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ただただただ。 ~変わらないもの~  作者: けー
十三章 いつも唐突で突然

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長い夜(1)

 


 中に入ってまず思うのは、どこにこんだけの魔物がいたんでしょうか?


 氾濫が始まったのは夜中だったにも関わらず、人が少ない時間を狙った探索者もいるから、思ったよりも人がいて、大技を撃つわけにもいかない。

 地道に魔力を巡らせながら倒していくしかない。


「きりがないと思うんやけど」

「絵里子の魔力量とマナポどうや?」

「まだ余裕あるー」

「さっき飲んだんで暫くは大丈夫やと思いますよ」

「絵里子用のマナポーションは、俺達のポーチにも入っている」

「おかしくない? お兄ちゃんも二人も?」

「お前に聞くより二人に聞いたほうが正しい。ならわんこ出せるか?」

「あれやったら人は避けれるもんな」

「あかん、絵里子に無理させんで」

「ならお前、この状態で他の探索者を倒さんでいい手あるんか?」


 お兄ちゃんのその目は家族ではなく、パーティーリーダーとしての目だ。そしてあたしはこのパーティーの看板としての誇りがある。


「お姉、あたしも探索者や。それにやばくなったらお姉が頑張ってくれるんやろ?」


 前のあたしだったらきっとこんなこと言わなかった。けど今ならばお姉の気持ちも、そしてお兄ちゃんの辛いと思っている判断もわかるから、頼ることができる。


「わかった、何がきてもあたしが守る」

「俺らの仕事が取られそうやな」

「本当だな、俺達も気合入れないとな」

「はいはい、遊んでないでちゃんと仕事してくださいよ」

「んじゃまあやるから、ちょいとお願いねー」


 なんとも気楽な会話と言葉。それでもみんな、しっかりお仕事してるんですよ? 足元には次々と重なる魔物だったものたち。メンバーの体調は大丈夫か気になるが、まずは自分のお仕事しっかりしなきゃ、とあたしは魔力を巡らせ、凛々しくも美しい白と黒の狼を作り出す。


「人はできれば助けたって、お願いね」


 そう言って二頭を送り出せば駆け出し、次々に魔物を倒していく姿。勇ましくて格好いいねえ。


「その、自分の魔法に見惚れるの止めん?」

「めっちゃ可愛いし格好いいと思わん?」

「本当に趣味だな」

「趣味全開やからこそ、あそこまでのクオリティー」

「ドヤ顔で言うことちゃうな、宏さん、先に進みます?」

「あの狼、どんぐらい持つ」

「そこそこ魔力入れたから、一階なら大丈夫やと思う」

「二頭に別の命令は?」

「できるよー」

「マジお前規格外、いい加減にしろ。なら一匹は一階の入り口に配備、もう一匹は連れてこか」

「文句言うわりには使うよね? どっちがいい?」

「性能の違いあんの?」

「今のところはない」

「その言葉が不穏でしゃあないわ。ならどっちでもいいで」

「ならしーちゃん置いて行こうか。しーちゃんは入り口から魔物出んようにお願いな。くーちゃんは一緒に行こか」

「今更やけど、ネーミングセンス」

「めっちゃ凝った名前も魔法にどうかと思うやん? あだ名みたいなもんやもん」


 会話しながらも戦闘は続いている。そして二頭の狼のおかげで道は開けそうだ。


「なら生産職はここで頑張れ。組合の応援も来ると思うし、やばかったら結界石を使え」

「はい」

「あの、俺も行っていいですか?」

「紫藤、それ今言う?」

「他の生産を考えたら、俺がいるべきかと思ってたんですが、姫様のしーちゃん? がいるなら平気かと」

「あー、ええけど。マジでこっから地獄やで、何階まで行くかわからんからな」

「理解してます」

「ならええで、他は頼むな。よし行こか」


 魔物の流れに逆らうように、魔物を倒しながらただ進んで行く。まずは一階がいるかどうかだろう。


「お兄ちゃん」

「あいよ、のり君は前に出て、恵子と秀嗣も頼んだ。他は雑魚や」


 一階のガーディアンは、お兄ちゃん達がやったことある奴だ。そしてそれはすぐに倒されて、魔物が少し散り散りになって減っていく。それでもまだまだ多くて、これは三階までは覚悟かな?


