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143.フォローアップ研修(LOTR?)その11

 詩織のドライビングテクニックと TERYX4(『組織』改)の登坂力の高さで、難なく山脈の中腹まで辿り着き、小さな原っぱを見つけて電動バギーカーを停め、亜香里たちは一休みする

「いっきに、ここまで来ましたね。結構揺られましたけど、ずっと運転をしている詩織さんは大丈夫ですか?」

「そんなに揺れた? ハンドルを握っていたからあまり意識をしなかったよ。じゃあ次から気をつける(優衣「わざわざ気を使って運転しなくても良いです」)運転に集中していればあまり疲れないかな? 信号は無いし、歩行者や他の車もいなくて変な神経を使わなくて済むし、この前、カイルアビーチで久しぶりにウィンドサーフィンをしたのを思い出しました、そんな感じかな」

「私は大丈夫よ、助手席前には両手で掴めるバーもあるし、左足首はギブスで固定されていて、そもそも6点式シートベルトで身体は動かないし、これくらい揺れていれば、眠くならなくてドライバーに失礼にならないから」

 3人ともジャンプスーツ、ヘルメット、グローブ、ブーツは出発前から装着済みである。

「そうですよね、自分が運転をしていて助手席の人が寝ちゃうと、こっちまで眠たくなるし、自分が助手席で眠たい時、起きているのに必死になることもありますし」

「じゃあ、そろそろ出発しようか? まだ先は長いんでしょう?」

「ウーン、映画の中では『滅びの山』まで歩いて40日間とか言ってたけど、観ていてそんな感じはしなかったし、今日の目的地のエルフの森は中間地点の手前だから、問題がなければ夕方には着くと思います」

「では、問題が起こらないことを祈って出発しましょう!」

 引き続き、詩織が運転する電動バギーカーは順調に『霧吹き山脈』西側の中腹を廻り、太陽がてっぺんを過ぎたところで、亜香里から『そろそろ、お昼にしようよ!』コールが掛かり、バギーカーを停めるのに適当なところを探していると、右手に見える山の頂上付近から飛行物体が近づいて来る。

「あれって、なに?」

「亜香里さんにも見えますよね。詩織さんは運転に集中してくださいね(詩織『了解』)」

「鳥かな? 随分遠くに見えるけど、それにしては大きいし」

 亜香里と優衣が話をしているうちに、その飛行物体は急降下してバギーカーに近づき、今まで小さな影だったものが形になった。

「何で、ここにプテラノドンが出てくるの! 昨日のヴェロキラプトルといい、『組織』には『指輪物語』の世界を満喫させてくれる、おもてなしの気持ちはないの!」

 亜香里の抗議をプテラノドン(『組織』謹製)が聞き入れるはずもなく、3人が乗るバギーカーを目がけて突っ込んできた。

 幸いな事にバギーカーが走っている山の中腹には車より大きな岩が、あちらこちらに埋まっていたり転がったりしていて、岩の陰になる場所では、プテラノドンの羽根が邪魔になって襲われにくい。

 車を停止させると、捕まることは目に見えているので、詩織はなるべく岩陰から離れない様にしながら、バギーカーを走らせた。

「どう? プテラノドンは近づいて来ている?」

 道のない先を見極め、ハンドルを右に左に切りながら詩織が2人に聞く。

「一瞬、うしろから車を掴もうとしたみたいですけど、前に岩が迫っていて諦めたみたいです。でも後方上空からずっと様子を窺っています」

 後部座席の優衣も6点式ベルトで身体が固定されているため、首を捻って何とか後ろを見て確認する。

「ゴロゴロした岩がある間は、何とか逃げられそうだけど、そのあとどうするかよね。いつまでもこの地形が続くわけではなさそうだし」

 詩織はこの先に広がる、ほとんど草と土だけの景色を見ていた。

 助手席の亜香里も前の景色を見て『アッ!』という表情をする。

「あの先を下っていくと、今日の目的地の森につながるローハンの谷があると思うけど、このまま行くとプテラノドンを避けるところが無くなって、襲われ放題です。どうしよう?」

