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ただただただ。 ~変わらないもの~  作者: けー
六章 弱く脆く、そして強いもの

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驚きの農家



 次の日目覚めると秀嗣さんの姿はなく、カーテンの隙間を開け外を見ると、素振りをする秀嗣さんの姿があった。


 それを真面目だなあと思いながら、あたしも朝の支度を済ませてご飯でも作ってしまおうかと動き出す。


 車中泊のわりにゆったりとした寝床と静かさで、しっかり寝れました。初期のダンジョン生活とは比べようもないぐらいの快適さだ。


 自分の支度をしながら作り置いておいたサンドイッチをホットサンドメーカーに入れスイッチを押す。魔石様様、お兄様様だ。


 魔石を電気に変換する箱に、コンセントをそのままさせば使えるんだから、便利でしょうがない。

 家の台所にもすでに置かれみんな使ってるようだ。


「秀嗣さん、朝ご飯にしましょ」


 支度を終え、粗方焼きあがったところで声をかける。


「朝からすごいですね、このあと大丈夫ですか?」

「ああ、達也君達が登録してる間に一度シャワーを使わせてもらう」

「わかりました、昨日ちゃんと寝れました? もしかしてあたし寝相でも酷かったですか?」


 秀嗣さんの顔が少し疲れているように見えてつい聞けば、秀嗣さんは苦笑した。


「いや寝相は悪くなかった。ちゃんと寝たから大丈夫だ」

「ならいいんやけど、無理せんでね? 辛かったら言って」

「本当に大丈夫だ。早く食べないと達也君達が来るんだろう?」


 そう言われてしまえば確かにそうだ。それでも気になって秀嗣さんを観察しながら朝ご飯を済ませた。


 簡単な片付けなどを終わらせる頃には、タイミングよくたっちゃん達がやってきた。車三台できたようだ。



「おはよー」

「おはようさん、結構多いんやけど大丈夫か?」

「誰が登録すんの?」

「俺側はおとんとおかんと爺ちゃん。摩耶側が、お義姉さんとお義父さんとお義母さんと祖父母両方」

「お、お爺ちゃんらも?」

「俺の婆ちゃんは今は施設から家に戻っとるけど、さすがに無理させれんからな。ただ正式オープンまでに魔物肉食べて体力付けてダンジョン行くとか言ってる」


 その言葉に驚いていたら、ぞろぞろと出てくる人数と年齢層の高さにまた驚く。けどまあ多少は戦えたほうが安心は安心かと頭を切り替える。

 たっちゃんと喋ってるとたっちゃんのおじさんがこっちにやってきた。


「今日は色々やらせてもらえるって聞いてます、ほんまに有難う」

「こんな世の中です、気にせんで下さい。ただ他には言わないでくださいね」

「それはもう、絶対に」


 たぶん代表としての挨拶だったんだろう。あたしは秀嗣さんに声をかけて組合にたっちゃんを連れて向かう。


「なあ、なんて説明したん?」

「絵里子達は神職で先にダンジョン経験した一人やって、ただ組合職員にはならず魔物を倒すことを優先した人って」

「よおそんなん考え付いたな」

「拓ちゃんに相談した」

「やっぱりか」


 苦笑するたっちゃんに笑って、組合の中に入って行く。


「すいません、昨日言ってた登録なんですけど、もう大丈夫ですか?」

「はい、何名ですか?」

「八人なんです、多いんですけど」

「大丈夫ですよ、説明なんかもして大丈夫ですか?」


 たっちゃんを見ると頷くからお願いしとく。



 職員さん達が手分けしながら登録と説明をし、予行練習と言う割にはスムーズに終わった。


 あたしはその間に鑑定を使いみんなのレベルを見ていく。不思議なもんで皆さん1はあるんだよね。

 祖父母組にいたっては2と3だよ。


「なんでみんなレベル付いてるん?」

「昨日の話し合いのあと、近所で魔物探して倒してみたから」

「なに、やってるんですか?」

「みんなやってみなわからん言うし、ダンジョンの中は強めやって昨日言ってたやろ?」

「その結果が近所で弱いの探しなったんけど祖父母組は? お爺ちゃん二人とも3やし、お婆ちゃん2やで?」


 あたしの言葉に驚いているのはたっちゃんだけじゃなく、摩耶も驚いている。健也君だけが納得した顔でおずおずと口を開いた。


「畑してるとたまに出るんですよ。それにどっちの爺ちゃんも猟銃会入ってるんで、警戒で回ったり山に入ったりしてるんで」

「銃は効かんはずやろ?」

「罠に鼠とかかかってたりしたんで」


 何それ、農家すごすぎ。


「じゃあこの辺て、レベル持ち多いんちゃうん?」

「そうなるかもなあ」


 遠い目をするたっちゃんに言えば同意されてしまった。


「達也、みんな登録終わったがどうすればいいんや?」

「あー、じゃあ次、頼めるか?」

「レベルあるしやっちゃおか。見られたくないし、車に戻ってやろか」


 そう言い車に行けば、秀嗣さんはシャワーを片付けているところだった。


「今からか?」

「うん、みんなもうレベルあったし」


 さっき聞いた話を説明すると、秀嗣さんは驚くよりも感心していた。


「やはり自然が近いほうが逞しいんだな」

「確かに、爺ちゃんたちなら喜んでウリボアやりに行きそうや」


 猪っぽいですもんね。


「人数もいるし、俺も手伝うからやってしまおう」

「それやねんけど、摩耶たちもできへんかなって思ってんねん」

「あたしらですか?」


 不思議そうに首を傾げる摩耶と少し怯える仕草のたっちゃん。


「胡堂もできたから多分できると思うねん。魔法を使える人は増えたほうがいいやろうし」

「確かにそうだな。すでに使えるのが三人いるんだ、やるだけやってみたらいい」

「教えるけど、これからも力を悪用する人とかも増えると思うから、たっちゃんらが教えるにしても気を付けてな」


 あたしの言葉に真剣に頷いてくれた三人。この三人だからあたしも教えようと思った。



逞しさが違うよね

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