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ただただただ。 ~変わらないもの~  作者: けー
六章 弱く脆く、そして強いもの

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嵐の予感



 結局あの後ダンジョンまでは一緒に行くことになり、摩央さんがすごいと思うのは、常に秀嗣さんの横にいることだ。


 にこにこと嬉しそうな顔でずっと喋りかけていて、さすがの秀嗣さんも少したじろいでいるように見える。それでも特に気にした様子のない摩央さんは、やはり熱烈でパワフルな摩耶のお姉さんだなと勝手に思ってしまった。



 装備は男性陣は基本盾と剣か槍、それに槌という要はハンマーなんかも試すようだ。女性陣が槍と弓であとは全員魔法を早く使えるようになりたいと意気込んでいた。


 装備は他にもいくつかお兄ちゃんは入れていたようで、ダンジョンに行きながらバランスも考えて使いやすい物を探すそうだ。どうしても地上の弱いのだとわからない、とお爺さんが言っていた。

 お爺ちゃん達のやる気の高さに本当に驚いてしまう。


 お婆ちゃんからは干し肉の作り方や保存食なんかの話が聞けて、あたし的にはいい時間になったけど。



 入り口でいつものようにタグを見せるが、その人数に驚かれた。まあここにこんなに人が来ることはなかっただろうから。


 ダンジョンに入る前に一応囲いの中を鑑定するが、特に魔物の反応はなく、一階を間引いた結果だと今は思っておきたい。


 そろそろ中に、と秀嗣さんに声をかけようと振り向けば、嬉しそうに秀嗣さんに話しかける摩央さんが目に入って、一瞬躊躇ってしまう。でもそんなあたしに気付いたのか秀嗣さんが口を開いた。


「中に入るか」

「あー、そうやね」

「じゃあ一緒に行きましょう、入ってすぐの広場までやったらお邪魔じゃないでしょ?」


 秀嗣さんにそう言って、あたしを見る摩央さんの目がお願いと言っている。摩耶が止めようとするが、確かにすぐは広場だったはずだ。なら同じかと考えてから口を開いた。


「さすがに探索は一緒できませんけど、そこまでやったら」


 その一言で摩央さんの顔は喜びで溢れ、かわりにあたしはなぜか秀嗣さんの顔が見れなかった。


 あたしを先頭にダンジョンへ降りていく。気にして謝ってくる摩耶に気にせんで、と言いながら。そうしてればすぐに言っていた広場に出てくる。



「一応、左が少し楽やとは思うけど、徘徊型もおるから気をつけたほうがいいで」

「蜘蛛も出るんやったな?」

「うん、出る場所違うって言ってたから徘徊型やと思うし、どこに出るかわからん」


 たっちゃんと地図を見ながら注意点など言っていると、一瞬空気が変わりあたしは顔を上げる。


 たっちゃんたちは気づいていないみたいで、あたしの勢いに驚いているけど、たぶんあれは秀嗣さんの魔力の揺れだ。


 視線の先に摩央さんに何か言っている冷たい顔の秀嗣さんが見えた。何か言おうとする摩央さんを気にも止めず、こっちに向かってくる。


「どうかしたん? 大丈夫?」

「大丈夫だ、何もない」


 たぶん普通にしてるんだろうけど、濃い時間を一緒にいた仲だ。何かを抑えようとしている秀嗣さんぐらいわかる。

 けどそれを今言ってもたぶん答えてはくれない人だと言うことも。それにこれからダンジョンだ。


「わかった、なら進もうか」


 その言葉に秀嗣さんは頷いて、たっちゃん達に別れをつげてあたし達は先に奥へと進んで行く。


 秀嗣さんは元々喋らないほうだけど、今日は特に無口だ。たぶん自分の中で感情を落ち着けようとしているんだろう。その関係か、できれば先頭を行きたいと言われたから素直に任せておいた。



 一階の奥、二階へ続く階段前で一度休憩を挟む。


「ほんま大丈夫? 何があったん?」


 今日の秀嗣さんの戦い方はいつもの美しさはなく、どこか苛立った荒々しい物。それは感情を映しているんだろう。


「いや、大丈夫だ」

「大丈夫に見えへんから言ってんの、あたしに言えんこと?」


 つい眉が下がり落ち込む。無理強いして聞きたいわけではないが、いつも話を聞いてくれている秀嗣さんの力にはなりたい。


「無理して聞きたいわけじゃないけど、言って楽になることあるって秀嗣さんも言ってくれてたやん」


 そんなあたしに気付いた秀嗣さんが困ったように頭を掻いた。


「あー本当に大丈夫だ、少し無神経なことを言われてしまってな。心配させてすまなかったな」


 困ったように言う秀嗣さんはいつもの秀嗣さんに戻っていて、あたしを見て眉を下げ苦笑いを浮かべている。


 その秀嗣さんに安心して、あたし達は二階へと進んで行った。



今晩21時もう一話投稿します。

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