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ただただただ。 ~変わらないもの~  作者: けー
一章 閉じ込められたのダンション

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ニヒルにはなれない



 何度か戦いを繰り返し、小部屋もいくつか発見した。宝箱は変わらず赤か青のポーションばかりで、そろそろ大きな変化が欲しいところ。

 今のところ出てくるのは鼠と兎とウリ坊だけ、やりにくさはあっても危なくなることはまだない。


 耳を澄まし気配を気にしながら進めば、小部屋の入り口が見えた。懐中時計を確認すればお昼にはまだ少し早い。

 時間のわりに疲れて感じるのは、たぶん緊張からだろう。あの小部屋で早いお昼休憩にしよう。



 壁に背をつけて中を窺うと、声が出そうになり咄嗟に手で押さえた。一度顔を引っ込めて深呼吸する。


 信じてないわけじゃなかったけど、あれこそまさにダンジョンモンスターだ。


 あたしはまた気づかれないように中を覗き、見えてきたのは二本足で立ち、鋭い爪と大きな口と耳。着ているのは汚れた腰ミノ一枚で、肌は全身くすんだ緑のモンスター。


 様々なファンタジーの定番、ゴブリンだ。


 いたら嫌だなと思っていたらいたよ。しかも宝箱の前に。

 身長は小さく、あたしの腰ぐらい? 武器は持っていないようだし、一匹だ。だったらこれからのことを考えると、ここで戦っておきたい。



 あたしは武器を確認し懐中時計を撫ぜる。そのまま中を窺いゴブリンが背中を向けた瞬間、走りゴブリンに向かう。


 できるだけ足音は立ててないはず、なのにゴブリンはこちらに気づき短剣を避けようとする。


 初めて近くで見たゴブリンは、どちらかと言えば醜悪で可愛いなんて思えない。『グギャグギャ』と鳴き、目つきも悪い。


 物語では色々なゴブリンがいるけど、目の前のゴブリンがあたしを見て、にやりと笑った気がするのは偶然だと思いたい。けしてあたしが女だからだとは思いたくはない。


 しかしウリ坊とはまた違ったやりにくさだ。両手を上手く使ってあたしの攻撃を防ぐし、隙があれば爪だけじゃなく鋭い歯で噛みつこうとしてくる。


 反応できてるけど動きも思ったより素早い動き。有難いのは力負けしてないことぐらい。


 何度かゴブリンの爪が胸当てや籠手に当たる。痛みがないのでやっぱり防具って大事。あんな汚そうな爪で傷つきたくない。


 不意にゴブリンが小部屋の入り口を見た。今まで追加でモンスターが来たことはなかったはずなのに、あたしはそう思いながらつい入り口を見てしまう。

 その隙をゴブリンが逃すはずもなく、あたしの短剣を奪うように叩き落し足で遠ざける。


 小狡いよ、ゴブリン。

 にやりと笑ってもかっこよくもないよ、ゴブリン。


 そんなこと考えてる余裕なんてない。あたしは腰のポーチに手を伸ばし、予備の剣を取り出そうとする。けど焦りからか、ポーチがなかなか開かない。


 やばいなんて言ってられない。ゴブリンの爪を躱しながら遠ざけられた短剣の位置をなんとか確認するけど、ゴブリンを避けながら短剣に近づけないかと思っても、ゴブリンがそれを許さない。


 知恵もあるようで、短剣から遠ざけるように動いてるよこのゴブリン。


 落ち着けと心で繰り返しながらポーチを触る。ゴブリンから目を離せないので、チャックの位置がわからない。


 じりじりとゴブリンが近づいてくる。あ、嫌や。マジで嫌や。


 そう思った瞬間、足が出た。


 蹴り出したその足は見事ゴブリンのお腹に当たり、意外と軽く飛んで行き、壁に当たって落ちた。


 飛んで行ったことに驚いて、一瞬止まってしまう。よろよろと立ち上がろうとするゴブリンに気付いて、急いで短剣まで走った。


 あとは呆気なく終わった。弱ったゴブリンが最後に懇願するように『グギャグギャ』鳴いたけど、あたしはゴブリン語わからないから。


 いつもより深い溜息が出る。さすがに焦ったし堪えた。


 ゴブリンは思った以上に知恵があるモンスターだ。見た目から惑わされることないけど。それでも最後の涙目と鳴き声には、やっぱりかなり堪えた。知恵があったしたぶんわかってやってるんだろう。


 あと短剣、予備がすぐ出せないのは駄目かもしれない。メインの短剣はズボンにつけるとこないし、いつも手に持ってるんだよね。

 できればすぐ取り出せるようにしときたい、帯剣できる何か魔晶石で探してみようか。



 反省すべき点は色々あった。剣もそうだけどゴブリンの知恵の高さ。あんなフェイントしてくるだなんて考えてもなかった。


 甘く見ていた気はないけど、緩んでいたのかもしれない。ウリ坊とも焦ることなく戦えていたから。


 ただ冷静に考えればやり辛さはあっても動きは見えていたし、たぶん落ち着いてやればあたしのほうが早い気がするんだよね。


 蹴ったときに思った以上に軽くてよく飛んだし、もしかしてそんなに強くない?


