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192.教皇救出ミッション その2

「高度がずいぶん高くなりましたが、大丈夫なのでしょうか? 高度計が100kmを超えています」

 優衣が心配そうにモニターの数字を読み取っている。

 亜香里たちは教皇を誘拐した謎の円盤を追いかけているうちに、宇宙空間へ出てしまった。

「たぶん大丈夫、と言うしかないでしょう? レーダーに表示されている教皇を誘拐した謎の円盤は、まだ先を行っているし、この新エアクラフトはどう見ても宇宙船で、私たちは宇宙服アタッチメントを着ているわけだし。この格好で地上を歩いている方が、違和感があると思う。テーマパークの出し物みたいじゃない?」

 超楽観的なのか、勇者気質なのか、初めての宇宙空間で追跡活動を行っている亜香里に緊張感は無かった。

「初めての体験で気になるところはいろいろあるけど、いままで『組織』でやってきたことは最後になんとかなったから、今回も大丈夫じゃない?」

 詩織は『組織』での異常な体験が重なり、非常事態に鈍感になっていた。

「亜香里さんと詩織さんがそう言われるのなら、たぶん大丈夫ですね」

 不安な気持ちは拭えないが、優衣は自分に大丈夫だと言い聞かせていた。

 謎の円盤と新エアクラフトの追っかけっこは、地球の引力を離れてフルスピード。


 スピード計を確認した詩織が驚く。

「時速4万キロ ! エアクラフトは地球でも早かったけど、地球を離れると段違いね。そうか…宇宙空間だから? 未だ地球の重力が働いているから、そんなに早いはずはないのだけど」

「そんなに早かったら、すぐ月にも行けそうですね」

「優衣、月はそんなに近くはないよ。地球から月まで三十八万キロあるから、このスピードでも十時間くらいはかかる」

「亜香里さんはよくご存じですね(亜香里「中学校の夏休みの自由研究で月のことを調べたから覚えています」)では、あの謎の円盤はどこを目指しているのでしょうか?」

「優衣がそんなことを言うから目指しているところが見えてきたよ」

 詩織がアタッチメントのフードに表示されたスクリーンをオフにして、エアクラフト機内全体にスクリーンを広げた。

 目の前のスクリーンには、スクリーンからはみ出すのほどの大きな宇宙船が見えてきた。

 宇宙船というより巨大建造物の様相。

「アレって、スターデストロイヤーじゃない?」

 亜香里の映画脳、スターウォーズヲタク道が発動される。

「亜香里の好きなスターデストロイヤーかどうかは分からないけど(亜香里「好きではありません。やっつけるものです」)どっちでも良いけど、なんであんなものが地球の近くにいるわけ? 私たちハリウッドに紛れ込んだの?」

 詩織が『これは大掛かりなドッキリだよ』と付け加えながら、3人でスクリーンを見ていると(亜香里は映画鑑賞モード)、巨大宇宙船の映像に重なるように、ビージェイ担当が現れた。


 いつもとは様子が違う。何か言いたいことを黙っている様に見える。

「落ち着いて聞いてください。みなさんが今、置かれている状況をわかる範囲で説明します」

『いきなり訳も分からずに『落ち着け』と言われたら、逆にドキドキします。ビージェイ担当は、私たちを驚かせているのでしょうか?』

 優衣が亜香里と詩織に精神感応で不安な気持ちを送り、自分を落ち着かせようとしている。

「みなさんが乗っているエアクラフトがモニターしている情報は、全て『組織』に共有されており、みなさんが機内で見ているデータと同じものを私たちも見ています。今、みなさんが見ている巨大な未確認飛行物体は『組織』も初めて見るものです」

 その後の説明が続かない。

 亜香里が『イラッ』として聞いてみる。

「(ビージェイ担当の感想を聞きたいわけじゃないから)それで私たちはどうすれば良いのですか?『謎の円盤に教皇が誘拐されたから追いかけてくれ』と言われて、宇宙空間まで来てしまったわけですよね? 相手が小さな円盤なら、何とかなるかな?と思っていましたが、相手はスターデストロイヤーですよ? どうやってエアクラフト一機で戦うのですか? デススターだったら排気口からプロトン魚雷を打ち込めば破壊できるかもしれませんが、スターデストロイヤーは多くのXウイングの犠牲なしには、やっつけられない相手です」

