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ただただただ。 ~変わらないもの~  作者: けー
一章 閉じ込められたのダンション

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さめた頭



 何度か小休止を挟みながら奥へと進み続け、代り映えしないダンジョンが嫌になって来る。

 色々考えなくてすむからモンスターが出てきたほうが有難い。人間、変われば変わるものだ。


 戦いに掛かる時間もどんどん短くなっていき、途中頭の中で鐘が鳴ったから多分レベルも上がった。



 何匹やったか覚えてもない。戦いが楽になればなるだけ本当に出口があるのかと焦ってきて、嫌になる。


 そんな考えを振り払うように足を進め続け、小部屋を見つけては中を確認し、モンスターに会えば戦う。その繰り返しの作業みたいで、ほんと嫌だな。嫌だしか言ってないな。



 余裕ができるって嬉しいけど、今は困る。時間を確認すると午後四時を過ぎていた。懐中時計を一撫ぜして、気持ちを切り替える。余裕ぶっててやられるのは勘弁してもらいたい。



 通路の角を確認して曲れば、すぐ近くに小部屋の入り口が見えたので、中を覗くと兎が三匹。その奥に通路がまた見えた。


 今まで小部屋から通路が続いていることはなかった。無駄に期待してしまいそうになるが、落ち込みたくないから期待しないでおこう。お風呂の時の教訓です。これ大切。



 でもその前には兎が三匹、まだこちらには気づいていな様子。レベルも上がったしポーション(微)もある。


 あたしは勢いをつけて部屋に入ると、まず一匹の兎をそのまま仕留めた。残り二匹がそれに反応しあたしに向かってくる。

 あたしはそれを横に躱しながら二匹目を切りつけるが、浅かったようでまだ動いてはいるけど立ち上がれないようだ。


 残りは一匹、今のあたしなら兎の速さにも追いつける。飛び上がる前に剣で刺し深く息を吐いた。


 まだ息のある兎にごめんね、と止めを刺してポーチに入れていく。怪我もなく終われてよかった。


 いつもならこれで元いた通路に戻って探索を続けるんだけど、問題は小部屋の奥の通路だ。見ないって選択肢はないけど、見るのが怖い気もしてる。


 もし、何もなければ?

 もし、強いモンスターがいるだけだったら?


 そんな思いがあたしの足を止めてしまう。他のまだ進めていないところを先に行くってこともできるけど、もしそれで何もなければまたここに戻ってくるだけだ。


 あとで見るなら先に見ても一緒、何もなくてもまた出口を探すだけ、何も変わらない。

 あたしは勇気をだして小部屋の奥、通路へと向かう。



 その通路は短く、すぐ入り口が見えた。強そうなモンスターなんかもいることなく、いつもの小部屋より少し狭いくらいの部屋。中は他同様に明るく、変わった点は見つからない。


 あたしは注意しながら中に踏み込む。何かが出てきたり、入り口が閉まることもなく変わりない。


 やっぱり出口なんかなかったか、そう思いながら数歩進むと、地面を掘る形で階段が見えてきた。


 期待なんてしないようにしてたけど、変化は求めいていたけど、下に行きたいんじゃない、あたしは上に行きたいんだ。


 下り階段を見てなんか脱力、時間は少し早いけど今日はここまでにしよう。



 部屋に戻ってポイントを確認したら1485ポイント。

 あたしどれだけ倒したんだ。ポーチの中が大変なことになってそうで、取り出さずに売れてほんとよかった。


 兎は念のためお肉を五匹分と、角と皮全て置いておく。鼠は考えたけど全て売ることにした。それだけでもかなりのポイント数だ。



 これだけあるし色々と揃えられそう。とりあえず冷蔵庫とコップは買って、あと布団も買ってしまう。


 他にはと色々見ていくと『施設』が増えてる。『個人ルーム拡張』と『倉庫』と『訓練室』と『解体場』。


 なんとなくわかりそうなものばかりだけど、解体場ってなに?

 兎売るときに『解体』って出るのに? 鼠にはないけど。

 そのうち魔晶石で解体できないようなものが出てくるの? 自分で解体?



