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ただただただ。 ~変わらないもの~  作者: けー
六章 弱く脆く、そして強いもの

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いつもと違う時間

遅くなりすいません(^^;)))



 座席を広げ薄いマットを引けば、質のいい物なのか寝心地がよく、お兄ちゃんお手製の魔石使用の明かりは室内灯と遜色ない。

 後方の仕切りカーテンを開けておけばそこまで狭さを感じることもなく、後方もしっかりした鍵がかかるから、そこまで心配になることもない。


 車内の中も身長の有る秀嗣さんが普通に座ることができ、たぶん安いカプセルホテルなんかより快適だろう。



 寝るにはまだ早い時間だ。秀嗣さんは持ってきていた本を座って読んでいるし、あたしも何冊か持ってきている物を寝転んで開くが、なぜか集中できない。


 普段ならこの時間は生産をしている時間だ。あたしとしては体力的にも大丈夫だからダンジョンに行きたいけど、こっちに来るときに夜はダンジョンに行かないことをお姉に約束させられ、お兄ちゃんにも休むことも大事だからと言われている。


 秀嗣さんも二人に賛成のようで、一応言ってはみたけど普通に休むことの重要性を諭された。



「つまらないか?」


 そんなあたしに気付いてしまったんだろう、苦笑気味な声がかけられた。


「あー、と言うより普段はまだ生産とか家事とか何かしらしてるから」

「絵里子はよく働いているからな、たまにはのんびりするのもいいと思うぞ」

「普段から結構のんびりしてるで、お兄ちゃん達のほうが忙しそうやもん」

「確かに宏と拓斗は細工場が住処みたいになってるからな」


 思い出したのか秀嗣さんが笑う。お兄ちゃん達はあたしに細工場を拡張させ、広げたスペースにベットマットを持ち込んで、いつでも仮眠可能にしてしまった。

 コーヒーメーカーと小さな冷蔵庫まで完備で、住処と言っても間違いないだろう。


「それでもあいつらは仕事と言うより、楽しんで自分のためにやってるようなもんだからな」

「妹の血を素材と言い切れるお兄ちゃんやからねえ、もう病気に近い気がしてる」


 あたしの言葉に少し驚くと苦笑した秀嗣さん。人工魔晶石以外にも何かできないかと考えてるお兄ちゃんを知ってるから、否定する言葉がないんだろう。


「逆に絵里子は誰かのために何かしてるほうが多いだろ?」

「そんなことないよ? 智さんのおかげで男性陣の洗濯物とか減ったし」


 洗濯物はこの籠に入れといて、とお兄ちゃんに説明されていただけの智さんが、あたしにその全洗濯物をさせてることを知ったあと、微笑みながら姫様に下着を洗わせるなんてとお説教を始めたときは驚いた。


 あたしとしてはお兄ちゃんがいたから、今更男物の下着だとか気にするような人間でもないし、と思ったけど、智さんの気迫に誰も何も返すことなんてできなかった。


 そこからは男性陣は当番制にして洗濯してるらしい。のり君にはお姉と夫婦なんだからそっちでどうぞ、と冷たい智さんの微笑みだった。


「それでも料理や掃除なんかは絵里子じゃないか」

「片付けとか掃除は手伝ってくれてるやん? お兄ちゃんと胡堂にも見習ってもらいたいとこやね」


 家事でほぼ何もしていないのはこの二人だろう。秀嗣さんや智さんやのり君は何かと洗い物や掃除など手伝ってくれるし、お姉はたまには料理を頑張ってる。


「あの二人は我が道を行くと言うか、天才肌に近い気がするからな」

「よく言いすぎやで。あれはただのオタク気質なだけ。のめり込んだら突き詰めたいだけやもん」


 あたしから苦笑がでる。確かに作ってる物や結果を見れば天才かと思いたくなるけど、それに対してあたしの被害が酷い。

 あの素材取ってこいとか、これ処理しとけだとか、片手で食べれる物作れだとか、言い出したらきりがない。それでもこっちに来るのに合わせて、睡眠時間削って色々作ってくれたことには感謝してるけど。


 思い出してるのかくすくすと楽しそうに笑う秀嗣さんを見ていると、御重を届けに来てくれた摩央さんを思い出した。


「どうかしたか?」

「え? いや、なんでもないよ?」

「俺の顔をじっと見ているから、何かついてるのかと思ったぞ」


 この人の微笑む優しい顔も、よく見るようになったな。


「また何か考え事かと思ったぞ? 絵里子は意外と一人で抱え込むからな」

「そ、そんなことないよ、基本なんも考えてないもん」

「そうか? 俺としてはもっと頼ってほしいんだがな」


 自然な優しい微笑みでそんなことを言うから、なんだか少し照れてしまう。


「いっつも頼ってるよ、こっちに来るのだって付き合ってもらってるし」

「それは俺が無理矢理付いてきたようなもんだろ?」

「秀嗣さんがおるってだけで安心感あるもん」


 本当にそう思うからあたしは素直に言葉にする。今度は秀嗣さんが照れたように顔を背けた。秀嗣さんも褒められなれてないのか、耳が少し赤くなっていて意外な一面を見た気がした。


 つい、悪戯心でこっちを向いてほしくなる。


「秀嗣さん?」

「あー、そうゆうことは無防備に、誰彼構わず言うことじゃないぞ」

「さすがにあたしもなんも思わん相手にそんなん言わんよ、お兄ちゃんらもそうやけど、秀嗣さんに胡堂も智さんも、みんなもう家族みたいな感じやもん」


 その言葉に秀嗣さんが少し目を開き、その後大きく息を吐いてなんとも言えない笑みをした。



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