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ただただただ。 ~変わらないもの~  作者: けー
一章 閉じ込められたのダンション

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新たな武器



「タンッ」


 と、軽い音を立て矢が飛びだす、それは真っすぐにスライムを目指し命中した。


 昨日色々考えて武器を変更した。メインは剣鉈(けんなた)と呼ばれる短剣よりも刃の厚みがあり、少し長くなったもの。ちゃんと腰に下げれるようになっている。


 剣鉈の逆側には何かがあったときのためにこれまでと同じく予備の短剣、今まで使っていたのは刃がもうぼろぼろだったので、いい機会だし引退となった。

 それも念のため余裕のあるポーチに入れてある。


 そして今使った弓、できれば遠距離攻撃が欲しくて悩んだんだよね。


 ダガーやナイフなどの投擲もいいんだけど、数が必要だし戦いが終わってから回収作業がある。

 弓矢も使いまわしはできるので回収作業はあるけど、必要ポイントが全然違って安い。それを考えれば未回収でもそこまで辛くない。


 それにメインで使うわけではないし、遠距離攻撃として考えるならあたしの場合は弓のほうが遠くまで届く。


 試しに様子見で動きの遅い一階のスライムを狙ってみれば、一発で倒すこともできた。たぶん偶然なんだろうけど。


 何度か他のモンスターなどもでも試して、練習しながら進んで命中率をあげていきたいところだ。

 鼠は直線に走ってくるだけだし、兎は着地したところを狙えば弓で倒せないかな?



 そんな感じで午前は一階、午後は二階で練習した。


 一階で手こずったのは鼠だった、ちょこまかと動いて小さい分当てにくい。逆に角兎は当てやすかったんだよね。飛び跳ねたあとの着地を狙えばなんなく倒せた。


 二階ではウリボアも避けながら何度か矢を射ることで倒すこともでき、ゴブリンは知恵があるぶんだけ上手く避けて、一度外してしまえば次当てるのは難しかった。剣鉈の練習にもなったのでよかったけど。



 二日ぶりのダンジョンだったけど、いつもより遅いペースながら成果は上々で、新しい武器に慣れることもできた。

 時間が空いたことで不安もあったから、体を慣らす意味でも丁度良かったのかもしれない。


 ゴブリン二匹が相手でも、弓と剣鉈で攻撃を受けることなく倒すことができ、あれなら三匹でもなんとかなりそうだ。油断は禁物だけど。


 明日からはやっと地下三階へ。何が起こるかわからないし、何がいるかもわからない。また気を引き締めて探索しないと。



 そう思いながら早めの寝支度を整え、おやすみと声に出し眠った。



 目が覚めて「おはよう」と声をかける。二匹大人しく並ぶが返事はない。

 そりゃそうだ、だって熊のぬいぐるみだもん。


 一昨日、色々買い足していた時に見つけてしまったのはこの熊のぬいぐるみ。白と茶色で一mに満たない大きさ。

 本当は買う気なかったけど、思ったよりも昨日うまくいったし、ポイントも貯まったし、ずっと一人だとやっぱり寂しいし、ほらずっと喋らないのはよくないっていうし、…この歳の女がぬいぐるみ好きで悪いか?


