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ただただただ。 ~変わらないもの~  作者: けー
五章 非日常は突然に

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緩やかな変化



 ダンジョン出現から一日経って、テレビはダンジョンのことばかりになった。たぶん全てのダンジョンをまだ発見できていないだろうと、お兄ちゃんも智さんも考えている。


 国民も最初ダンジョンに懐疑的で、タグを作らなかった人がタグを作りに殺到し、今は役所などどこも大忙しで対応中だと智さんがげっそりとした顔でお兄ちゃんに言っていた。


 神社前の隊員さん達もかなり数が減り、ダンジョンの内部確認に行ってしまったようだ。レベルもあるし優先的に神社の武器も支給されていたから、大丈夫だと信じていたい。



 国の会見では懐疑的だった人たちも、実際にできたそれを見れば、今度は国民の保護や保証について争うばかり。


 ダンジョンは場所を選ばずに、ビルにめり込むようにできた物もあったようで、土地はどうなるとか言っている人もいるようだ。そんな場合ではないと思うんだけど。



 ダンジョンからは今のところ魔物はまだ出ずに静かなもの。ただ繁華街や開発が進んでいる人口の多い場所ほどその数は多く、逆に自然豊かなところはでは発見されている数が少ないと、今のところ言われてはいる。


 ただ、それもまだ全て確認できているわけでもないから、どこまで本当かはわからない。


 ここから車で三十分ほど行った繁華街でも、ダンジョンは発見された。雑居ビルの間にあった駐車場にどっかりとあるらしい。


 再度連絡を取ったたっちゃんのところでは、田畑も多く近所では見つかっていないと言っていた。一番近くても車で一時間以上掛かると。



 たっちゃん達は思っていたより元気で、すでに家族にも話していたこともあり、ダンジョンができたら摩耶の家族やみんなで集まることを決めていたらしい。

 家族みんな元気で、農業してるから食べ物もそれなりに安心だ、と笑って、逆にこっちの心配をされる始末。



 他にも海外のダンジョンのニュースも流れるようになった。青い海を背景に、白い砂浜と白波にかかるようにできたダンジョンはなんとも不思議で、中に魔物がいなかったらいい観光名所になるんだろうな。なんてぼんやり思ってしまった。



 今もテレビにはダンジョンについて。と大きく書かれ、ダンジョン法を設立すべきだとか、私有地のダンジョンをどうするのだとか、そんな話し合いが繰り広げられ、国の注意喚起ゆえか民間人がダンジョンに入った動画などが流されることはないけど、それなりの数が入ってるんだろう。何度も入らないようにと注意喚起がされている。


 お兄ちゃんからあたしはネットを見るなと言われ、誰も教えてはくれないから正しいことがわからない。



 国はダンジョン内を現在確認中、民間人は危険だから入らないでください。と繰り返すばかりで、他の手立ては今のところないんだろう。

 ただ智さんが言っていた通りに、ダンジョンを囲むことはほぼ決まりそうらしい。民間人が勝手に入ることがそれを後押ししていると。



 それともう一つ、大きな論争になっているのは神職に対してだ。


 すでにレベルがありダンジョンに行ったことがある神職、このために神に選ばれたんだろうと言う人もいるらしい。

 それにダンジョンの記憶を思い出した人もそれは同様で、タグを作った人で、レベルが確認できている人には国が連絡を取っているらしい。


 国は神職やレベル持ちにダンジョン攻略させる気なのかな? あたし達はどうなるんだろう。



 ぼんやりとテレビを見ながらそんなことを考えてると、お兄ちゃんに頭を叩かれた。


「いったいなあ、何すんの?」

「そんな暇ならレベル上げるなり生産するなりせい」


 お兄ちゃんの横には苦笑した胡堂と秀嗣さんの姿もある。


「やって、お兄ちゃんが地上のことあんまり教えてくれんから。ネットのほうが詳しいんやろ?」

「外のダンジョン知って何になるねん。それならポーション一個でも多く作ったほうが生産的や」

「たしかにそうやけどさあ」

「恵子を見てみろ、今日も喜んでダンジョン行ったぞ」

「戦闘狂と一緒にせんで、犠牲者にのり君もおるんやし」

「お前もダンジョン行くなら拓斗か秀嗣を連れてけよ」


 そう言われても、二人はここで情報収取のお兄ちゃんの手伝いだろう。その邪魔をする気もさすがにない。


「なら、生産してくるわ。なんかあったらちゃんと教えてよ」


 手を振るだけで顔すら上げようとしないお兄ちゃんに溜息が出る。立ち上がれば秀嗣さんも立ち上がった。


「下に取りに行くものがあるから一緒に行こう」


 これ、たぶん嘘だ。お兄ちゃんは何かを警戒してか、あたしを一人で行動させるのは地下の居間だけになってる。


「すいません、ありがとうございます」


 気にするなと言ってくれる秀嗣さんだけど、やっぱり申し訳なく思ってしまう。

 お兄ちゃん達が何を警戒しているのか、今のあたしにはわからなくて、ただあたし以外のみんなはわかってるんだろう。行動からそれは察することができた。


 あたしの表情を読んだのか、秀嗣さんは優しい顔で口を開いた。


「みんな心配なだけだ、絵里子が気に病むことはない」

「でもあたしだけなんもしてない」

「そんなことはないだろ? 家事もそうだが生産や自分の力を使いこなそうと最近無理してるだろう?」


 少し心配そうに眉を下げる秀嗣さん。ばれていたとは思わなかった。


「見せないようにしているが、顔色が悪い時がある」


 苦笑して言われてしまえば、謝ることしかできない。


「なんか、すいません」

「謝ることではないが、ただ無理しないでくれ」


 真剣な顔で真っすぐに言われると戸惑ってしまう。それでもあたしの気持ちは変わらない。


「心配をかけて申し訳ないとは思うんです。けどあたしにしかできないことがあって、それがまだ何に繋がるかわからんけど、その時後悔するよりは全然いいと思うんで」


 できるだけ笑顔で言えば、やっぱり困った表情の秀嗣さん。


「みんな少なからず無理してますよ? お兄ちゃんなんて睡眠時間どんだけ削ってるのか」

「確かにそうだな」

「だから、あたしも大丈夫です。逆に秀嗣さんこそ無理しないでください? 最近、同化とか色々試して無茶してるでしょ?」


 苦笑交じりの同意に反撃すれば、知っていたのかと漏らされた。



 世界は変わった。それでも思ったほどの変化ではなく、緩やかなもの。それがいつまでのものかあたしにはわからないけど、守りたい物があるからこそ、あたしは今日もただただ笑うんです。



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