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193.教皇救出ミッション その3

 詩織と優衣も座席を立ち、パーソナルシールドの稼働状況を確かめ、3人はスペースドックへ降り、謎の宇宙人?に連れて行かれた教皇の後を追う。

 宇宙服アタッチメントにはインターカムが付いており、会話が出来るようになっていた。

「このインターカムはどれくらい電波が届くの?」

「今まで使っていたインターカムでも恐竜の島で山の麓から海岸まで届いたから、新型のこれは宇宙船の中だと、何処でも届くんじゃない?」

「じゃあ、迷子になっても大丈夫ね」

 一人で好きなところに行ってしまう気分マンマンの亜香里である。


 3人は巨大宇宙船のスペースドックの中を、音を立てないように注意して歩いて行く。

「ここは宇宙空間なのに床に足がついて、無重力ではないのが不思議です。少し身体が軽い感じがしますけど」

 優衣が首を傾げながら、軽い足取りで歩いている。

「それはですね、スターデストロイヤーには重力発生装置があるから艦内を普通に歩けるのです。マントを付けたベイダー卿がフワフワ浮かんだまま司令室に入って来たら、シーンの絵面が締まらないでしょう? フォース・チョークで司令官を締め上げようとしても、無重力だと司令官が浮かぶだけだし」

 いやいや亜香里さん、誰もSW episode 4の解説を聞いていませんよ。


「教皇が通路に入って行くよ。見失わないように急ごう」

 詩織は亜香里の解説をスルーして走り始め、詩織と亜香里もそれに続く。

 3人が通路にたどり着くと、教皇を連れている一団は通路の先を右に曲がって行った。

 通路に入ってからも3人は走り続け、通路内に足音が反響するが何処からも攻撃されず警告音も聞こえてこない。

 教皇たちが通路を曲がったところまでたどり着き、角からコッソリとその先を覗いて見ると、通路の先は大きな体育館のようなホールになっており、中央に一つ椅子が置かれ、教皇はそこに座らせられているところだった。

 教皇は宇宙服を着た数人の宇宙人?に取り囲まれている。


「助けにくい状況ね」

「宇宙人を倒すだけだったらブラスターもあるし、稲妻を落としても良いのだけど、教皇にもしものことがあったら、ここまで助けに来た意味がなくなるからどうしよう?」

「ちょっと待って下さい! 今、教皇と周りの宇宙人を精神感応で探ってみたのですが、教皇を取り囲んでいる人たちは生き物ではないようです」

「どういうこと?」

「どんな生き物でも、精神感応で探れば何か反応があるのですが、あのホールの中で、生物と感じられるのは教皇だけです」

「優衣の言う通りだとすれば、教皇を連れ去った宇宙人のような集団は、ロボットか何かなの?」

「そうかも知れません。でもこの宇宙船の中に私たち以外の生き物が感じられます。ここから離れたところにいるようです」

「分かった! この宇宙船は悪い宇宙人が仕切っていて、司令室で踏ん反り返っていて、目の前にいる彼らは指示を受けているアンドロイドよ」

 亜香里の話はSF映画的な発想であったが、詩織と優衣はそれを否定せず(他の設定を考えるのも面倒なので)亜香里の意見に取り敢えず同意した。


「じゃあ、仕切っている宇宙人がアンドロイドに次の指示を出す前に、教皇を助け出して、ここから脱出しよう! 私は教皇を瞬間移動で救出するから、その前に亜香里はアンドロイドの気を引いてくれる? やり方は任せます」

「アンドロイドの気を引く方法? そうですねー、この状態(光学迷彩)でホールに入って飛翔で高いところに上がって、そこから目立つところに稲妻を落とします。その隙に教皇を救出してくれる? 優衣はここで見張っていて。光学迷彩を使用しているとブラスターが使えないから気をつけて」

「了解です。光学迷彩を使用しても使える武器を持って来たので大丈夫です。見えないと思いますけどエアクラフトのストレージに『組織』が作った弓を見つけたので背負って来ました。当たると痛そうです」

「それなら、安心ね。じゃあ作戦開始!」

 亜香里は光学迷彩のまま、ホールに飛翔で入って行く。

 ホールの中に入ると教皇を取り囲んでいるアンドロイド以外にも、アンドロイドやロボットがホールの中でたくさん動き回っている。

『亜香里です。今、ホールの天井近くにいますが、通路から見えないところにたくさんアンドロイドやロボットがいます。彼らの気を引く場所を探すので少し待っていて下さい』

 亜香里は二人にインターカムでホールの状況を説明し、ターゲットとなる目立つところを探して飛び回る。

『あそこに見えるのがここのコントロールセンターなのかな? 全面ガラス張りで全体を把握できるようになっているけど。ヨシ! あそこを狙おう。では派手に始めます』

 亜香里は意識を集中して、ホールの上部にあるガラス張りの施設に向かって稲妻を放った。

 雷光が広がり、ホールの中は眩しい光と轟音でいっぱいになった。

 光と轟音のあと、ホールは真っ暗になり、すぐに非常灯が点灯する。

 ホール内を動き回っていたロボットは停止し、アンドロイドは周りをキョロキョロと見回している。

 コントロールセンターは粉々になっていた。


『行ってくる!』

 詩織は瞬間移動で椅子に座っている教皇のところまで飛び、教皇の腕を掴んで、再びもと居た通路の角まで戻ってきた。

 急に居なくなった教皇に気が付き、アンドロイドたちが慌ただしく動き始めた。

 教皇は光学迷彩モードの詩織と優衣に精神感応で話しかける。

『助けていただき、ありがとうございます。彼らの心を探ってみたのですが良く分かりませんでした(優衣「教皇を誘拐した人たちは人間ではありません」)なるほど、だから心が読めなかったのですね。みなさんはこの宇宙船まで追って来てくれたのですか?』

