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ただただただ。 ~変わらないもの~  作者: けー
十三章 いつも唐突で突然

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これからのこと



「こっからは先の話やけど、生産職からは一人、探索者からは今のところ二人か三人か? 人数によって異なるけど、リーダーを選ぶ。生産のリーダーは生産を纏めてもらうし、探索者のリーダーはその他をある程度纏めて指導してもらう」

「これから先で入って来る奴を、ギルマス達は指導しないってこと?」

「俺らも色々忙しくなったりするから、できへんくなったりするやろ? それに教えることで自分の身になることはあるやろからな」


 その答えに納得いってない様子の信也さんは不機嫌そうだ。


「それと、リーダー格は三階に上がれるようにはなる。要は俺らに近づくってことやな。それに今は固定パーティーをまだやらしてないから使ってないけど、二階にはパーティー用の部屋なんかも準備されてる」

「どっかのゲームみたい」

「まあ、それを元にしたからな」

「パーティーメンバーの不祥事は当たり前で」

「パーティーの連帯責任とリーダーの監督責任やろ」


 パーティーを組むメリットデメリットは、きっちりあると言うことだ。


「パーティーに関しては、もうしばらく様子見て意見聞いて組む。それに今後に人数が増えた場合、許可はいるけど好きに組んでもらうことも考えてる」

「それってリーダー格は?」

「おらん場合も出てくるやろうな。そんときはこっちが指名してリーダー役決めるけど、それはギルドではリーダー格やない」

「責任はあるのに、損な役だね」

「逆に言うと、リーダー格が使えんでそいつが使えるなら昇格可能性もあるで」

「格があっても降格があるってこと?」

「当たり前や、俺らのギルドが生温いと思ってたんか?」


 信也さんが不機嫌そうに溜息を吐いた。


「思ってなかったけど、超大変そうだね」

「最初から言ってたやん。ただそれぐらいはできるのが揃ってるとは思う。やからこそやる」


 お兄ちゃんがメンバーを見渡しながら言う。それでだけのことはしてきたと誇らしげに言うから、メンバーも受け止め前を向く。


「これから残りの時間で、高遠さんと考えて時間割なんかは作る。特に探索者は最初一人ではなく、数人で一コマ見る感じや。その講師の結果も、最終的は自分の評価になるから頑張れよ。それと美沙希と梓と真翔」

「「「はい」」」

「お前らには、ここからその学校に通ってもらう」

「でも仕事はどうするんでしょうか?」

「全部の授業出るわけちゃうし、そこは考え選びながらやな。皐月さんとも話すけど。ただし、レベルがあることや魔法が使えることを言ったらあかん」


 今後子供たちが増えた場合、それを許されている三人と言うのはどんな目で見られるかわからない。


「そんな感じで講師と訓練、それから俺らの選定、それを理解して動いてほしい」

「もし望むなら俺達もその授業は受けれるの?」

「あー、そこ考えてなかった。高遠さんどう思う」

「事前に申請してもらえてればいいと思います。何がどんな発想になるかはまた別ですから」

「だ、そうや。時間割できたら渡すから、受けたい奴はサブマスに申請するように」


 メンバー達が騒めいた。悪い騒めきでないから、授業に興味があるんだろう。


「で、や。生産職に関してはもうちょい増えたら商店を作ることも考えてる」

「組合に卸さずにってことですか?」

「組合にも卸すけど、俺らのもんに頼られ続けてもあかん。やから講師役を受けたし、競合相手じゃないけど、発展してかなあかんねん」

「そのための店舗、商店ですか」

「まだ場所や形は未定やけど、それも頭に入れとけ。自分の商品が俺らの看板商品になる可能性があるからな」


 色めき立ち、期待や嬉しそうな生産職たち。けどそんな簡単なことではないんだよ。


「あと、家族を呼びたい奴おるか?」


 その声で数人から手を上げる。


「一応、地上に住居を持つか、寮に入るかはお前らは選べる。ただし家族を寮に呼ぶ場合は、家族にも契約してもらわなあかんし、準ギルド員や裏方ってわけじゃない。それは頭に入れとけ」

「あの、食堂を使うことは可能でしょうか?」

「そこ悩んでるんよな。商店や講師の手伝い、あと畑があんねんけど、そこ任せたりする人が欲しいから、ギルド関係なく仕事はあるねん。ただ扱いをどうするか」

「寮も分けるか考え中ですし」

「現状ではまだ、ハウスにギルド員以外を入れたくないって本音がある」

「買出しなんかであの転移陣を使うことは?」

「時間決めてあの参道の門を開くつもりや。そっちから組合の転移陣になる。境内のはギルドタグがあって許可がないと使えへんからな」


 ギルドメンバーの家族だからと言って、安易に全てを受け入れるわけじゃない。それはまた別物になってしまう。


「外に住居おこうがこっちで住もうが、メリットデメリット考えて、まだ時間はあるから決まったらサブマスに頼むわ」


 お兄ちゃんはこんなもんやったけ、と智さんと大仲さんに確認を取る。


「まあまだ詰めきれてないとこも多い。けどな、これだけは覚えとけ。俺らのギルドにおるからってその力に驕り高ぶり他を見下すような奴は、俺は遠慮せずに張り倒して除名する。力の意味をよお理解して、これからも行動するように」