「ポーション飲んだか?」

「あ、そうやね」


 返り血を防具の袖で拭い、ポーションを飲んで少しでも体力を回復させておく。そうしないとこの戦いがいつまで続くかわからないからだ。

 胡堂はほんとによく気付くよ。


「この流れ、逆らって次に行くぞ」


 お兄ちゃんの言葉であたしは駆ける。それに胡堂と秀嗣さんもやってきて道を作っていく。


「絵里子は体力気をつけろよ」

「さっきポーション飲んだ」

「恵子は魔力な」

「のりにも言われた」

「家の男共、有能過ぎて有難いわ」

「なら私も、有能なところを見せなくちゃいけませんね。皆さん避けてくださいね」


 その瞬間に後ろから、凄い勢いで怖いものが迫る気配がした。あたしはそれを高く後ろに飛ぶことで、とかやり過ごすと、それは魔物に横一線に当たり、そのまま進み何列かを上下に真っ二つに切っていく。


「智さん、今のって」

「はい、鎌の刃みたいなものですね」

「死神どころじゃないな」

「あれどうやってるんやろー、あたしも飛ばせるかなあ?」

「お前、氾濫のたびに何か試してない?」

「そうでもないよ、四神は特訓の時やし」


 でもそうか、同化を魔法として放出する感じ? 鉄扇の先に同化を集めて、矢を放つ感覚で鉄扇を仰げばいいのか? それに気付けば、とりあえずやってみるのがあたしだ。


「さすが姫様、よくわかりましたね」

「秀嗣さんのも、似たような原理やんな?」

「たぶんそうだと思いますよ。私は拓斗の戦い方を見て思いつきましたから」

「ああ、確かに」


 でもこれは便利かもしれない。魔力量によって大きさや強度は変わるし、それに魔力だから、ある程度は動かすこともできそうだ。


「連発するならマナポ飲め」

「まだ大丈夫やもん、これそんな魔力使わんから」


 鉄扇に魔力をたんまり入れていることもあって、そう自分の魔力を使うことがない。それでも多少考えないと、この先がまだ見えてないんだから。


 まだ二階にも辿りつけていない。次々にやってくる魔物を倒しては、少しずつしか進めないことに苛立ちそうだ。


「絵里子、わんこに二階までの道を作らせることできるか?」

「できるけど一階どうするん?」

「ギルメンもおるし探索者もおる、もう組合支援も来てるはずや」

「わかった、くーちゃん」


 それだけで頭の方向を変え、動き出す黒い大きな狼。立派で頭もよくて、大変いい感じの出来だ。

 そして強くてあたしの願いを叶えるため、魔物の群れに臆することなく突っ込んで行く。魔法なんですけどね。


 それでも十分に道としては使えそうだし、少し楽に進めそうだ。横からやってくる魔物を屠りながら、あたしたちは何とか階段までは到達した。



「必要な奴は順にポーション類飲め、終わったら突っ込む。階段も魔物に占領されてるから、休憩なんてあると思うな」


 あたしはいつものように二本を順に一気に煽り、お兄ちゃんの号令を待つ。


「何階くらいならわんこ行けそうや?」

「この感じやったら三階まで持つかやね? 魔力足したらもうちょい行けるかも」

「わんこ消えることでお前にデメリットは?」

「悲しいだけ」

「うっし、わんこ先頭で行けるとこまで行こか。階段は一気に駆け下りるぞ」


 階段での戦闘はあまりやりたくない。狭いこともあるし、それこそ次々きて間に合わないこともあるし、動きにくい。それを考えたらくーちゃんにお願いするのが確かに早い。


「ごめんやけど、お願いね」


 首元を一撫ぜして、少しだけ魔力を足しておく。少しでも強化されるように。そしてあたしの願いを聞いて、その狼は走り出す。

 誰よりも早く階段を駆け下り、魔物を次々と蹴散らし屠りながら、また駆け下りる。



たまあに、なんで各話タイトルつけようと思ってしまったんだろうと、本気で思います。

番号にしとけばよかったよ、毎回そこで時間を取られる。

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