 誰にしてる言い訳かもわからないけど、ついつい買ってしまったのがこのぬいぐるみ。

 二匹買っちゃたのはどっちか選べなかったからだよ、可愛かったんだよ。




「あー、やっぱり二匹はやめといたほうがよかったかな?」


 目の前の死にかけのゴブリンのことではない、ぬいぐるみのことだ。

 ポイントで買える物は生活用品や必需品は安いんだけど、嗜好品や趣味などは高い。あの二匹もなかなかいいポイントだった。


 一応ポイントはまだ余ってるし、ちゃんと色々考えて買ったけど早まったかな? という気持ちもないわけではない。

 それにダンジョンから出られたときに、戦利品が熊のぬいぐるみって…。買ってしまってるし考えないようにしよう。



 あたしは倒したゴブリンをリュックに入れて先を急ぐ。今日から地下三階の探索だ。

 きっと新しいモンスターも出るだろうし、考え事なんてしていたらやられてしまうのは自分自身だ。


 準備運動もかねて戦いながら先へ進む。ダンジョンの新階層に行くってのは、やっぱりいつも以上に緊張してしまう。


 動きが硬くならないように確認しながら、二階を進めば階段の部屋に辿り着く。今のところ階段の部屋でもモンスターを見たことないんだよね。


 あたしは座ると水を取り出し休憩する。時間もまだ午前と早く、これなら三階の探索も十分できそうだ。


 防具には傷もないし武器もまだまだ綺麗だ。ポーションもしっかり持ってるし体調も特に悪い感じはない。

 よし、行こうか。



 地下三階も通路や小部屋は変わることなく、相変わらず迷路のように思う。

 出てくるモンスターも今のところウリボアにゴブリンだけ、出てくる数が増えているけど戦えないことはない。


 そうやって進んで行けば一時間もしないうちに頭の中で鐘が鳴った。これでレベルは8になったはず。

 モンスターがいないことを確認して、念のためその場で動きを確認。


 毎回思うけど自分では劇的な変化を感じないんだよね。レベルの低い頃はまだ目がよくなったり少し動きが早くなったかな、と思える程度にはあった。


 レベルが上がるにつれ感じることも少なくなって、ほぼ毎日動いてる分だけの地続きの変化だけな気がしてくる。格段に何かが上がったなんて思えないんだよね。


 剣鉈とか家にいたとき振るったことないから、今の自分と比較しようもないんだけど。あ、でも耳と目は最初に比べればかなり良くなったような気もしてる。



 そんなことをしていたら、通路の奥から音が向かってくるように聞こえてきた。まだ見えないけどゴブリンだと思う。

 距離を考えて弓を構える。音的に二匹? 三匹かな? できれば離れているうちに一匹ぐらい仕留めておきたい。


 弓を構え待ち伏せしているときは時間が長く感じる。緊張から弦を引く指が震えそうになる。それを抑え耳を澄ませ何も見逃さないように意識を集中する。


 タンッと軽い音を立て矢が飛ぶと『ギャッ』と鳴き声がした。あたしはすぐに二本目、三本目と構え打つ。

 二本目も当たったけど三本目は外した。距離が近くなったゴブリンに、あたしは弓から剣鉈に持ち替えて向き合う。


 一匹は普段道理の無手、もう一匹はナイフ持ってるよ。ゴブリンが武器持ってるの初めて見たよ。

 最後三匹目は二匹よりまだ少し遠く、肩と太もも辺りに矢が刺さりよろよろとこっちに向かってるのが見えた。


 弱っているのより一先ず目の前にいる二匹だ。武器持ってるやつのほうがやっぱり強いんだろうか。

 あたしは先に無手なゴブリンに狙いを定め走る。正直無手ならそこまで怖い相手ではない。


 腕を伸ばし引っ掻こうとしてくるゴブリンを躱し、すれ違いざまに剣鉈をゴブリンの首へ振り下ろす。

 短剣よりも重みのある剣鉈は振り下ろせば威力は大きい、ゴブリンは首からは血が溢れそのまま倒れていく。


 あたしはそれを最後まで見ないまま、武器を持ったゴブリンに捕まらないように奥へと走る。そのまま弱っているゴブリンも仕留め振り返った。


 ゴブリンは素早さはあるけど足はそこまで速くない。連携される前に二匹倒せたのはよかった。これで武器を持ってるゴブリンに集中できる。


 あたしを追い掛けてきたゴブリンと向き合う。その手にあるのはあたしの短剣よりも小さなナイフ、そんな武器でも持ってると向き合う威圧感が変わるような気がするから不思議。


 ゴブリンが威嚇の声を上げ距離を詰めてくる。ナイフだけじゃなく反対の手の爪も鋭く、なかなか危険だ。器用にナイフを握るもんだなゴブリンて。


 あたしは足を強く踏み出して、ゴブリンの後ろに回り込もうとした。でもそれをナイフを突き出し邪魔してくる。剣鉈でナイフを弾き隙を作って突こうとすれば、ナイフを持っていない手で引っ掻こうと腕を伸ばしてくる。


 あたしはいったん後ろに下がり体制を立て直す。ゴブリン自体は力も弱く、無手とそう変わりなく思う。ただナイフと爪を器用に使ってくる分やっかいだ。


 無手のゴブリンも両手の爪で戦うからそんなに違わない。ちょっと攻撃範囲と動きが違うだけ。

 自分に言い聞かせながらゴブリンと向き合う。武器の有無でこんなにも威圧感を感じ、やりにくいとは思ってなかった。


 ナイフを振りかざし襲ってくるゴブリン。あたしはそれを剣鉈で払い、そのままゴブリンのお腹を突こうと腕を突き出す。

 ゴブリンは今度は突き出されたあたしの腕を狙い爪を刺そうとしてくるが、それを狙って空いていた左手で予備の短剣を取り出し切りつけた。


「グギャア」


 大きな叫び声のようにゴブリンが鳴いた。あたしはその隙にゴブリンに迫るとお腹を狙い剣鉈を突き刺した。

 ゴブリンがナイフを振りかぶろうとしてももう遅い、あたしが剣鉈を引き抜き後ろへ下がれば、ゴブリンはお腹から血を流しよたよたと足をもつれさせるとそのまま倒れて動かなくなった。


 戦いが終わると自然と深く息を吐きだす。ゴブリンを回収しながら一緒に落ちていたナイフも拾い上げ、これはポーチに入れておく。できれば投擲に使えないかなと考えている。


 いつかは出てくるかなと思ってた武器持ちさん。今回はナイフだったけど、片手剣や槍なども出てくることは考えられる。ゴブリンもナイフ投げたりするのかな?


 長柄相手でも遠距離や先手が取れれば弓で弱らせることもできるけど、怖いのはあたしが気づく前に遠距離攻撃をしてきた場合だ。弓や投擲系はできれば会いたくない。


 その後も予想していた通りに片手剣や短い槍などを持ったゴブリンが出て、距離感が上手く掴めず攻撃を受けてしまうことも少し増えてきた。

 まだポーション(微)を使えば治る程度だけど、やっぱり怪我は少ないほうがいい。


 弓や投擲するものはまだいない。いつか出てくると考えてるほうがいいだろう。



 お昼を越えてから小部屋でお昼休憩。大きな怪我はなかったが、やっぱりいつもより地図の埋まりは遅い。疲労もいつもより大きい気がする。


 宝箱からは今のところ色違いのポーション三種類、青と緑の謎は今も解けていない。


 余り過ぎて部屋にもかなりの量が貯まってるんだけどな。使い道がわかれば嬉しいけど、試しで飲んでみるにはやっぱり少し怖い。


 青のポーション瓶を取り出して眺める。物語なら鑑定スキルなんかでぱっとわかりそうなものなんだけど。


「鑑定」


 と、呟いたところでなんの変化もない。

 まあそうだよね、そんな簡単な話じゃないよね。



 あたしは青のポーションをポーチにしまい、赤のポーション(微)を取り出すと飲んだ。ふっと疲れが取れて楽になる。すっかり栄養ドリンク扱いだな。


 立ち上がり装備の確認をする。行けるとこまで行きたいけど疲れを考えると無理は禁物かな。

 戻る時間も考えて今日は少し早めに上がろうかな。



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