で匂いも全く残ってない。


 あたしのダメージ少なくて有難いと、そのまま熟成室に行ってお肉を確認。魔物だから、それともこの熟成室のおかげか、早いものだと一日ぐらいで熟成は終わる。


 あたしはその塊を数個取り出して、地上の台所で料理していく。香ばしいいい香りがする頃にはみんなも上がってきたようで、あたしはお箸やお味噌汁を持っていって、と指示しながら仕上げを済ませ席に持っていった。


「うま、これウリボア?」


 お兄ちゃんの言葉はみんなの気持ちを表してる。熟成するだけで全然違うんだ。お姉とのり君なんて何も言わずに必死で食べてるよ。


「解体して熟成させたウリボアやで、一日でも食べれるって書いてたから試しで出したけど、ほんま美味しいな」


 熟成なしでも美味しかったけど、正直これを食べると全然違う。柔らかさも旨味の濃さも段違いになってしまう。


 ただ難点は、あの熟成室に置けるのは自分で解体したお肉だけ。魔晶石で解体したお肉には使えないことだ。この美味しさを知ってしまえば魔晶石のお肉には戻れない、でもそのためには解体作業が。悩ましいところだ。


 減りの早いお肉を見て、野菜を食べろと言いながらも追加を焼きに行く。ステーキソースもいいけど塩コショウやケチャップ系もいいよね、なんて到底四人では食べきれない量だけどみんな食べきってしまった。


「お兄ちゃんたちせめて洗い物はしてよ、あたしもうちょっとだけ薬学やってくるから」


 あたしは満腹になりすぎたお兄ちゃんたちにそう言って、地下へと向かう。作業室で早速午後取れた素材の下処理を済ませる。

 料理に近いからそんなに難しいことはない。たぶんお兄ちゃんも手順を覚えればできると思うし、覚えてもらったほうがいいだろう。


 あたしは出来上がったそれらを棚にあった瓶に詰め、ここからが本番だとさっそく調合を始める。



 下処理が終わってるなら調合もそこまで難しいものではない。ただタイミングと魔力だと本には載ってる。そう魔力。


 ここが問題だ、どの本にもある程度出てくる魔力。ただ魔力なんて使った記憶はない。

 ステータスではあるからあるんだろうけど、どうやって使うのか? 魔力操作が高いほどたぶんやりやすいはず、と思えばたぶんできるはず?


 小説なんかじゃ、自分の体を巡る血液ではない何か的な表現が多いよね。あたしは目の前で手を合わせ集中してみることにした。

 血液の流れすらわかるわけないよ。そう思いながらもいらない考えをしないように、ただただ自分の内側に集中するように意識を向ける。



 しばしの無音が広がる。自分の鼓動だけがはっきりと聞こえ他はなにも聞こえない。そして胸の辺りからゆっくりと広がる温かいもの。血液とは違い循環しているようには思えない。


 ゆっくりとその温かいものに意識を向けて、動かすイメージを持つ。それはまるで靄みたいで、動かそうとしても四散したりとなかなか上手くいかない。


 どれぐらいの時間それを繰り返しただろう。ようやくその靄をまとめ動かすことができた。あたしはそれを循環させるように体に回し、速度を上げる。


「絵里子!?」


 突然響いた大きな声に、あたしは集中を切らし驚いて目を開けた。振り返ればお姉が焦ったように速い速度であたしのところまできて、体を触ってくる。


「ちょ、キモイ、やめて」

「どっか変なとこない? 痛くない?」


 お姉の言葉に首を傾げるが違和感なんてない。もう少しで何か掴めそうだったのにと少し不機嫌になる。


「いやお前、恵子の態度もしゃあないで。うっすら白く光ってたもん。あの巫女衣装着てたらほんまに神の使いみたいやで?」


 お兄ちゃんの言葉に、は? と口が開く。いや待って欲しい、あたしは魔力操作試してたはず、そんなん聞いてない。


「薬学に魔力が必要ってあったから、魔力操作試してただけやねんけど」

「そんなん額に汗浮かばせてまでやることちゃう」


 お姉の指摘で漸く気付いた、どれくらい集中してたんだろ。


「今日はもうあかん、休み」

「恵子の言葉もしゃあない、根詰めるもんでもないしな」


 あたしを椅子から立たせようとするお姉と苦笑のお兄ちゃん。これは今日はもう無理そうだと諦めて、あたしは最後に魔晶石でいくつか売ってから休みたかったのにそれも却下され、強制的に地上に戻された。


 悔しいから一人になった布団の上で、寝る前に魔力を感じて体の中をスムーズに巡らせることができるようになってから寝てやった。



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