 優衣が精神感応で今までのことを手短に伝え、教皇は深く頷いた。

「亜香里が戻ってこないし、インターカムにも連絡が無いけど、どうしよう? アンドロイドがこっちに向かってきているよ」

「詩織さんは教皇を連れて先にエアクラフトに戻ってください。私は亜香里さんを待ってから戻ります」

「分かった、気をつけて。何かあったら直ぐに呼んでね」

 詩織は教皇の腕をまた掴み、瞬間移動でエアクラフトへ戻って行った。


 通路の角に一人残った優衣がホールの方を見ると、アンドロイドたちが迫ってくる。

 亜香里にインターカムで応答を求めるが返事は無い。

(まさか捕まったりしていませんよね?)

 どうしようかと考えるが、通路の角からではホールの中の様子が分からない。

 通路をこちらに向かって来るアンドロイドたちが間近になったところで、通路の壁に張り付いてやり過ごし、優衣はホールに走って入った。

(光学迷彩で気が付かなかったのでしょうか? アンドロイドはセンサーとか持っていないのかな?)

 優衣がホールに入ると、そこはワンサイドゲームの戦場になっていた。

 何故か、天井近くを飛んでいる亜香里が丸見え。

『亜香里さん、見えていますよ。光学迷彩はどうしたのですか?』

 インターカムが使えないようなので、精神感応で聞いてみる。

 亜香里は飛翔で飛びながら、あたりを探す素振りを見せる。

『優衣? どこに居るの?(優衣「ホールの入口です。詩織さんは教皇を連れてエアクラフトに戻りました」)そっかー、ひとまず安心ね。さっき、稲妻を飛ばしたときの衝撃でパーソナルシールドとインターカムが壊れちゃったみたい。今、無防備な状態です。ジャンプスーツと宇宙服アタッチメントでアンドロイドが打ってくる弾や光線のカスリくらいは、どうにかなっているけど、直撃されたらマズイね』

 優衣の精神感応に応えながら、亜香里はアンドロイドの攻撃を避けるように飛び回っている。

 優衣は亜香里を助けるため、背中に背負っている『組織』謹製の弓を取り出し光学迷彩のまま、亜香里に狙いを定めているアンドロイドたちに向かって次々と弓を放っていった。

 何処からともなく、矢が飛んでくるため、アンドロイドたちは右往左往し始める。

 優衣が放った矢は、増速しターゲットに当たると小爆発を繰り返していた。

 徐々に亜香里への攻撃は収まっていく。

『優衣、ありがとう。じゃあ、今まで逃げまわっていたお返しをさせていただきます。飛翔は疲れるんだから。優衣、ホールからチョット出ていて』

 優衣が急いでホールを出ると、亜香里はホールの天井近くからフロア全体に強力な稲妻を轟かせた。

 ホール全体が光と音と衝撃にまみれ、真っ暗になる。

 今度は非常灯も点灯していない。

 優衣が通路からホールに顔を出して、精神感応で亜香里を探す。

「亜香里さん、大丈夫ですか?」

 すると、真っ暗なホールの上の方から優衣の前にフワフワと何かが落ちてくる。宇宙服アタッチメントについているLEDライトで照らしてみると、意識が朦朧としている亜香里が優衣の足元に倒れていた。

「亜香里さん、しっかりして下さい! まだここは宇宙船の中ですよ。頑張ってエアクラフトまで戻りますよ!」

 優衣は倒れている亜香里を引き上げて肩を貸し、巨大なゴミ捨て場と化したホールを後にして通路を歩き始める。

「優衣、ゴメン。ちょっと能力を使いすぎた」

「身体は何ともありませんか?」

「さっき、天井を逃げ回っている時、アンドロイドが撃ってきた弾や光みたいなものが当たって少し痛いけど、たぶん大丈夫。ボディスーツと宇宙服アタッチメントが守ってくれたのだと思う。それより、とにかく身体がだるいよ。このまま寝てしまいそう」

「ここで寝たら捕まります! エアクラフトまで頑張りましょう」

 ホールから出た通路を左に曲がればスペースドックだと思った時、曲がり角にアンドロイド部隊が現れた。ホールにいたアンドロイドとは異なり、武装をしており、優衣たちに銃を向けている。

「亜香里さん、困ったことになりました…」

 武装アンドロイドに行く手を阻まれた優衣は、肩にもたれて意識のない亜香里の耳に、届かない相談をしていた。

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