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ただただただ。 ~変わらないもの~  作者: けー
四章 神職とは?

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代償の結果



 誰かの話声で意識が浮上してくる。ぼやけた目を何度かしばたかせ、周囲を確認するとお兄ちゃんがいた。


「煩かったか?」

「大丈夫、結構寝たし」

「顔色も戻ったみたいやな、説明できるか?」


 ペットボトルの水を秀嗣さんが差し出してくれるから、ベットに座りそれを一口飲む。

 いつの間にか寝てしまって、胡堂はもう戻ったんだろう。その姿は見えなかった。


「たぶん回復と状態異常回復やとは思う。後は自分の体力とか分け与えた感じかな?」

「色々突っ込みたいとこ多いけど、まず回復ができたんやな?」

「回復ってより再生に近い。たぶん傷は塞がるけど体力や血は増えへんと思う?」


 お兄ちゃんの顔が、ほお。と少し驚いたものになる。


「状態異常回復は取り除いたって感じかな? 秀嗣さんの体から引き出して消す感じ? ただ回復とは違う属性な気がすんねんなあ」

「違うってどうゆうことや?」

「なんて言うか、我武者羅にやったから自分でもよくわからんけど、やったことは全部で三つ。それのどれも魔力の使い方が違うって言うか」

「俺が魅了を解除できたのと関係あるかもな」


 お兄ちゃんの言葉にあたしは納得する。


「確かに近いかも。それやったら魔属性は状態異常回復? 聖属性は回復ってか再生を促す?」

「恵子に試させるしかないな。で、最後の分け与えるってのは?」

「秀嗣さんがポーション飲めへんかったから、ただ体力とかもかなり落ちて危ない状態やった。やからそれをどうにかしたいと思ってやったからよくわからん」


 自分から何か引き出されるような感覚を覚えている。お兄ちゃんはあたしの説明に、難しい顔をしてたのに苦笑して諦めた顔をした。


「まあいいわ、とりあえずこのことは最上位の機密や。これから無暗に使うなよ」

「やったらみんな怪我なんてせんで」

「強めのポーション類を持ってかんかったお前らが悪い」

「毒で飲めへんこともあるみたいですー」


 言い返せば小突かれた、軽いものだしあたしはつい笑う。


「せや、その毒やねんけど八階の奥のゴブリンやったか?」

「そうやね、しかもこっちが無防備になるまで隠れて気配も消してた」

「それに魔法を使うゴブリンもいたな。数も一気に増えて俺と拓斗を囲むように配置されてた」


 秀嗣さんの説明にお兄ちゃんは眉を顰めて考え込む。


「なんか一気に強くなってるイメージやな」

「そうだな、それに魔法を使うゴブリンが指示してる印象を俺は受けたな」


 あたしまったく気づいてなかったよ。さすが秀嗣さんと驚いてしまう。

 そんなあたしを見て、お兄ちゃんは聞くこと聞いたし自分の部屋に戻れ、と言ってくる。自分はまだ秀嗣さんと何かを話すようだ。


「役立たずは部屋に帰りますよー。秀嗣さん、ベット占領してすいませんでした」

「明日、検証するから使いもんなれよ」

「いえ、気にしないでくれ。俺こそ今日は申し訳なかった」


 いつの間にか二間になっていた秀嗣さんの部屋。寝室を出ても胡堂の姿はなかったから、自分の部屋で休んでいるんだろう。 

 また明日、胡堂と秀嗣さんにはちゃんとお礼を言わなければ。それにお兄ちゃんは検証すると言っていたし。


 自分の部屋に戻りお風呂に入ればすっきりとし、たっぷり寝たので眠気が全くない。あと数時間でみんな活動し始める。たまにはちょっといい朝食でも作ってあげようかと考えながら、時間をつぶした。




「じゃあ検証しよか」


 そう言って朝食後にお兄ちゃんに集められたのは、あたしと胡堂と秀嗣さん。お姉とのり君はレベル上げに行って、そろそろ本気でお姉に抜かされそうだ。


「あたしはわかるけど、二人は?」

「実験台に手を上げてくれた聖人や」


 あたしの顔が嫌な感じに歪む。何が起こるかわからないのにいいんだろうか?


「まあでも、別にダンジョン行ってくれてもいいんやで?」

「大丈夫です」


 お兄ちゃんの言葉に二人は揃って言うから、お兄ちゃんも諦めたようだ。


 確認もそこそこに、お兄ちゃんは各ポーションや血止めや火傷用の軟膏などを持ち出して横に置く。今作れるポーションは(微)と(下)、毒消しポーションもマナポーションも同じだ。

 昨日のことを考えると(下)も量産しとくべきだろう。特に毒消しは使うことがなかったので、作っている数は少ない。


 お兄ちゃんはそれを確認すると、ナイフを取り出して自分の腕を切りつけた。


「なにやっとん!?」

「ほれ、試してみろ」


 傷が浅くとも血が流れる腕、それをあたしに差し出してお兄ちゃんは言う。


「あほちゃう? わざわざ自分を傷つけるとか。何考えてるん?」


 どうしても言葉が強くなる。あたしはそれでも集中しようとお兄ちゃんの腕に手を翳し、昨日のように意識を集中させる。

 傷の深さの問題か、昨日よりも楽に傷を塞ぐことができた、それでもあたしの額には少し汗がにじむ。


「体調どうや? 見た感じは昨日よりマシみたいやけど」

「そうやね、これぐらいならそんな辛くない」


 息を整えお兄ちゃんを見れば、腕の血を拭い傷を確認している。すっかり塞がり後もないそれにお兄ちゃんは少し驚いていた。


「確かに聖属性っぽいな。次、毒行こか」

「は? ほんまあほやろ?」


 あたしだけじゃなくて、胡堂と秀嗣さんも慌ててお兄ちゃんを止める。


「最初は自分で作った弱い毒からやるから大丈夫や。毒消しポーション(微)で治るのも確認しとる」

「そんなんいつ確認したん!?」


 にやりと笑われても嫌な予感しかしませんよ。怖いよ。いつからかマッド系ですかお兄ちゃん。



 その後もいろんなことを試され確認されていく。わざわざ小さな火球で火傷を負うとか、あの人マジで馬鹿なんじゃないだろうか? 検証は大事でも体はもっと大事だと言うのに。



 マッドな人体実験のおかげで、様々なことはわかった。まず再生は聖属性だと思われる。これはお姉にも手伝ってもらわないと確定できないだろう。


 それでもポーションと併用することで効果は大きくなるし、使う魔力量も減る。体力はすぐに回復はしないが、ポーション併用なら回復速度は上がる様に感じるらしい。部屋を走って確認した聖人二人が言っていた。


 毒や麻痺など状態異常系は魔属性で、こちらもポーション併用すれば回復も早く魔力量も少なく済んだ。


 問題は体力というのか生命力の回復だ。これはどれだけやってもわからなかった。お兄ちゃんは思うところがあるみたいだけど、それを教えてくれずに今日はこれであたしの役目は終わりだと言わてしまった。


 ただ最後にできる限り使うな、ポーションでだけでどうにかしろ。と強くいつもより真面目な顔で言われたのが印象的で、それに胡堂と秀嗣さんが強く頷いていた。



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