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ただただただ。 ~変わらないもの~  作者: けー
五章 非日常は突然に

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意味がわからない



 次の日のり君は早朝から鍛冶場に向かい、お姉は居間で本を積み上げノートに書き写しては、また本を捲り確認してる。お兄ちゃんに言われたのは基本だけだから、ただ書き写せばいいというものじゃないんだろう。


 あたしと秀嗣さんはダンジョンへ向かう。ポーションなどもしっかり準備して、強めの毒消しなども忘れてない。今日はお昼もダンジョンで取ることにした。見たことない物探すんだから、時間がいくらあっても足りない。


「魔物はそう変わってないな」

「そうやね、ただ少し強くなってるかな?」


 元々十一階の探索は進んでいない。ほぼ手付かずの状態で、出てくる魔物はボアとゴブリンメイジとホブゴブリンとオーク。たぶんまだ見ていない魔物もいるんだろう。


 だけどまだ今のところ中魔石は見つかっていない。解体しないことには正しいことはわからないけど、鑑定で魔力が濃いほうがいい魔石が出そうな気がする。


 それを思えば今日は帰ったら解体祭りか。とつい気分が沈むけど、秀嗣さんがそれに気づいて一緒にやってくれると言うからお礼を言っておいた。

 やるのはご飯の後にしましょうと約束して十一階を進んで行く。



「思ったよりも進みいいね?」

「そうだな、宝箱からポーション(下)が出るようになったしな」

「アクセサリーや装備類の確率も上がったし、不思議やなあ」


 魔物がいない小部屋でお昼を食べながら秀嗣さんと話す。入り口の警戒はちゃんとしながら。


 探索は驚くほど順調に進み、できるだけ奥を狙い進んだことで、宝箱から出てくるものがポーション以外も増えてきた。


「地上のダンジョンにも宝箱あるんですかね?」

「そこはまだ聞いてないな。ただここよりは強いはずだから、いい物が出るかもしれない」

「こっちで中魔石探すより、外のダンジョンのほうが早かったりして?」


 あたしの言葉に苦笑で返され、そろそろ探索に戻ろうかと二人立ち上がり小部屋を後にした。



 今日の探索の終わりは意外なことで終わらされる。タイミングを計ったように、戦闘を終わらせたときにたっちゃんから通話が入った。


 『どうしたん? ダンジョン内やから手短にな』

 『おま、探索者組合ってなんやねん!?』

 『は? 待った、なにそれ?』

 『ダンジョン省が作るって、会見してる』

 『ちょ、マジで待って。あたし今、地上に出れんから見れん』

 『出れんてどうゆうことや?』

 『あー、とりあえずダンジョン出てから掛け直していい?』

 『せやな、わかった』


「すいません秀嗣さん」

「気にするな、時間もそう残ってないしな」


 あたしの言葉から察していたのか、秀嗣さんはそう言ってくれる。けどまだ一時間以上あるから申し訳ない。あたしの気持ちに気付いたのか、自分も気になるから早く戻ろうと言ってくれ、手早く魔物を纏めるとリュックに入れていく。


 少し駆け足で転送陣まで戻り、さすがにこのままも嫌で急いでお風呂場に駆け込んだ。そのあと一息もつかずにたっちゃんへ通話。


 『で、どうゆうこと?』

 『第一声がそれかい、なんか大変なことなってんで』

 『あたし達の仲やからな、大変を詳しく』


 要領を得ないたっちゃんの話では、ダンジョンの数も溢れた魔物も被害状況も、何もかも正確に把握できない今、必要なのは意思と人手だと高遠さんは声高に言ったそうだ。


 ダンジョン省として、武器も防具も薬も足りなくなるだろう。と、だから人手が必要だ。ダンジョンに対応したそれらを作るノウハウも、全てではないが基本ならば知ることができる。


 それと共に素材も必要だ。魔物に対抗するには魔物の素材が必要だ。それを集めるためにも人手が必要だ。それも魔物を倒す、強い意思を持った人の。


 その勇気ある人たちを支え支持するため、ダンジョン省は新たに探索者組合を設立する。


 『んで、まず一つ目はお前んとこに近いダンジョン付近に作るって言ってた』

 『ごめん、意味わからん』

 『俺もや。一応探索者の条件は決めるって、二週間後ぐらいには動けるようにするってよ』


 よ。って言われても何を言っていいかわからない。


 『ただ会見には石田さんおったし、ちらっと宏さんと拓ちゃん映ってたで?』

 『はぁあ? 智さん辞めてるはずやで? なんでお兄ちゃん達が?』

 『スーツ姿やったけど、あれ間違いないと思う』


 困惑混乱、あとなんだ。とりあえずよくわからない。テレビが見たい。


 『あ、なんかおっさん達が会見乱入して、そんなもんは作らんとか全部嘘だとか言い始めてる』

 『え? 何それ、普通に見たい』

 『これどうなんの?』

 『いや、知らんやん』

 『とりあえず会見終わりそうやし、宏さんに連絡してみたら?』

 『そうするわ、なんかわかったら連絡するわ』


 そう通話を切った後、どうしたと見てくるお姉と秀嗣さんに応えることなくお兄ちゃんに念話。


 『会見てなに? 組合って何? 色々どうなっとん?』

 『なんで知っとんや?』

 『たっちゃんから連絡あった』

 『帰ったら説明するわ、忙しいから邪魔すんな』


 予想はしてたけど。そのまま胡堂に通話。


 …………。


 出やしねえ。




「あー! 意味わかんない!!」

「どうしたんさっきから?」

「お兄ちゃん達がわからん!」

「それはいつものことや」


 そんな簡単に流さないでほしい。秀嗣さんものんびりと落ち着けとお茶を淹れてくれた。


「なんか高遠さんがダンジョン省として探索者組合作るって会見してんねんて。そんで智さんもその場におって、お兄ちゃんと胡堂もちらっと映ったらしいで?」


 そう伝えた後の二人の顔は少し面白かった。 



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