準備
「お姉たちもいい感じにできたんやろ?」
「魔力の無駄減らせれたし、また速くなったよ」
「俺も身体強化も同化も強化できるようになったからな、おかげで威力は増しそうだ」
「恵子は元々雑なだけやったし、秀嗣は飲み込み早かったから助かった」
「感覚でやってることの説明って難しいもんね」
ついのり君と共感しあう。
「で、いつから関東行きなん? お兄のことやから話ついてるんやろ?」
「明後日には移動や、一宮に車が来るらしい。そっから向こうさんが準備した飛行機に乗ってまた車」
「ならフル装備のほうがいいか」
「えーあたし嫌や、移動ぐらいのんびりしたい」
「あほか、恵子の言う通りフルじゃ。敵陣やと思え」
それは確かにそうなんだけど、今のあたし達に何かできる人がいるとは思えない。
「それにもしかしたら、また聖女やなんやって出てくる可能性あるからな」
「威圧は?」
「解禁」
お兄ちゃんそんなこと言っていいんですか? お姉が超喜んでますけど。
「関東行ったら女やって舐める奴にも解禁でいいで、それで使いもんにならん隊なら意味ないやろ。俺達は善意で行くんや、なんかあったらすぐ言え、速攻帰ることも考える」
確かに国にはあたし達は自由にやるとそう伝えてる。それでも関東に行くことを決めたのは、知っている人達が気になるのと、自分たちのレベル上げのためだ。
「でも、そんとき帰りどうするん?」
「元々帰らせてもらえるかわからんからな、どっかに陣作る」
「関東にあたしらを止める気なん?」
「国はたぶんな。こんな有効的な奴ら、そりゃ手元とは言わんでも近いとこ置いときたいやろ?」
その気持ちもわかるけど、あたしはお家に帰りたい。でもそうなるとやっぱり、国関連で会うことになる可能性もあるのか。
「今回は会談なしでとは言ってる。ただどうなるかわからんが俺と智で基本対応するから、絵里子は拓斗と秀嗣から絶対に離れるな。恵子はのり君な。それから無駄に喧嘩は売るな、威圧までや」
「無駄な喧嘩は売らんけど、絵里子に手を出そうとする奴おったら正当防衛やで」
「拓斗と秀嗣で絵里子をちゃんと見張る様に」
最後おかしくない? お姉を止めること諦めたよこの人。つい溜息が出るが、それでも隊員さん達と会えることに、少しの安堵と不安、そんなものが入り混じる。
「なら各自準備始めてくれ。ポーションや薬類は多めに、食料もできれ多めな」
「はーい」
今考えたら全員で遠征は初めてのことだ。食料もいつもより多くしないと大変なことになりそうだし、食材自体も持って行くかと台所で準備を進め、その後は倉庫でもいくつか入れていく。
「食料の準備ですか?」
「うん、全員やし念のため、多めで食材もと思って。智さんは?」
「薬品類を取りに」
「ポーションも多く持って行ったほうがよさそうやもんね」
はい、と言う智さんはどこか不安げで、あたしをじっと見てくるから首を傾げ智さんの言葉を待った。
「姫様は怖くはないのですか?」
「関東行くこと? 確かに敵陣に近いけど、それでも気になるんはほんまやし」
「しかし狙ってくるものはいるでしょう」
「そう思う。けどあたしの大事なものに手を出すなら、許さないって警告はしてるもん」
あの言葉に嘘はない。あたしが一番守りたいものが守れずに、他を守ることなんてありえない。それがあたしを動かすためだろうと。
「それだけではなく、関東の被害状況は酷いでしょう。また残酷なものを観る可能性もあります」
眉を下げ、珍しいほどどこか情けないようなこんな智さんを初めて見た。きっと秀嗣さんから聞いているんだろう。心配をしてくれている。それだけがただ伝わるからあたしもちゃんと言葉にする。
「うん、可能性高いやろうね、辛いやろうね」
「ならわざわざ行かずともいいのでは?」
「けど気になってるあたしがいるのもほんま。そしてみんながおってくれるから大丈夫やねん、やから智さんも無事でおって、これから先もずっと」
あたしの言葉に目を開き、一瞬の間を空けて智さんは力が抜けたように笑った。
「そうですね。姫様の身も心も守れるよう、これからも精進いたします」
「まるで騎士やね」
「そんな格好いいものに例えて頂けるとは」
「智さん十分かっこいいやん、戦ってる姿もすごいし魔法も、それに生産と交渉関係まで、弱点ないんちゃう?」
「私にだって弱点ありますよ?」
「うっそや、何よ?」
どうしても浮かばない、あたしの中で智さんは完璧なイメージに近い。そつもなく気が利いて大人な智さん。
「私に興味を持って頂いてますし、折角ですから内緒にしときましょうか」
優しくもどこか色っぽく言う智さん。やっぱり勝てる気がしない。
「いつか教えて下さいね」
「そうですね、わたしを見ていればすぐわかると思いますよ?」
悪戯っぽくウィンクされて、目を丸くするのはあたしのほうだ。それもすぐ笑みに変わり、智さんと話しながら必要なものを揃えていった。