「「「はい」」」


 みんなの返事にお兄ちゃんは満足そうに頷いた。メンバー達は解散と言い、あたし達はギルドマスター室に行くことなる。



 大仲さんがお茶を淹れてくれる中、お兄ちゃんが高遠さんに聞く。


「高遠さんから見て、メンバー達どない?」

「初期の頃と比べようもないぐらいいい顔になってますし、それでいて力も抜けていて、よくこの短期間であそこまで育ったと思いました」

「まあ色々あったってのもあるからな。一応今のリーダー候補はこれ、それと講師の件やけど」

「はい、座学だけの希望の者と、戦闘込みで講習を受けたいものに分けようと思ってます」

「戦闘だけは除外ってことやな?」

「座学のみを受けていた場合の扱いを悩みますが」


 高遠さんが難しい顔をして、智さんは何か書いているようだ。


「女性に関しては三ヶ月、寮生活でみっちり探索者の基礎から戦闘まで考えてるんやけど」

「必要だとは思いますが、手は足りますでしょうか?」

「あたしもそこは協力する」

「恵子もこう言ってるし、たぶん組合にも少し人出してもらうことになる。寮に置く人も込みで」

「わかりました、あとは生産と男性探索者ですね」


 お兄ちゃんが少し疲れたように息を吐く。


「こっちのほうが生意気多そうやからな」

「そう簡単に、負けるようなメンバーではないでしょうが」

「それと今はある程度理解できる年齢と言うことで、十五歳以上から十八歳未満は、座学のみと言うことで宜しいでしょうか?」

「戦闘訓練見学なら許すって感じかな。ただ自己責任の意味わからんやつが多いやろうし、その辺りの周知はちゃんとしてほしい」

「わかっております」

「けど、無手の組手ぐらいなら許してもいいか、とも俺は思ってる」

「生きるための力としてですか? 授業態度などで許可を出す、というのは如何ですか?」


 次々に話しあわれる内容。とりあえずあたし関係ないのに、なんでここにいるんだろうかと思い始めた。


「なあ、なんであたしらまでおるん?」

「そりゃ聞かせるためやろ?」

「どうなるか知ってて損はないからな」


 後ろの二人に小声で聞き、確かにそうなんだけれどもと思うが、正直暇なんですよね。

 ただこの後、お兄ちゃんに場を弄れと言われる可能性はあるのかと思い直した。


 今の話じゃ、境内の前の空間に寮になる賃貸が二つ、男女分けて。それに教室になるような空間も必要か。

 ギルドメンバーの家族は、こっちに住んだらいいんじゃないかなあ? まあ今言うことじゃないから言わないけど。


 でも忘れそうだから、一応智さんに念話で言っておいた。あとは色々考えて、どうにかしてくれると思うんだ。


「畑に関しては、孤児なども雇うとお聞きしましたが」

「寮があるし衣食住は見たって、その代わり給料は安めになると思う。それでも監督役で大人が数人欲しいとこなんよね」

「畑の規模がわからないことにはなんとも申せませんが、組合と収穫物を分けると言うことで、組合から人を出すのはどうでしょうか?」


 高遠さんの申し出に、お兄ちゃんが少し驚いた顔をする。


「俺達は場を提供するから、あとは組合が見るって言うん?」

「はい。孤児とは言え様々ですし、問題を起こす者もいるでしょう。それに毎回ギルドが関わるのは辛いかと」

「たしかに良い手なんやけど、組合は大丈夫?」

「研修でこちらのダンジョンを使わせてもらってますし、何より転移陣のおかげで人材確保も捗ってます。ただ農業指導者を探すことになりそうですが」

「あ、それならあたしにあてがあるよ」


 今まで何も言わなかったのに急に声を上げるから、みんなの視線があたしに向いた。


「たっちゃんとこに頼んだらいいやん。苗とか種もちょこっと分けてもらって」

「あー、あの爺さんたちなら手伝ってくれるやろうな」

「道具なんかも聞かなければいけませんし」

「暫く泊まり込みでお願いすることなるけど、いけるんかな?」

「確認だけしとこか? どうなるかわからんって言って」

「そうしといてくれ。もし頼む場合は組合依頼で転移陣使ってもらえ」


 お兄ちゃんがそれを決めていいんでしょうか? 高遠さんから声が上がらないからいいんだろうけど。


「ならあとは、各施設の確認や広さの確認、畑もか」

「そうですね、今のところはこんなものだと思います」

「一応先に組合から指導する者などは選考を始めておきます。また何かありましたらご連絡下さい」

「わかりました。高遠さんもありがとうな、お疲れさん」

「皆様もお疲れ様です、これからも宜しくお願いします」


 高遠さんはそう言って大西さんの案内で帰って行った。


「場の施設はお兄ちゃんがするの?」

「あそこは境内外やから今は俺でもできるやろ? 確認の二度手間を考えたら俺がやるわ」

「わかった、ならあたし特にやることない感じやんな?」

「そうやな。他は今まで通りあいつら扱くなりなんなりしとって」

「久々にダンジョン行っていい?」

「そう言えば氾濫で入ったけど、長いこと行ってないなあ。ポイント稼ぎと素材稼ぎするならいいで」

「やった、のり行こ」

「二人はどうするん?」

「今日は別に訓練せんでいいしな」

「みんな考える時間だろうから、俺達も久しぶりに行くか」

「なら戻って準備して行っちゃおか」



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