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ただただただ。 ~変わらないもの~  作者: けー
十二章 鬼畜の所業

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林間学校の始まり



 次の日はかなり早い時間に起きて身支度を整えた。居間に行けばお兄ちゃんに智さん秀嗣さんも起きていた。


「おはよー」

「お早う御座います」

「おはようさん。飯取りに行くならついでに、コーヒーのおかわり」

「おはよう、ちゃんと眠れたか?」

「寝たよー」


 そう言いながら台所で朝ご飯の準備と、自分とお兄ちゃんのコーヒーを淹れて居間に行く。胡堂も起きてきたようだ。そして最後はやっぱり寝ぼけたお姉を連れたのり君。


「俺らが遅刻とか、シャレならんことすんなよ」

「隣県までの車はどうすんの?」

「俺らはいつも通りの二台、メンバーは三宮でマイクロバスを借りれることなってる」

「ああ、だからみんなはテントなんか」

「それでも智製やからな、快適なはずやで」


 あれを経験した後は、他のを使うのが辛いだろうな。そんなことをしていたら時間が危なくなってきた。


 あたしは部屋に戻り装備を整えて、自分の荷物の中身を確認する。それから鉄扇を二本腰元に差して、最後に顔隠しをつければ準備は完了だ。


 居間に向かえば胡堂と秀嗣さんももう出ていた。


「宏さんと智は一応、先に行ってる」

「ならお姉らも出てきたら行こか」

「ハウス前なら珍しく、歩いて行くか」

「そうやね、最初の確認以降、使ってないし」


 そうこうしていたらお姉たちもやって来たので、珍しく神社から拝殿を回り参道を行く。すでにそれなりに揃っているようだ。


 いくつかの緊張して顔や楽しみにしている顔、不安そうな顔まであって様々だ。その中に宮本さんの姿もあったから、頑張ってほしいとは思う。


 そうこうしていたらお兄ちゃん達もやってきて、全員の顔を確認し口を開いた。


「全員揃ってるみたいやな、なら順に行こか」


 そう言って拝殿横の転移陣に向かい、先に智さんと大仲さんが乗り、その後を数人ずつギルドメンバーが、そしてお兄ちゃんを先頭にあたし達もそのまま直接三宮に転移する。本当に便利だわ。


 飛んだ先ではすでに智さんと大仲さんで職員との話はできているようで、あたし達は一階のまだ人の少ない地上に出る。

 のり君と秀嗣さんがあたし達用の車を出し、ギルドメンバーは借り物のマイクロバスへ。


 先頭にお兄ちゃんの乗るのり君運転の車、間にマイクロバスを挟み最後に秀嗣さんの車だ。


「マイクロバス、誰が運転してんの?」

「サブマス、他にも数人運転できるみたいやで」

「数時間は走るし、眠いなら寝ていいからな」

「昨日は早く寝たし大丈夫、それに智さんが水筒にココア淹れてくれてくれてるし」

「智って、お前にだけはマメやと思う?」

「気遣い屋さんやんなあ」

「お前ほんまどっかズレれてるよな」

「なんか喧嘩売られてる気がすんねんけど」

「褒めたんや」


 そんなくだらない会話をしながらも車は進む。組合が一部のパーティーに依頼して小まめに間引きしているだけあって、この辺りは魔物の気配も少なく人の気配が多い。


 お兄ちゃんはどこでやる気なんだろうかと思っていたら、数時間後に着いたのは、あの幸康さんの両親なんかが籠城していたホームセンターだ。


 みんなが下りる中で、あたしはお兄ちゃん近付き袖を引っ張った。


「なんでここなん?」

「初日やし、最悪中にテント立てたら、こいつらも寝やすいやろ?」

「そういう優しさですか」

「使い潰す気はないからな」


 にやりと笑う顔は悪人だって。


「でもまた魔物の気配が濃くなってるで?」

「この辺りは来れる探索者は、そうおらんからな」


 周囲を伺えば魔物の気配はしっかり有り、香水を使えばそれなりの量の魔物がやってくるだろう。


「ここで手本無しの、ぶっつけ本番?」

「そのつもりや、やばいやつはすぐ後ろに下げるし」


 まあお兄ちゃん達の監視のもとだから、どうにでもなるんだろう。離れて行き、何かを打ち合わせしているお兄ちゃん達を眺めながらぼんやりと思う。


「どうかしたか?」

「ううん、みんな大変やなって」

「一番大変なのは幸康やろ? あいつ探索者と同じことするって言ってるらしいし」

「ご飯もせなあかんのに?」

「絵里子の間引き見たからな。それに一応、今日の昼は弁当としてもう配ってるしな」


 胡堂と秀嗣さんの言葉にうわー。となんとも言えずにいたら、お兄ちゃんが声を上げた。


「もうここは魔物の領域や、少し行ったところで間引きするから注意しながらついてきて。殿(しんがり)は絵里子らな」


 そう言ってすぐ動き出すお兄ちゃん。本当になんの説明もないよ。一応周囲に魔物避けの香を焚いてはいるが、たぶん目的地の前には消すんだろう。



 ついた先は広い公園? サッカーやバスケットなんかするような場所だろうか?


