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ただただただ。 ~変わらないもの~  作者: けー
十二章 鬼畜の所業

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理解する者としない者



 どれだけレベルを上げようと死ぬときは死ぬし、負けるときは負ける。だからこそ自力を上げて、せめて隙をつくぐらいの能力と冷静さ、それにメンタルが必要なんだ。


「結構ダンジョン以外でも場数踏んできて思うんは、やっぱ最後は自力やねん。わかりやすく言うと、レベル5の人が二人おったとするやん。片方は運動してこんかったとしよう、もう片方は武術してきた人、どっちが勝つ?」

「そりゃ武術してた人でしょ?」

「正解。じゃあ武術してた人はレベル5、運動してない人はレベル8、どっち?」

「3も差があれば、してないほうが勝つんじゃないですか?」

「俺はレベル5でも、武術してる方が勝つと思ってる」


 あたしもお兄ちゃんに同意見だ。人を相手にしたことあるからこそ、それも訓練を積んだ人を相手にしたことがあるからこそ、余計にそう思う。


「力の使い方知ってる奴と知らん奴とじゃ、全然違う。逆にレベルに頼ってると、負けそうなったときに崩れて使いもんにならんくなる。力に溺れて、それが通用せんとわかるとガキみたいになる奴が多い」


 力に溺れる、まさにその通りだ。それになんの意味があるんだろう。その力をどう使うかが大切で、力を振り回すだけでは、ただの虐めっ子と変わりない。


「レベルはただの目安って、そう言うこと? 精神的な力や判断能力も力ってことだよね?」

「せめて挙手ぐらいしてほしいが、そう言うこっちゃ。レベル頼りの力に溺れた奴は、やばい時には仲間も見捨てて逃げる可能性もあるからな、そんな奴はギルドにいらんねん」


 信也さんの静かな声にお兄ちゃんは頷いて、みんなを見る。


「魔法の大技にしてもそうやな、それがあったら大丈夫なんて思う奴に教える気はないし、見栄張りたい奴に使えるとも思ってない。俺らのギルドは現状お試しや、それでも有事の際には依頼が来るやろう。そうなったら最前線に立つんは俺らでも、その後ろは探索者達や。その意味を理解できん奴は正直いらん」

