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ただただただ。 ~変わらないもの~  作者: けー
六章 弱く脆く、そして強いもの

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報告



 『お兄ちゃん、初日終わりました』

 『どないやー』

 『一宮より強いと思う。武器持ちゴブが基本二匹とかベビウルフとか。ゴブ三匹のときもあるしな』

 『マジか、ちょっと厳しいか?』

 『奥に蜘蛛も出るらしい、まだ遭遇してないけど』


 お兄ちゃんから考え込む雰囲気がした。


 『ただ採取系の素材は多い。薬草類も茸も、魔鉄も出た』

 『一階やろ?』

 『うん。それに宝箱はステータス強化の指輪とマジックバック出ました。どうしましょ?』

 『美味しいはかなり美味しいな。魔石は?』

 『たぶん小が六割ってとこ』

 『秀嗣もいいならマジックバックは組合に寄付して情報渡したれ、それで宣伝しろと。ただそれなりの装備と数人パーティー推奨って』

 『魔石とか素材もそれなりに渡すで? あたし暫くこっちおるし』

 『無理ない範囲で渡したれ。怪我とかは』

 『ローブ使って巫女防具やからないよ。そうそう』

 『なんや?』

 『たっちゃんらのこと、ありがとお』


 一瞬お兄ちゃんが止まった。それでもすぐに普通に返してくる。


 『俺ももう知らん仲やないからな。まあ明日も頑張れよ』


 そう言うと念話を終わらせるお兄ちゃん。あたしもきっと面と向かっては言いづらかっただろう。


「宏はなんて?」

「秀嗣さんもよければ、バックとか手に入れたものはここに寄付して宣伝に使ってもらえって。ちゃんと装備と複数パーティー推奨の注意もして」

「そうだな、ここは人が多く入ったほうがいいだろうし、そうするか」



 蜘蛛の情報が知りたいのもあり、二人で組合に行き素材と魔石、それにマジックバックを寄付しといて、ちゃんと宣伝利用と注意は忘れずに。

 ちゃんとすればこの二ノ宮ダンジョンは稼げるダンジョンだと思う。と伝えることもしといた。


 職員さん達は真剣にあたし達の言葉を聞き、涙するほど喜ばれた。本当に不安だったんだと思う。


 蜘蛛についてはたまに出くわすぐらいで、まだそこまでわからないらしい。同じ場所で見つけるわけでもないと。

 徘徊型の可能性を考えると少し厄介かなとは思うけど、なんとかなるだろう。


 念のために、もしかしたら登録をお願いする人がいるかもしれないことを伝えて、あたし達は車に戻った。


 おじさんたちから貰った野菜もあるが今日は初日だし、大量の乾燥野菜とお肉で鍋っぽいものにする。最後に〆に乾麺を入れれば二人だし十分だろう。これならお鍋一つで終わるし。


 すでにシャワーの道具を片付けてくれていた場所で、簡易コンロを使いながら作っているとたっちゃんから通信が来た。


 『ほいほい、どうした?』

 『明日、俺らの家族登録させてもらっていいか? それとできれば魔法も使えるようにしてほしいんやけど』

 『登録はいいけど、魔法はみんな使えるかわからんで? それと契約書は書かんけど、絶対にあたしの存在を言わんってそれだけは強く言っておいてよ』

 『わかっとる、そこはちゃんと言うてある。みんなも善意ってのわかってるから大丈夫や』

 『たっちゃんがそう言うならいいで。明日?』

 『試しでダンジョン行く気やし、朝にいいか?』

 『了解』


 そう通信を終わらせたときに、丁度組合の職員さんがこっちに来るのが目に入った。


「どうされました?」

「こんなものですが、食べてください」


 差し出されたそれなりの量のおにぎり。のりが付いてるのとついてないの、具が混ぜられてる物など色々ある。


「いえ、そんな勝手に来てるんですから、気を使わんでください」

「魔物の間引きに情報まで教えてもらって、今日だけでもあたし達にとっては助かってるんです」


 本当に嬉しそうに言うから、あたしは素直に受け取ることにした。


「有難う御座います。あ、それと明日登録をお願いしたい人たちがおるんですが? ちょっと人数が多いかもしらんのですけど」

「わかりました、予行練習も兼ねて行いますので不手際があったらすいません」


 職員さんのそう言うと組合に戻って行った。


「これ、貰っちゃいました。おじさんんたちからも野菜とかお米かなりの量貰っちゃって」

「食材を持ってこなくてもどうにかなったかもな」


 そうですね、と答えて鍋の様子を確認する。


「もうちょいでできるんで、先におにぎり食べちゃっててください」



 食事も終わり後片付けなんかも手伝ってもらい、少しゆっくりした時間。車の窓にはすべて智さんが制作したカーテンがついて、車内を除かれることも中から光が漏れることもなく、気にせずに魔道具の明かりをつけることができる。


 車には念のため魔物避けの結界石がいくつかつけられるようにもなっていて、後方もロックをかけてしまえば意外に快適な個室となる車内。

 これ売り出したら探索者には大人気になるだろうな。


「そろそろ寝床を作るか?」

「そうやね、先にそうしちゃおうか」


 そう言っても簡単な物で、座席を広げて薄いマットと薄手の毛布などを出すだけだ。


「あれ? 秀嗣さんの毛布は?」

「俺は前で寝るから」

「いや、それ体格的にもあたしが前でしょ?」

「駄目だ、絵里子は後ろだ」

「てか、これやったら二人寝れますよ?」


 あたしの言葉に秀嗣さんが止まった。それに首を傾げるあたし。


「明日もダンジョンて考えたらちゃんと寝たほうがいいし」

「い、いや、さすがに二人では」

「え? なんで?」


 あたしの言葉に固まった秀嗣さん。そこでそうだったと思い直す。


「あー、胡堂とかたっちゃんとかとオール明けで雑魚寝とかありましたし、秀嗣さん的にあたしとは嫌でしょうけどすいません」


 胡堂やたっちゃんなど今更気にしないから忘れていた。これが通常の反応か。

 秀嗣さんの顔が困ったような何とも言えない物になる。


「それは信用と取っていいのか、男と見ていないのか」


 小さく漏らした声が聞こえなくてあたしは、え? と聞き返すが秀嗣さんは何でもないと言うだけだ。


「なら、せめて仕切りか何か作るか?」

「別にいいでしょ? あたし居間で寝てて寝顔とか見られてますし」


 秀嗣さんが手を頭に当て苦い顔をする。


「どうしました? 体調悪いん?」

「いや、大丈夫だ。なら絵里子の言葉に甘えさせてもらおう」


 その後は明日も早いと言いながらもぽつぽつと喋り、秀嗣さんと初めて二人で過ごす不思議な夜だった。



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