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ただただただ。 ~変わらないもの~  作者: けー
五章 非日常は突然に

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できることとは



 そんな話をしてればみんな食べ終わり一息付けた。あたしは気になっていたことのため重い口を開く。


「なあ、死傷者は?」


 知ってる人たちの動きが止まった。お姉だけは首を傾げてる。


「そりゃおらんとは言えんやろ」

「地上でテレビ見てきていい?」

「まだあかん」

「ならちゃんと教えて」


 お兄ちゃんは「あーっ」と言いながら頭を掻いた後、覚悟を決めた顔になり、俺も見たわけじゃないからな、と前置きをした。


「はっきり言うとく、場所によってはきついで」


 その真剣な顔に小さく頷いて、お兄ちゃんの言葉を待つ。


 首都圏は壊滅ではないが、かなりのダメージを受けたらしい。異変に気付きすぐに取材に向かった者や、たまたま外にいた人などが最初の犠牲者と思われる。


 中には異変から通報し、駆け付けたレベルのない警察官なども犠牲になったと、総数は今のところわかっていない。


 実際になんとか逃げ伸びたテレビ関係者から、仲間が殺されるところを見たという情報や、空が白んでから取材に出たテレビ関係者の映像が、生放送でテレビに映されてしまい、そこは阿鼻叫喚のように道や壁につく鮮血と共に倒れて動かない人。それに千切れた体の一部なんかも映っていたそうだ。


「地方はそうでもないって言っても、全くないわけじゃない。横の県では死傷者出てるみたいや」

「ここは?」

「この県では三つ見つかってて、近いところからは魔物出てるみたいやな、ただ他二つの情報はない」

「通信関係はまだ生きてるんや」

「場所によるってのが正解やな、首都圏のは国と隊員にカフス売ってたおかげみたいなもんや」

「外の隊員さんはいつおらんくなるん?」


 あたしが言えばそれは智やな、とお兄ちゃんが智さんを見る。


「あの隊員は現在高遠に指揮権を任されてはいるそうです、ただそれもいつまでかわかりません」

「それって国がってことやんな?」

「はい、ここの安全性はもうばらされてると思ったほうがいいです」


 そりゃここを狙うだけの理由は十分だ。神の怖さを知らなければ余計に。だからと言っていつまでもこのまま過ごせるものでもない。


「念のため聞くけど、他の神職は?」

「ダンジョン省で身柄を預かり、無事を確認しています」

「ここから移動は可能?」

「場所にもよりますが、今ならば可能だとは思いますが?」


 少し考えるあたしを見て訝しむ智さんとお兄ちゃん。


「何、考えてんねん」

「待って、最後にのり君、武器どんぐらいできてる?」

「それなりに一通りはあると思う、けど隊員全部に渡せるほどないで」

「それでいい。あとはお兄ちゃんと胡堂が頑張ればどうにかなるかも」


 お兄ちゃんが嫌そうな顔をして、突然呼ばれた胡堂も意味がわからないと目で言ってくる。


「のり君の作った武器を魔道具化できん? 人工魔晶石か属性魔石使って、属性武器に。ただその石の魔力が切れたら終わりやけどな」

「たしかにそれは作れそうやけど、そっからは?」

「それを神職と一部のレベルが高い隊員さんに使ってもらう。まだ魔法は上手くいってないんやろ? 神職は旗印になってくれるし、悪いんやけど国の目もちょっとはそっち行ってくれんかなーって」


 お兄ちゃんは難しい顔で色々考えてるようだ。あたしはそのまま説明を続ける。


「ただ怖いのはその武器を使ってここが攻められたとき。のり君の作った武器は元々の性能がいいし、魔力の入れ方わかったら武器は再使用可能か確認できてないから」

「そこは渡すときに、タグの応用で石に血を貰って契約書交わせばクリアや」

「でもそれやったら誰かその場におらなあかんやん」

「そん時は俺が行くわ」

「あかんわ、何言ってるん? それやったら言い出したのあたしやから行くわ」

「ならお姉ちゃんも行く」


 遊びに行くんじゃないんだよ、お姉。あたしとお兄ちゃんが溜息を吐くと智さんが手を上げた。


「なら私に魔力操作を教えて頂けませんか?」

「智さんに?」

「契約書は魔インクで名前を書いてもらい、拇印を貰えば戻ってから固定することが可能です。あとは武器の所有者固定が神職でなくてもできるかが問題です」

「そんなん駄目です、めっちゃ危ないやん」

「そうや、智が行くことない」

「一応、元ダンジョン省職員ですし、隊員にもそれなりに顔は利きます。それに神職自ら行かれるほうが危険です」

「そんな立派な建前言って、絵里子に魔法教えてもらいたいだけやないか。まあいい、絵里子は智に魔力操作教えてから石に属性付与教えたって、のり君は追加の武器作れそうならお願い、残りは属性魔石追加で作って」


 お兄ちゃんの言葉で一斉にみんなが動き出す。あたしの前にはにこにこといい笑顔の智さん。別にいいんだけどね。


「今、レベルは?」

「恥ずかしながら5です」


 話しながら鑑定して魔力があることを確認する。少ない時間だったのにかなり無理してレベルを上げたんだろう。

 5でこの量なら、魔力が多いんじゃないだろうか?


「たぶん魔力も多いですしすぐ使えますよ。巡らせるんで感じて下さい」


 あたしは智さんの手を取り意識を向ける。反発はあるがやっぱり感情にも左右されるのか、抵抗は少ない。一度に送れる量も多そうだし、これは早そうだ。


「わかります?」

「はい、すごく温かくて気持ちいいですね」

「これを自分でも巡らせて、あとはイメージになります。最初は使う魔力量に注意して慣れてください」


 思った以上に簡単に魔力は巡り、すぐ速度が上げる。あたしが手を離すとどこか残念そうな顔をした智さん。


「最近、拓斗が目に魔力を集めて疑似的な鑑定ができると言っていて、羨ましかったんですよ」

「は? そんなことできるんですか?」

「宏や姫様のような詳しいものは無理ですが、魔力感知と識別くらいならできると言ってましたよ。秀嗣も拓斗から聞いて習得に励んでいるらしいです」


 初耳だよ、あいつ言えよそんなこと。


「これは内緒ですけど、姫様が無理したときのことかなり後悔してるようです」


 可愛いウィンクで口元に人差し指を立てる智さん。落ち込む暇なくくすりと笑ってしまった。


「気にしたら駄目ですよ。秀嗣が助かったのも本当ですから、それに二人も男ですからね」

「あたしとしては、対等の友達と仲間なんですけどね」

「二人にとってもそうだと思いますよ? それと男の矜持は別物です」


 そうゆうもんですか、そうゆうもんです。と言いながらあたし達は細工場に向かった。



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