「さっきプテラノドンが近づいた時の様子だと、この車ごと持ち上げようとしていたので、それを防げれば逃げられると思います」

「優衣、どうやって防ぐの?」

「亜香里さんが得意の、稲妻で撃退するとかですかね?」

「飛んでいるものに雷を落とすのは難しいね。自分たちも山のデコボコをこんなに動いているから狙いが定まらないし、それより優衣の精神感応は?」

「亜香里さん、あのプテラノドンは『組織』が作ったマシーンですよ。効くわけがありません」

「ということは、打つ手無しかぁ… 何とか振り切れるところまで運転してみるから、しっかり掴まってて!」

 詩織はスピードを上げ、景色が変わった山の中腹にある草原を疾走する。

 それを見つけたプテラノドン(『組織』謹製)は急降下してきた。

「詩織さん、このままだと、あとちょっとで捕まります」

 後部座席の優衣の報告と同時に『ガシッ!』とプテラノドンの爪の音がして、バギーカーのルーフが破られた。

 その衝撃で車が一瞬浮きハンドルを取られるが、詩織は何とか車体を立て直して、走り続ける。

「何だか、あのプテラノドンは本気ね。能力者補になる前のトレーニングや恐竜の島でのトレーニングでは上空を飛んでいただけなのに、今回はやる気を出したのかなぁ」

 亜香里はトレーニングモードで余裕たっぷり。

「いやいや、あの感じだと気を抜くと怪我をしそうよ。どう対応するか考えないと」

 プテラノドンに掴まれないように、ハンドル操作で車を左右に振る詩織は真剣。

「じゃあさあ、今度近づいて来たときに、ブラスターで撃てば良いんじゃない?」

「亜香里さんは知らないと思いますけど、昨日、亜香里さんが離れたあと、私たちを襲ってきたトロルにはブラスターが効きませんでした。その時、詩織さんが萩原さんに対策を聞いたら『電気エネルギーを上手く逃すように作っている』云々っていう返事が返ってきて、詩織さんがキレていましたから」

「だってさぁ、目の前に大っきいトロルが迫ってて、ブラスターが効かないからどうしよう? って聞いたら技術解説をしてくるんだもの。あの時はちょっとイラッとしたよ」

「ふーん、そんなことがあったんだ。じゃあどうしよう? ウーン… ちょっとどうなるか分からないけど、ウン、これをやってみよう。詩織ぃ、先の方に少し平たくなったところがあるでしょう? あそこでバギーカーを停めてくれる?」

「そうするとプテラノドンに襲われるよね?」

「そうなります。プテラノドンがバギーカーを掴んだ瞬間、私と優衣を一緒に瞬間移動で車の外に運んでくれますか? 出来れば10メートル以上離れたところに」

「亜香里の作戦は分かりました。車がどうなるか不安だけど、やってみよう」


 詩織は平らになっている台地にバギーカーを停めた。

 直ぐに上空からプテラノドンが舞い降りてきて、バギーカーを掴んだその瞬間、詩織の瞬間移動で3人は車から離れたところに降り立った。

 亜香里が、車を掴み飛び上がり始めたプテラノドンに向けて雷を放つと、プテラノドンとバギーカーは大きな音をたてて台地の上に転がって行った。

「だいたい、作戦通りかな?」

「プテラノドンは倒せましたが、バギーカーも壊れてしまいました」

「ウン、そこは五分五分かな?と思っていたけどやっぱり壊れたね。積んであるパーソナルムーブが無事だったら、それでエルフの森まで行けるし、ダメだったらフロド達みたいに歩きましょう」

 3人はプテラノドンとバギーカーの残骸に近づき、バギーカーに積んであった荷物を確認する。

 リュックとパーソナルムーブは無事で、ランチ用に持ってきた食料もそのままである。

 バギーカーはフレーム部分がそのままの形で残っていたが、動力部分はグチャグチャ。詩織が『もったいないなぁ』と言いながら、車内を確認すると座席があった下のフロアに見たことのある袋が見つかり、中を開けると思わず微笑む。

「これって… 亜香里が大好きなものが車に積んであるよ」

「なになに? アッ! マジックカーペット! やったね! これでエルフの森『ロスロリアン』まで昼寝をしながら行くことが出来ます」

「マジックカーペットの操縦は、亜香里がするのよ。私はずっとバギーカーを運転してきたから少し休みます」

「エッ! そうなの私が操縦するの?(詩織の目を見て、南九州で優衣に操縦させて大変な目にあったことを思い出す)そうか… ウン、足の骨を折ってもマジックカーペットの操縦には差し支えないから私が操縦するよ」

 左足首を骨折した亜香里が操縦するマジックカーペットは『ロスロリアン』を目指して飛行を始めた。

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