7.仮設住宅と災害公営住宅
この内容には、幾分語弊があるやもである。
幸か不幸か、ご近所でそれが必要になった例が近年ないのでな…
近場で実地な情報源がなかったので、自分も不案内だし書くつもりはなかったが。
ちょいと知っておいて欲しい情報なので、さらっと。
大規模災害で住宅被害が多い場合、仮設住宅が設置される。
よく「2年が期限」「2年は短い」と言い合いになる。
まあ、大規模被害の場合、2年じゃ次の安定した居住先確保が難しいことも多いわな。
それでも2年、というのは何故か。
基本、物理的な事情が大きい。
2年で住めなくなる程壊れるわけではないが、仮設は仮設。そんなに頑丈でも快適でもない。
気密性保温性もわりと頑張ってはいるが最低限だ。湿気易いしカビも生える、夏暑くて冬寒い。
居住条件の劣化が早いと判り切っているところに、住んでいいとは言えないわけ。
仮設を建てる場所も、校庭だったり借地だったりと、本来の土地の利用ができないとあれこれ支障の大きいことが多い。
あくまでも一時的、緊急避難的だからと無理に使っているので、長期固定できない。
関係法令でそこんとこも時間制限がある。
期限内になんともならないと踏んだ場合には、延長させる特別法案なんかを国会とか県議会とかにかける。
たまには国会中継も見てみるべきだろう。
…イラッとすることも、ツッコミどころも多いが。
さて。
仮設で凌ぎつつ、次は災害公営住宅を建て始める。
災害公営住宅になると、普通の公営住宅レベルの建物になる。
建設場所も構造も、長期使用を念頭に入れるので、どうしても整備には時間も費用もかかる。
プレハブとは違うのだよ。
ちなみに、大規模災害で災害公営住宅建築が間に合わない場合、既存の民間賃貸を有期で借上げ、「災害公営住宅」に「みなし」て扱うという手法もある。
普通の公営住宅と違うのはただ一点。
その特定の災害により居住場所を失ったこと。
なお大規模半壊等で、修理をしなければ住めないが、修理する経済力がなく事実上居住不能、というような事情がある場合も含む。
家賃も、災害規模等によって当面の間は無償や低廉である。
が。
この家賃が安いのは制度上「被災者支援」である。
その災害から一定の期間が過ぎると、被災者支援は終了することになっている。
被災からある程度の期間経過すると、災害の影響は軽減、終息という扱いになる。
心理的、経済的に「自分は被災者」と思っても、回復できなくても。法的に「被災は終わった」扱いということになるので、「被災者支援」もなくなる。
これで顕著になるのが家賃だ。「家賃がかかるようになった」「家賃が数倍になった」という話を聞いたことがあるだろうか。その原因がこれ、「被災者支援は有期」というものだ。
仮設住宅のように家を出ろとは言わない。(あれはあれで、住民の安全や健康のためなのだが)
「住むなら住み続けていいけど、普通の住宅扱いになるから普通の家賃払ってね」というわけだ。
つまり家の価値(便利だったり新しかったりすると高い)と家族の安定した収入力(退職金や単発アルバイトは基本含まない)によって計算されるようになる。
建ててすぐだし、土地の確保や整備、資材調達もスピード重視で行っているので、どうしても家の価値が、ひいては通常計算の家賃が高くなってしまう。
家賃低廉化の補助もあるが、被災者支援分よりは小さくなる。
ただし「みなし」の場合は、借上げ期間が終わると、元の大家の管理、つまり普通の民間賃貸物件に戻る。
そのため大概一旦家を空ける必要がある。「みなし」に入居中の家庭は、そこを考えて早めに次の一手を準備することをお勧めする。
もう一つ盲点なのは、被災直後より収入が増える場合が多い、というポイントか。
例えば、被災で職場や仕事がなくなったので年収0円計算になった家庭。
でもそれでは生活に困るので、次の仕事を探すだろう。
幸運にも仕事が見つかり、数年すると仕事も収入も安定する。家賃計算の基礎となる収入も上昇する。
このタイミングがまた、「被災者支援」の終了時期にぶつかりやすい。
家賃低廉化効果が一気に消える以上に、経済的は勿論、心理的ダメージは数倍感じることになる。
数字は仮だが、例えばこんな感じだ。
ピカピカ新築アパートの一室。あれこれ補助で月1万で済んだ。
しかし低廉化補助が全部一度に消えて、次の4月から5万円に「戻って」しまう…
心情的には、家賃を高くしたくはない。
だが、被災者だからと何十年と養う余力は、実のところないのだ。
被災者は毎年の災害で、増える一方なのだから。
それに耐えられる余裕と余力を失った現代社会を、私たちは「豊かさ」と呼んでいるのだろう。
もっと恐ろしいのは。
「被災者って、得してるよね」
そういう一部の一般民衆の妬み心理が、災害から時間が経つにつれ増えていくこと。
東日本大震災で、或いは福島の原発事故で。
被災し避難し、一時金や弔慰金が支払われるというニュースのあった時分に。
覚えているだろうか。
「金を貰ったんだろ」
と被災児童生徒からカツアゲした馬鹿者共のことを。
あの、日本の三分の一が失われたかというような大災害の直後でさえ、そうだったのだ。
被災者とはいえ、自分達がいつまでも労わってもらえると、信じてはいけない。
いずれ「あの家は自分達よりずっと恵まれている」と筋違いの妬みが増えてこないとも限らない。
無論、どこまでも労わり支えてくれる人も大勢いる。
だが残念ながら、そんな残酷な面を持つのも又、人間なのだ。
家族を、生活を、人生を。
自身全てを。
喪ったことを補填できるものなど、どこにもないのに。
災害自体はあるし、人家にダメージが入ったこともある。
人的被害も、極めて少ないといえる。
それでも、他地域よりは小さいのだからなぁ…