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ただただただ。 ~変わらないもの~  作者: けー
九章 力のあり方

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新しい旅立ち



 慌てる三人を気にすることなく料理に取り掛かる。胃腸に優しいものもあるほうがいいか? ただ肉魔人がそれで納得はしないしな、と献立に悩みながらも手を進めていった。



 丁度、話し合いも終わり、料理も出来上がったころに解体に行っていた二人も戻ってきた。並べるのを手伝うと言ってくれた皐月さんと美沙希ちゃん、真翔君は胡堂に遊ばれてるのが見えた。


 お兄ちゃんも呼んで食べ始める。和風ロールキャベツに大根の炊き合わせ、それから肉魔人たち用にもいくつか並べて食べ始める。


 皐月さんは食欲は戻っているようだがまだ食が細く、それでも美味しいと食べてもらえてよかった。


 お腹も満ちてお茶で一息入れる。なぜか関係のないあたしが少し緊張気味だ。


「じゃあ答え、決まりました?」

「はい、三人共によろしくお願いします」

「どんな場所かも、どんな危険があるかもまだ未知数ですよ」

「それでも無力で非力な自分たちだけより、安全だと思います」

「真翔君はどうするんですか?」

「連れて行きますが、働かせていただけるか、もしくは学ぶ場があるかなどでそこは考えていきます」


 格好いいお母さんだな、凛として守りたい物を理解している。


「美沙希ちゃんもそれでええんか?」

「はい、十八までは母と共にできれば働き、そこからは探索者か正規職員か、また考えていきたいです」

「美沙希ちゃん、探索者も考えてるの?」

「絵里子さんのように女性を守れる探索者もいいなって思いました」


 いい笑顔で言われて、嬉しいような困るような。とりあえず皐月さんを見た。


「この子の将来はこの子の物ですし、気持ちもわからなくないので。まだ時間もありますし、これからまだ話し合いはすると思います」


 どこか苦笑した、それでも晴れやかな笑顔だ。全てじゃないにしろ納得はあるんだろう。だったらあたしが言えることなんて何もない。


「時間もあるしね、これからいろんな人見てまた考えていき」


 あたしはそう言って微笑むことしかできず。三人は荷造りやらをするために帰ることに。


「これマジックバック渡しときます、荷物はこれに入れたってください」

「そんな、これ以上は」

「これから物品とかどうなるかもわかりませんから、できるだけ持って行ってるほうがいいでしょ?」

「何から何まで有難う御座います」

「いえ、それでいつ移動できそうですか?」

「家は身内から借りてる物ですので、一日か二日もあれば全て終わります」

「そりゃ話の早い。では念のため明々後日(しあさって)に移動で大丈夫ですか?」

「はい、それで宜しくお願いします」


 深々と頭を下げる皐月さん。魔物もいるしと秀嗣さんが送っていくことになり、あたしはお兄ちゃんと話す。


「この後はどうすんの?」

「俺は一回高遠さんとこ行って話して、その後に恵子らの様子見て移動日にこっち来るわ」

「大変やな。ごめんな、ありがとう」

「あほ、メリットあるから動いただけや。ただこれからも子供やから、いい子やからってなんでも助けれるなんて思うなよ」

「うん、わかってる」


 本当にその通りだ。いま世界にはあんな子は溢れている可能性が高い。それ全てに手を差し伸べるだなんて、あたし達にできるわけがなく、何よりあたしの守りたいものはもう決まってしまっている。


「まあでも、今回はいいめっけもんしたと褒めとったるわ」


 あたしの気持ちに気付いてか、お兄ちゃんが言うからあたしも笑顔で返す。


「偉そうに言わんでくださいー」



 その後お兄ちゃんは組合の転移陣を使い帰って行った。また来なきゃいけなくてやっぱり少し申し訳ない。


 胡堂にも秀嗣さんにも気にするなと言われたが、司令塔として、生産者として、お兄ちゃんは本当に大変だろうなと考えてしまう。


 それからの二日は、あたし達は三人でダンジョンに入り、レベルのせいとあたしの勘で、強引に五階ボス部屋を見つけボスを倒しておいた。


 もう本当にね、五階じゃたぶんあたし達に意味がないんだよ。レベル上がりすぎなんだよ。でもできたら上げたいんだよ。あたしの願いは虚しく上がりませんでしたけどね。



 そして今日、昼前にテントを片付けていたらお兄ちゃんがやってきた。


「お疲れさん」

「早かったね」

「向こうでもやること特にないしな」

「お姉どう?」

「ダンジョン上層じゃ、弱いのばっかで数がおってもレベルが上がらんって切れてる」


 すぐその姿が想像できてつい笑った。


「笑いごとちゃうねんぞ」

「けど、親子連れてったらお兄ちゃん達も移動やろ?」

「顔合わせやなんかあるから俺らはたぶん明日やけどな」

「やったら地上間引きなるからまた変わるんちゃう?」

「四国出るまではそうでもないやろなあ」

「四国はまだマシなん?」

「ダンジョンそんな重なってるとこ少ないからな、扉ついてたとこもないし」

「九州まで頑張れ」


 そう笑っていたら三人がやってきた。


「こんにちわ、今日はよろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いします」


 朗らかな皐月さんと少し緊張気味の美沙希ちゃんと真翔君。


「二人共、環境が変わって大変やろうけど頑張ってな」

「はい、できること増やして頑張ります」


 なんとか笑顔を作る美沙希ちゃんと頷くだけの真翔君。あの威勢はどこに行った。


「ほんなら行きましょか。じゃあ俺は連れてくから、また拓斗と秀嗣は絵里子を頼むな」

「了解しましたー」

「わかった」

「ちょ、子供扱い酷くない」


 そんなあたし達につられるように親子も小さく笑って、少し緊張は解れたと思いたい。お兄ちゃんじゃあ行きましょか、と三人に向く。


「あの、子供たちを助けていただいた上、何から何まで本当に有難う御座いました」

「有難う御座いました」

「あ、ありがと」


 あたし達三人にしっかり頭を下げる二人と、どこかぶっきらぼうに照れた様子で美沙希ちゃんに頭を押さえられてる真翔君。


「もう気にせんで、それよりここからがまた大変やと思うし、無理せず家族仲良く頑張って下さい」


 あたしはそう言って三人を送り出す。何度も振り向きながら頭を下げる皐月さんと手を振る美沙希ちゃん。あたしもそれに手を振り返して、これからあの三人の未来が明るければいいなと思った。



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