「絵里子、ここに円かけるか?」

「広さは?」

「適当に並ぶ程度」


 曖昧過ぎる指示にやるけどさ、と魔法で円状に跡をいれる。


「内にももう一本な」


 はいはい、思ってましたよ。とすぐに終わらせれば、大仲さんと智さんが内円にいくつかの結界石を置き、リュックも置いていく。


「なら説明すんで、外円には探索者と生産職、それから幸康、智に従って並んで。裏方は内円で大仲さんに説明聞いて」


 丸投げじゃないか、そう思いながらあたしはお兄ちゃんに近づく。


「あたしら真ん中おったらいいん?」

「玄武いると思うか?」

「ここなら平気やろ? ただ胡堂とお姉、それと秀嗣さんとのり君は外円と内円の間で回ってるほうがいい」

「命令聞かんかったり動けん場合か」

「それとそこの穴埋め。戦闘能力でバランス考えて配置したんやろ? のり君と秀嗣さんなら埋めるの簡単やし」

「そうやな、俺と絵里子と智は中心で、やばそうなとこに魔法やな」


 お兄ちゃんがすぐに指示を出し四人を配置していく。あたしは真ん中にさっさと行っておくかと視線を動かせば、少し緊張気味の未成年組と皐月さん。安心させるように微笑んでおいた。



「なら説明するんで、これから魔物を呼ぶから外円は取り合ず倒せ。ポーション飲むときは左右に声かけて後ろに下がって飲むように。裏方はポーションなんかの管理と必要なところに持って行く。救助の練習になるから状況の見極めも頑張ってな」


 たぶんお兄ちゃんも、最初から上手く行くなんて思っていない。だからこそ言葉が軽い。


「やばい場所や無理そうなやつは強制的に下げるから、俺らもおるし、安心してやろか」


 そう言ってあたしを見るから、指で一を作れば首を振られ、二だと示された。鬼だなと思いながらもなんとかなるか、と地面に二回香水を吹き付け風で散らす。


 それだけで徐々に濃くなる魔物の気配。四方八方から声がして、外円の人たちに緊張感が高まる。


「氾濫なんてこんなもんじゃなかったでー、フォローあるから死ぬ気でやれや」


 その言葉で北海道組の三人娘の顔つきが変わった。あれに比べたら全然楽だと思うよ、ちゃんと終わりもあるし。そして予想していた幸康さんも、顔に緊張はまだ残っているが、それでもいい感じに力は抜けあれなら大丈夫だろう。


 他はやはり村田兄弟と石川さんは別格か。自然体で力みもない。それと紫藤さんもただ前を見据え魔物を待ってる。


「もう来るで、最初ゴブとウルフ系、オークもおるな」

「ソーセージ作ってみたいんよなー」

「ベーコンの追加、お願いできますか?」

「今仕込んでるでー、帰ったら燻製する」


 中心部で暢気なそんな話を繰り広げながらも、見えてきた魔物たち。数人硬くなり動けなさそうだ。


「言っておくけど、俺ら各自、これフォローなしで一人でできるからな。こんなとこで動けんような訓練俺したつもりはないけど? 嫌やと思うなら下がれ。無理やと思うなら下がれ。強制する気はない。これが俺らのギルドや」


 お兄ちゃんのその言葉が合図になったのか、始まった戦闘。砂煙を上げながら押し寄せる魔物たち、それを迎え撃つギルドメンバ―。


 その姿を見ながら何人かの魔力の流れが綺麗になってるな、とか、上手い躱し方だな、と見ていく。ただ連携が取れているかと言われたらまだまだだろう。それも仕方ないことだ。



 一番最初に後ろに下がったのは宮本さんか、すぐに美沙希ちゃんがポーション(微)を持って行く。正しい判断だ。なのに宮本さんは怒り、渡されたポーション(微)を投げつけた。


「マナに決まってるでしょ、なに見てるの!?」

「美沙希ちゃん間違ってないで? マナポ飲むにはまだ魔力あるでしょ? 体感でわからんの? それより体力回復のポーション(微)でしょ?」

「あ、あたしは後衛系で」

「お兄ちゃんの指導は偏って教えてんの?」


 あたし達パーティーは全員できるのであれば、前衛、後衛の手段をできるようにとお兄ちゃんは言われている。ただお姉や秀嗣さんのように無理ならば、それに代わる力をと常に考えてる。


 後衛で魔法ができるなら、武器を持つだけだからできるはずだ。そんな生温い教えをお兄ちゃんがしてると思えない。


「何もしてない貴方に言われたくない!」


 そう言われてしまえばあたしに返す言葉はない、指導しているわけでも今、魔物と戦っているわけでもないから。



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