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ただただただ。 ~変わらないもの~  作者: けー
六章 弱く脆く、そして強いもの

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気遣い



 そうこうしていたら、見たことあるおじさんと見たことないおじさんがたっちゃんの車から降りてきた。


「そうそう、こっちが俺のおとんな。それと摩耶のお義父さん」

「達也達がお世話になったそうで、お礼が言いたくて家族代表でわたしらが来ました」

「肉や薬なんかもようさん貰って、ほんま有難う」

「いえそんなん気にせんでください。たっちゃんとは長い付き合いですし、摩耶も可愛い妹みたいなもんですから」

「いえいえ、爺ちゃんらも魔物肉食べるようなってから元気になって、最近は飛んでも膝が痛くないって言うんですわ」

「みんな若返ったみたいに元気なって来てね」


 その言葉で秀嗣さんを見るけど、やっぱりこっちもわかってない。ならたっちゃんに聞くしかない。


「どうゆうこと?」

「いや、それがわからんねんけどそうやねん?」

「何? 魔物肉を食べると元気なるの?」

「オークが一番実感するって言ってる」


 どうゆうことだ? 下の強い魔物になるほど魔素を含んでいるから? つい考えこんでしまったら話しかけられ思考を止めた。


「おかげでわしらも探索者登録でしたっけ、しようと思うんです」

「爺ちゃんや婆ちゃんは辞めてほしいんやけど、元気が有り余ってやる気なんですわ」


 そう言って豪快に笑うおじさん達。どうしたもんかしらね?と思おうけど、聞いてみたらすでに畑で鼠を倒したりしてるそうな。ならいいんじゃないかな?

 あたしは確認でたっちゃんに小声で話しかける。


「あたしの連れなら必要なら登録させてくれるらしいけど、どうする? ただ施設はまだ使えへんから売買は無理やけど」

「何だったらいくつか持ってきてる武器も渡すか? 宏はこれも見越して多めに入れてたぞ」

「さすがお兄ちゃんと言っておこう。で、どうする?」


 あたしと秀嗣さんの言葉に腕を組み悩み始めたたっちゃん。その間にあたしはおじさん達に話しかけられる。


「これ畑で作った野菜と米、お礼にはほど遠いけど持って行って。内緒のバックに入れてるから」


 内緒って言っちゃった。たっちゃん達に渡したマジックバックだ。


「お肉を追加で渡そうと持ってきてるんで、持ってきますね」


 そう言ってとりあえずその場から逃げてみた。車の中でたっちゃんに渡す用のバックを取り出してると、摩耶とたっちゃんが近寄ってくる。


「決まったん?」

「武器とかほんまええんか?」

「お兄ちゃんが言うてたみたいやし、聞いてんのは秀嗣さんやから秀嗣さんに聞いてみて。ただたぶん防具は初期の物やと思うで? 差がばれんように」

「それで十分やろ」

「まだダンジョン行ってないからわからんけど、ここのちょっと強いかも知らんねんよなあ」


 あたしの言葉で二人が固まった。


「職員に聞いたらベビウルフと武器持ちゴブ、それに蜘蛛。蜘蛛は魔法ないと辛い気するし。行ってみなわからんけどな」


 そう言いながらお肉の入ったバックを渡しておく。受け取りながら考えるたっちゃんは真剣な顔をあたしに向けた。


「悪いんやけど、家族みんなの登録と装備お願いできるか」

「達也! 何言ってるん?」

「今俺らの家に一番近いダンジョンはここや、近所で弱いとは言え魔物見ることも増えてきとう。ダンジョンの中の魔物が強いってことはこれからもっと強い魔物が外に出てくるかも知らん」


 珍しくたっちゃんがマジだな、と思ってしまうのは付き合いの長さのせいだろう。摩耶もそんなたっちゃんに押され気味だ。


「俺らがおったらいいけど、もしおらんかったら? 俺と摩耶と健也だけで倒せんほど強かったら? そう考えたらみんなある程度、自分を守れて逃げるぐらいできてるほうがいいやろ」


 摩耶にそう言い切ると、たっちゃんは真剣な顔をあたしに向け頭を下げた。


「頼む」

「頭上げ、そんな付き合いちゃうやろ」


 そう言って軽く頭を叩けば笑ってくれたから、あたしもなんとか笑うことができた。


 家族を守りたいのは誰もが一緒だ。それが痛いほどわかるから、謝りそうになる言葉をどうにか飲み込んだ。


「秀嗣さん、お兄ちゃんが言ってたバックどれ?」

「ああ、ちょっと待ってくれ」


 そう言って場所を変わるとすぐに出してくれた。


「これをこのまま渡していいと言っていた。俺らにできることが少なくてすまないと」

「そんな、めっちゃやってもらってますよ」

「望むなら、絶対に口外しないことを条件に、絵里子の魔力感知もしていいと」


 たっちゃんと摩耶が驚きで動きを止めた。それはあたしも同じで、秀嗣さんがあたしを見て苦笑する。


「達也君達に何かあったら絵里子が辛いだろうと」


 あ、やばい。何それ。そんなのあたし聞いてない。こんな時になんてずるいんだ。人の血を素材としか見てないようなお兄ちゃんのくせに。


 つい、鼻の奥がツンとする。今日はあたしの涙腺を攻撃する日なんですかね。


「あ、有難う御座います!」


 たっちゃんと摩耶が頭を下げるから、おじさん達は何事かと気にしている。


「それはまた宏に言ってくれ、俺じゃない」

「いえ、秀嗣さんにもダンジョンのアドバイス貰ったり、みんなにずっと世話なってます。その上でここまでしてもらって、俺、どうお礼したらいいか」

「気にするな、お互い様だ。なあ絵理子」


 急に振られて、まだ落ち着かない心を無理矢理鎮めて、あたしは笑顔で答えた。


「うん、お互い様や。気にすんな」

「でも、」

「そんな気使う仲ちゃうやん? 次、チョコ菓子で手を打つわ」


 そう言えば、たっちゃんは一瞬止まって破顔した。


「しゃあないから増量しとくわ」



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