 そんなことを思いながら宝箱を開ける。中から出てきたのは緑色したポーション瓶。


 瓶の形は赤と青とまったく一緒、違うのは色が緑なだけ。青も何かわからないのにまた増えたよ。

 とりあえず緑のポーションはポーチに入れておいて、ご飯にしよう。



 血の跡は見ないように食事をする。いつもより気力が削られて、せっかくのショートブレットも喉を通りにくい。

 念のためのポーション(微)も飲んだ。それでも体は少し楽になってもやる気が上がるわけでもない。


 溜息が出る。まだお昼を食べたとこで、この階も全然探索できてない。こんな状態で部屋に戻れるわけにはいかない。


 こんなんじゃ駄目だ。両手で挟むように頬を叩けば思ったより大きな音がして痛かった。たぶん赤くなってるんじゃない?


 それでも気合は入ったはず。ウリ坊だろうがゴブリンだろうがやることは今までと一緒、ただ倒すだけ。


 ぐっと背伸びをして深く深呼吸、立ち上がって体の動きを確認してみるけど違和感もない。鎧も特に傷もなく、このまま進むことに問題はなさそうだ。ポーション(微)も余裕はある。


 まだ頬が少しじんじんとするけど、探索に戻ることはできる。気合も新たになうちに行けるとこまで行ってしまおう。


 今日の目標はレベルを上げること。あとは時間までに行けるとこまで行くだけ。宝箱もまだ見つけたいし、焦ることなく慎重に進んで行こう。





 あれから四日立って、ダンジョンでの生活も半月になる。地下二階の探索は初日以降、順調で今日で地図も埋まった。


 すでに階段も見つけているし、一階よりも早いペースだ。見つけた階段は、覚悟していた通りに下り階段。ひとまず地下五階ぐらいまでは覚悟済みなので、落ち込むことはない。



 食生活にも変化はあって、ウリ坊はウリボアって名前だった。


 お肉は食用で見た目鮮やかなボタン肉。脂が甘くて癖もないから、焼いても美味しいけど個人的には煮込みがお勧め。短時間でも柔らかくなってめっちゃ美味しい。


 ウリボアとゴブリンにも少しは慣れてきて、ウリボア肉と角兎肉が冷蔵庫にしっかりストックできてる。ゴブリンは最初から食べる気がしない、食用でもないし。


 ゴブリンも落ち着いて戦えば苦戦する相手ではなかったし、知恵はあるみたいだけど、それがわかってれば怖くはない。早さも力もあたしのほうが勝っているから、注意しとけば難なく倒せた。


 ただゴブリンが二匹で出たときは少し手間取った。連携して攻撃しようとしてきたから。


 防具もあったし動きもあたしのほうが早かったから何とかなったけど、多数になったら危険かもしれない。

 ただ攻撃さえ気を付けていれば、お互いを守るような行動はしないから、一匹ずつ落ち着いて倒せば何とかなりそうだ。


 けどゴブリンが一番驚かせてくれたのは、腰ミノが売却できたこと。すっごい安かったけど、あれが売れるとは思わなかった、安いけど。


 予備の剣は左右に帯剣するベルトを買って、ちゃんと腰に下げている。とっさに左手で剣を使うことが何度かあったので、出し入れもできている。

 にわか二刀流だけど盾を持つよりも性に合ってる気がするから、暫くはこのままいくつもり。



 レベルも上がって今は7、戦いやすくなったけど技術面で少し不安。


 元々運動部に所属したこともなければ武道もしたことない、武道をしてた姉の筋トレ横で見ていたぐらい。

 今のところ危なげなく戦えてると自分では思ってるんだけど、やっぱり少し不安だよね。


 ポイントもあるし『施設』で訓練室を買おうかちょっと本気で悩んでる。ただ訓練室で何ができるのかわからないから、手が止まるんだよね。



 あとはリュックタイプの大容量と書いていたマジックバックを買っておいた。十二日目の探索の中で、ポーチにウリボアを入れようとしたのに弾かれ入らなかった。


 たぶん容量一杯になってしまったみたいで、そのために仕方なく鼠を何匹か諦めてその日は戻ることになったから。


 リュックを買ってからはポーチには飲食系やポーション類、リュックには倒したモンスターと使い分けできるのも嬉しい。


 リュックは片腕だけ通すように担げば、戦いが始まってもすぐに下ろすことができて困ることもないし、買ってよかったと思ってる。


 しかし今日は頑張りすぎた。あと少しで地図が埋まりそうだったので、いつもより少し時間を延長して探索したから。


 部屋へ戻って気怠い体でお風呂を済ましたけど、どうにも食欲がわかない。


 明日からは地下三階に向かうつもりだし、装備の確認だけしてもう寝てしまおうか?


 少しでも疲れるが取れるようにポーション(微)を飲んで、さっさと布団に潜り込む。

 明日もきっと大変だ。きっと新しいモンスターも出てくるだろうし、気を抜かないようにしないと。そう思いながら眠りについた。



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