「抜けたいと思う方は明日までに、サブマスにでも言って下さい、我々は引き留めはしません」


 智さんの静かな声は広間に良く通り、何人かは考える顔をしていた。


「他になんかあるか? ないなら今日は解散するけど」


 お兄ちゃんのその言葉に上がる手はなく、今日は解散と言うことになった。あたしはお兄ちゃんの所に言って袖を引く。


「あんな、幸康さんに料理用の魔法を教えていい?」

「あ? あー、ミンチなんかか?」

「うん、できれば冷まし方とかも。風と水やろ? 野営でも便利やんな」

「本人、火が欲しかったらしいで」

「料理で火属性も悪くはないけど、色々考えたら風と水がいいんやけどなあ」

「まあ幸康やったらいいか、そん変わり誰かと一緒に行けよ」

「ハウス内やったら大丈夫ちゃう?」

「一応や」


 お兄ちゃんはそう言うと行ってしまった。あたしは待っていてくれた二人に振り向く。


「話通しに行くんやろ?」

「幸康ならキッチンの方に行ったぞ」

「ありがとう」


 たぶん明日の仕込みなんかをしに行ったんだろう。本当に大変だろうな、とあたしは二人と共にキッチンに行き、声を掛ける。


「ゆっきやすさーん」

「どうしましたか?」

「お兄ちゃんに許可貰ってるし、ちょっと時短料理のコツを教えようかと思って」


 不思議そうに首を捻る幸康さん。あたしはキッチンに入っていいかを聞き、胡堂と秀嗣さんには前で待っててもらう。誰も近づかないように。


「この人数って、仕込みも大変やろ? だからちょっとした時短テク」

「機材とかってことですか?」

「んー、そのお肉、今からミンチにすんの?」

「はい、肉の量を増やすためにも、肉団子のスープにしようかと」


 お肉の塊とミンチにする機械が出ていたから丁度いいと、あたしは一つのお鍋を借りることにする。


「おお、ガラス蓋やしわかりやすいわ。ならちょっと見ててな」


 お肉の塊を何個か入れ蓋をする。蓋を押さえるように手を添えて、いつもよりゆっくりと中でミンチを作っていく。


「見える? これは風魔法」

「こ、これが魔法ですか!?」

「うん、その機械を使うより、慣れればかなり早くミンチになります。あと野菜のみじん切りも」

「あれって、中で風を起こしてるってことですよね?」

「風と言うより、小さなかまいたち的な?」

「姫様、料理で魔法使うんですか?」

「さっきも言ったけど時短テク、やないとあたしの時間なんてないもん」


 納得顔の幸康さんは、自分もやってみたいと言い、鍋を取り出してきた。


「イメージが大事、目に頼るんじゃなくてイメージ」

「鍋の中だけってことですよね」

「うん、幸康さん魔力の流れ中々綺麗やし、できると思うよ」


 そう言うと集中を深くする幸康さん。いい感じに動き出しているから、これは習得は早そうだ。


「ストップ、一回止めて」


 すぐに結果は現れ、あたしよりは荒いが見事にミンチになり始めた。


「おお、できた、できましたよ!」

「うん、いい感じやと思う。後は回数を重ねて感覚を掴めば、粗挽きから細かいのまでできるはず」

「いいこと教えて頂きました、有難う御座います」

「ううん、この人数やと大変やろ? 訓練もしてるみたいやし」

「それでも、俺が望んだことですから」


 いい笑顔で、逆にあたしの方が嬉しくなる。こんな幸康さんだからこそ、お兄ちゃんも許してくれたんだろう。


「あと水もイメージ次第。そこからはさすがに試行錯誤で頑張って」

「十分教えて頂きました、本当に有難う御座います」


 しっかりと頭を下げる幸康さんに気にせんで、と声を掛け、あたしはキッチンを出る。胡堂と秀嗣さん、それにあれは信也さんと石川さん?


「どうしたん?」

「ああ、武器の話をな」

「姫様、真辺に何か教えてたの?」

「料理のことやで?」


 嘘でもないし間違ってもない。けどきっと幸康さんなら、今日の話をしっかりと受け止めて、あたしが教えたことを考えてくれるだろう。


「初めましてでいいのかな? 姫さん」

「ちゃんと、こうして話すの初めてですよね」

「うん、俺は石川武雄」

「飯田絵里子です、そう言えば武器が刀でしたっけ?」

「ダンジョンで拾ったね。できればもう少しいいのが欲しいんだけど」

「いいのとは、どうゆうことだ?」

「俺には少し軽く感じるんだよね」

「ああ、確かに重さは大事だからなあ」

「秀嗣のは結構大振りだよね? 重くはないの?」

「俺には丁度いいぐらいだな」


 刀同士で気が合うようだ。しばらくはこのまま刀談義が始まりそうだ。


「そうだ、姫様に言われた通り生産系の本読んでみたけど、確かに面白いね。拓斗が今日やってたのって、あれ魔力水を直に出したってこと?」

「やっぱ気づいたかー、こいつは気づくと思ったわ」

「あとは温めと撹拌? 器用なことするよね」

「俺なんて、まだまだやけどなー」


 そう言いながら胡堂があたしを見てくる。あたしは他の人が作った魔力水を動かして、同じことができるようになっているから。

 器用と魔力操作の高さだと思いますよ、あと先入観はないほうがやれる幅は広がります。


「姫様って、規格外?」

「柔軟性が高いと言って」


 二人がくすくす笑うから、拗ねたくなる。そのとき近づく気配に、胡堂の意識が向いた。


「あの胡堂さん、ちょっといいでしょうか?」

「なに?」

「できれば場所を移して」

「内容わからなどうも答えれん、言えんのやったら諦めて」

「しかし生産でない方もいますし」

「ギルメンで何を気にするん?」


 どこか冷たい胡堂の言葉、それでも宮本さんは引き下がることもなく食らいつく。


「先ほどの薬学について、詳しく知りたいのですが?」

「自分馬鹿なん? 聞いてた? まずやることあるし、説明しても意味わからんやろ?」


 馬鹿って言ったよ。かなり苛々してきているな。


「そ、そんなこと、理屈さえ説明頂いて、解説して頂ければ」

「宏さんの話も無駄やな。秀嗣、悪いけど先に戻るわ」

「いや、俺ももう戻る」

「なら帰ろか、んじゃあな」

「ん、姫様もまたね」

「姫さん、今度は喋ろうね」


 どこか軽い信也さんと石川さん二人に手を振り、あたしは胡堂に促されるように三階に向かう。その背中に嫌な視線が突き刺さるのを感じながら。



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