 頭に色々浮かんだけど、今は無視しておく。たぶん買っても使えないし。


 ポイントはまだあるから、買おうと思えば一つは買える。一番安いのは倉庫だけど、家具もないこの部屋はまだまだ置き場所はある。

 逆に高いのは訓練室、指導者がいるならいいのかもしれないけど、訓練の前に帰してほしい。


 やっぱり選ぶなら個人ルーム拡張一択かな、1100となかなか高いけど休む部屋って重要だし。


 ほぼほぼ決まっていた答えを出し、個人ルーム拡張を押す。すると普段とは違い画面に『※注意※』と出る。拡張は外のオブジェの魔晶石からしかできないみたい。


 しかたなしお肉を買ったばかりの冷蔵庫へ入れ、外へ出てルーム拡張。しばらく待つけど音もなく変化もない。

 魔晶石を確認しても個人ルーム拡張の文字が消えてる。


 詐欺?


 そうだったとしても訴える場所すらないけど、あたしは部屋に向かって扉を開けてみる。すぐに変化に気づいた。


 キッチンがほんの少しだけ大きくなってるし、お風呂場の他に扉が増えてる。


 詐欺とか思ってごめんなさい。わくわくとしながら部屋に上がり、扉を開ければお手洗いが別になってた。地味に嬉しい。その分お風呂も少しだけ広くなってる。


 部屋は広くなったわけじゃないけど、バストイレ別は拡張してよかったとめちゃくちゃ思えた。


 さっそく新しくなったお風呂に入って、今日の疲れを癒す。トイレがないだけで圧迫感が消えてのんびりできる。


 ご飯は今日も兎のステーキ、胡椒もを買ったから昨日よりも美味しかった。


 一息つく前に洗い物と洗濯を終わらせて、ポーチの整理。ほとんど売ってるから、残ってるのはポーションばっかりだけど。

 水と干し肉も足しておいて、明日もダンジョンに行くんだから。



 明日…、明日はどうしようか。


 新しく見つけたあの階段、あの先が家だとは思えない。それでも可能性がないわけではないし、進んでみる価値はあるかもしれない。でも他のところに階段や出口があるかもと思ってしまう。


 もしあの階段が家に繋がってるのなら、今すぐにも帰りたい。けど、そうじゃなかったら? そのままダンジョンが続いてたら? そう思うと怖くて階段を下りるのが怖くなる。


 引いていた布団にごろりと寝ころんで考える。なんで家の押し入れにこんなところがあったんだろ?

 誰かが作るとかできないだろうし、なんの為にこんなダンジョンができた?


 スライムとか角兎が地球にいるわけないし、押し入れが異世界に繋がってる? それなら誰か人に会ってもいいはずだ。

 そもそもいつからダンジョンの入り口になってた?


 そろそろあたしがいないことに誰か気付いたかな? 捜索願とか出されちゃってるのかな?


 お姉ちゃん怒ってる? 泣いてなきゃいいけど。

 お父さんとお母さんのお水とお花、変えてくれてるかな? あー、燃えるゴミ、気付いて捨てといてくれてたら嬉しいな。


「なんであたし、こんなところにいるんだろ」


 ぽつりと声が出た。


 それは静かな部屋では大きく響いて、何より考えないようにしてたこと。


 あたしは振り切るように横に寝返ると、父が大切にしてた懐中時計が目に入った。それを見てると家での日々が思い出されて、自然と帰りたい気持ちが強くなる。悲しくなる。嫌になる。


 けど、まだ諦めてはいないから。


 新たに階段を見つけたし、地図も全てできたわけじゃない。なら出口だってあるかもしれないんだから。


 まだ四日だ、弱気になっちゃ駄目だ。まだ、諦めるには早すぎる。

 大丈夫、あたしは家に帰れる、帰らなきゃ駄目なんだ。


 明日は地図を埋めること優先しよう。もう行ってないところも少ないし、宝箱から何かいい物が出るかもしれない。


 大丈夫、あたしはまだ動けるから、頑張れるから。

 帰れるまで、諦めたりしないから。



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