お仕事ですよ
朝起きて、とりあえず寒くて布団からなかなか出たくない。それでもそういうわけにはいかないから、上着を着こんで車から出た。
二人は深夜に動いたからまだ寝ているようだ。仕方なし今のうちに温かい物でも作っておくかとあたしは動き出す。
「おはよう。いい匂いだな」
「おはよ。寒いし温かいもんのほうがいいやろ?」
嬉しそうに秀嗣さんが微笑み、続いて胡堂も起きてきた。
「おはようさん。なんか必要な物あるなら、神社に取り戻れるけどあるか?」
「特にないで、昨日は全然使ってないし」
「ならさっさと食べて移動してまおか」
四宮はここから一番遠く、それでも北上する形なのでルート的にも行きやすい。それでもしばらく時間はかかると言われ、昨日から移動ばっかりだなと思ってしまう。
「お前は一応ダンジョンで暴れたやん」
「一階は気分転換にもならんやろ」
「たしかに俺達じゃあなあ」
どこか苦笑めいた秀嗣さんの言葉にあたしは頷く。
「かと言って、今は階下に行くことより優先させることがあるからな」
「それはわかってるもん」
「ただ俺ら、どこでやるんがいいんやろうな」
胡堂の溢すような言葉に、あたしの中で一瞬浮かぶ場所がある。でもそれは正しくないし、言うわけにはいかない。
流れていく景色には特に破壊された場所や魔物の姿もなく、知らない場所だから、余計に世界が変わっていないような錯覚に陥りそう。
それでも少し気配を探れば弱い魔物はいて、しっかりと世界が変わったことを知らしめてくれる。
途中運転を変わりながら、それでも午前中には四宮に辿り着き、ここも組合の敷地は大きく取っているようだ。
それでも止まっている車は少なく、どこかがらんとした雰囲気。
「話は通っているのか?」
「月城さんが言うとくって言っててくれたで」
「ならフル装備?」
「べつに絵里子は待っててもいいで。どうせダンジョンか地上間引きの時はフル装備やし」
「ならちょっと早いが俺はテント立てておくから、簡単な昼の支度を頼めるか。車だったからそんなに腹は減ってないから軽くでいい」
「そうやな、なら俺はさっさと組合と話し合い終わらしてくるわ」
そう言うと胡堂はさっさと車を降りて行ってしまい、秀嗣さんも動き出す。あたしはリュックを漁りどうしようかと考え、適当に総菜や温めるだけの物を取り出していく。
テントが完成し、昼の準備も終わるころには胡堂も帰ってきた。
「夜中じゃなくても人が少ないから、いつでも転移陣の設置ができそうやわ」
「でも安全を取ったら夜中ちゃうの?」
「まあな、秀嗣も夜中でええ?」
「ああ、そのほうがいいだろう」
「ならこの後どうする?」
あたしの顔に胡堂は少し困ったような顔をするから、あたしと秀嗣さんは不思議に思う。
「ここは魔物が少し強めで、外に多くはないけど出てんねんと。それでも一宮に比べれば簡易の組合やしで、中々人が集まらんらしい。ダンジョン内部もそこまで探索されてない」
「ならダンジョン内の間引きでいいんちゃうん?」
「それがいいとは思うねんけど、一階の探索も終わってないんよなあ」
「まあ四宮と言うぐらいだ、最近できたんだろ?」
「そうやねん、やから未知数すぎてなあ」
少し考える胡堂と秀嗣さんだけど、だったら余計に決まってるじゃないか。
「やったら余計にあたしらが間引きするべきやろ? 高レベルの探索者として」
「間引きが一応は正式な依頼内容やもんな」
「そうだな、ただしあまり無理するなよ」
「この面子で無理させてもらえると思えへん」
あたしが言えば二人が笑った。
食べ終われば早速準備して外に出る。人が少ないから視線の数も多くなく、そこは有難かった。
四宮のダンジョンは土の洞窟型。うねうねとした通路と大小の広場。なのに小部屋は石造りの四角と不思議なつくり。ただ床は土で草が生えたりしてるから、採取にも向きそうなダンジョンだ。
地図を確認して正常に動いていることを確認。一階だしと今日の先頭は胡堂らしい。
「こっちのほうが強いのにずるい」
「一宮でやる言ったん自分やん」
「あれは人が多かったから」
胡堂の顔的に予想していたんだろう。にやにやしてるから鉄扇で殴ってやろうかと思ってしまった。秀嗣さんも苦笑しているし。
「珍しい素材以外は基本放置で、地図を作ることを優先するで」
「胡堂がそれでいいんならいいんちゃう?」
生産廃人がいいなら、あたしにも秀嗣さんにも文句はない。胡堂は軽くじゃあ行くか、と走り出した。
一階で出たのはいたちのようなウィータとゴブリン、それと耳の垂れた角兎。やっぱりこっちの魔物はまた違うんだろうか?
それでも思ったより広くはない、一階は夜には地図を完成させることができた。
「ずるくない? この時間までとか?」
「昼からやねんからこんなもんやろ?」
「次は俺が先頭だから、絵里子はまだだぞ」
揶揄いの色を含んだ二人の言葉に拗ねそうになる。今この中で一番レベル低いのはあたしなのに。
「せめてレベル上げさせろ、絶対お姉が上げてくるもん」
「まあ恵子さんやからな」
「そうだな、宏達、楽できてるだろうな」
「やったらあたしが先頭で、二人を楽させるからー」
笑う二人の背中を叩きながら言うけど、気にした様子もない。
あたし達は一度組合に行き、ある程度の素材と魔物、それから宝箱から出たポーション(微)などを売っておく。じゃないとすぐに荷物が増えるから。
その量を見て職員さんが驚いて、感激して、喜んで、となかなか大変そうだったけど、喜んでいたからまあいいかと思った。
魔物は解体してませんので、頑張ってください。
車に戻り順にシャワーを済ませ遅めのご飯となる。
「絵里子は今日も寝といていいで」
「わかった、一応気を付けてな」
「組合はすぐそこだからな」
疎外感ではないが、どこか寂しく思う自分もいる。それでも理由がわかっているから大人しくしていることしかできないけど。
そのせいか寝つきも悪く、うとうとを繰り返し、二人の気配が帰って来るまでしっかりと眠れることはなかった。