 亜香里は最初、真っ当なことを言っていたが、途中から話の中身がスターウォーズになってしまい意味不明。

 そんな亜香里に慣れっ子になっている詩織と優衣は『また亜香里のSWヲタクが発動した』と冷めた目で見ている。

「『組織』は戦えとは言っていません。教皇を救出して頂きたい気持ちは変わりませんが、能力者補を危険に晒すわけにはいきません。直ぐに帰還して下さい。エアクラフトを『組織』へ帰還モードに変更します」


 亜香里たちは『やっぱりそうなるよね』と思い、エアクラフトの進行方向が変わるのを見守っていた。

 だが、窓から見える星々の様子は変わらず、機内スクリーンに映し出されている巨大宇宙船は、ますます大きくなる。

 スクリーンの中のビージェイ担当は、いろいろと機器を操作していたが、そのうち操作を止めて、亜香里たちに向かって話しを始めた。

「スミマセン。エアクラフトを帰還させる操作をいろいろと行ってみましたが、進路を変更できません。しばらくするとエアクラフトは、巨大宇宙船に取り込まれると思います」

「やっぱり思った通りです。スターデストロイヤーはトラクタービームを装備していますから、小さな宇宙船は一度捕捉されたら逃げることが出来ません。帝国軍の捕虜になって、反乱同盟軍の助けを待つしかありません」

 亜香里が『やっぱり』という表情をして現状を語るが、それはスターウォーズの設定である。助けを待っていても反乱同盟軍は助けに来ない。

 ただ、亜香里のSF映画脳的説明を、誰も否定できなかった。

「小林さんの説明には根拠がありませんが、エアクラフトの置かれている状況はその通りだと思います。それから先ほどお話しした、そちらへ向かう予定であった支援用エアクラフトは宇宙空間に出られません。現在、地球の高高度で待機中です」

 亜香里は『結局そうなるのね』と思いながら決意表明する。


「状況は分かりました、何も分かりませんけど。いつ宇宙人との戦闘になるか分からないので、準備をしておきます」

 スクリーンの中のビージェイ担当が、済まなそうな顔をしている。

「大変申し訳ありません。『組織』として、このような……」

 スクリーンからビージェイ担当の姿が消え、音声も聞こえなくなった。

 スクリーン一杯に映し出されているのは、巨大宇宙船の船腹のみ。

「この大きな宇宙船に近づいたから、地球の電波が届かなくなったのかな?」

「スターデストロイヤーが通信妨害電波を出しているのだと思う。私たちに通信させないようにしているのよ」

 亜香里は完全にスターウォーズ戦闘モード。

 教皇を誘拐した謎の円盤が、巨大宇宙船の船腹に開いているスペースドックに入って行く。

「詩織! ドックが閉まる前に私たちも中に入ろう!」

「了解。ここまで来たら、やるしかないね」

 ビージェイ担当が設定したプロテクトが全て有効である事を確認して、詩織はマニュアルモードでエアクラフトをドックに滑り込ませた。

 スペースドックの中は大型空母の甲板並みの広さがあるが人気ひとけはなく、奥に教皇を誘拐した謎の円盤が着陸している。

「広いねー、円盤がたくさんある。でも戦闘機が無いよ? タイファイターも無いし、この船は戦艦じゃないのかな?」

 SWアイテムが見当たらず、亜香里は少しテンションが下がり気味。


「教皇が謎の円盤から降りてきたよ。遠くないところにエアクラフトを停めるね」

 見たことのない宇宙服を着た3人の宇宙人?に連れられて、教皇がターミナルの奥へ向かって歩いて行く。

 光学迷彩とステルスモードが稼働中であるエアクラフトは、音を立てずに謎の円盤から少し離れたところに着陸する。

「アレッ? このスペースドックは空気があります。スクリーンに『呼吸可』と出ています。そうですよね、教皇は今までと同じ服装でターミナルを歩いていましたから」

「追いかけよう! この船は大きいから教皇を見失ったら探すのが大変!」

 亜香里は勢いよく座席から立ち上がった。

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