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第七話 魔王と密談した!

「あんたなにしてくれてんの?」

 ミオがマジ切れしているのが声で分かった。


 そして、ミオの体が光ったかと思うと、急に僕達と魔王以外が地面に叩きつけられた。


「くっ、スキルと重力魔法か?」

 他の魔族が全く身動きがとれない中、魔王は苦し気に顔を歪ませそう言った。

『支配』と『大魔導』の魔法だろうか?


「私のミリルにケガさせやがって!タダじゃ済まさねーぞ!」

 ミオが前方に腕を出したかと思うと、ミオの周りの空中に冒険者ギルドの時に見た魔方陣が7個出現した。

 そこから生首が7体出てきて一斉に魔法の詠唱を始めた。

 あの生首1体でも本能的にヤバいと感じたのに、それが7体だとどうなるんだ?

 僕は腰を抜かしてへたり込んでしまった。

 周りを見ると他の仲間も同様に座り込んでいた。

 膨大な魔力というのもおこがましいほどの魔力が生首の前方に集まる!しかも7体分!


「『七大賢者の極大魔法』だと!いや…極大魔法より上位の魔法があるのか!?そんなバカな!」

 さすがの魔王もかなり焦っているみたいだ。

 そんな間にもどんどん魔力が膨れ上がり、城の床のあちこちに亀裂が入る。

 しかも某なんとかボールみたいに床の破片が勝手に浮いて上昇してる!


「待て!待ってくれ!!オレが悪かった!謝罪でも何でもするから許してくれ!頼む!!」

 魔王が必死に謝る!

 確かにこんなの向けられたら誰でも降参するわ!


「は?許すと思ってんの?」

 キレたミオは聞く耳持たないみたいだ。

 でもこれは本当にヤバい!城ごと消滅しそうな気がする!


 僕は自分の右手で右頬を殴る。

 体が言うことを聞かなかったので痛みで無理矢理気合いを入れた!

 彼女がキレてるのを宥めるのも彼氏の仕事だよね!

 ミオに近づくのは容易ではなかったが、震える足でなんとか辿り着く。


「ミオ!」

 そう叫んで、彼女の背中から覆い被さった。

 すると、冒険者ギルドの時と同様にあれほどあった魔力が急に霧散し、魔法陣と生首が消えていく。


「タクミ!?」

「ミオ、もうやめよう…」

「でも!あいつが!」

「ミリルは『再生』で治ってるし、魔王も謝ってるし、これ以上は良くないよ」

「でも!……分かった。タクミがそう言うならやめる」

 僕が悲しそうな顔をしていたからだろうか?

 なんとかミオが引いてくれた。


 場所を変えて、城の一室に移った。

 広間がボロボロになったためだ。

 ミリルが目覚めると魔王は深々と頭を下げミリルに謝った。


「あわわわ!」

 ここに魔王に頭を下げられている獣人の子供がいる。


「それで、どーすんの?誠意を見せてくれんでしょーね」

 ミオがどこぞのクレーマーのようだ。

 因みに別室に移ったのは僕達パーティーと魔王、魔王軍幹部6人だ。

 カラスは一応パーティー扱いだ。


「も、勿論だ!出した言葉を引っ込める程、卑怯者ではない!」

「不意打ちしたのに?」

「ぐっ、あれは忘れてくれ。相手の力量を読めなかったオレのミスだ」

 高校生2人と獣人の子供3人(内大人1人)とゴブリンが1匹。

 逆に力量を読めたら凄い!


「たぶんあのまま詠唱が終わっていたら、全員が魔王城ごと消滅し、この辺一体が更地になっていた」

 そう魔王が説明したので幹部の人達も大人しくしている。

 実際、魔王以外の魔族は誰一人あの場で動けなかったし、ミオを止めた僕が魔王から感謝された程だ。


「オレが全力で防御すれば即死は免れたかもしれないが、その後どのみち倒されていただろう」

 魔王は魔族の王なのだから、全滅するのだけは避けたかったのだろう。

 幹部もそれがわかっているのか、呆気なく降参した魔王に対しても変わらず付き従っていた。

 カラスは「先に説明しろ!」と他の幹部から責められていたけど。

 でもカラスもミオが戦うのを見たのは初めてなのだからしょうがないよね。


「あとは、詫びの品を進呈し、お前達の願いに応える形で如何だろうか?」

「詫びの品?」

「ああ、今回迷惑をかけたそこのキツネの獣人、ミリルと言ったか?そう、ミリル嬢に強力な魔宝具を2つ贈ろう」

「私にですか?」

「そうだ、是非受け取って欲しい!」

 なんで魔王がこんなにミリル推しかと言うと、ミオが途中からミリルを『覚醒』し、モフモフソファーで話を聞き始めたのが原因だ。


「美しい…」

 魔王は『覚醒』したミリルを見て開口一番そう言った。

 九尾の狐のミリルが、魔王のタイプにどストライクだったらしい。

 ミオが威嚇して近寄らせないようにしているが、魔王はミリルの方をチラチラと見て意識している。

 思春期かよ!

 僕も通った道だ。


 そんなわけで、魔王はミリルの気を引きたい一心で、カラス曰く貴重な魔宝具を2個もプレゼントしたみたいだ。

 勿論謝罪の意味もあるだろうが…

 今までの魔王の威厳は木っ端微塵だが、そんな魔王を見ても動じない幹部の人達が凄い!忠誠心の賜物だろうか?


 その後、「お前達の望みを言え!」と言うことミオが答える。


「モフモフ出来るやつが欲しい!」

 ミオがそう言うと、魔王と幹部の目線は一人の幹部に止まった。


「えっ!私ですか!」

 そう言って反応したのは、確かにフサフサな毛をした獣人のお姉さんだった。

 ネコの獣人だろうか?

 あの長い毛とピンと立った耳、伸長も高いのでもしかしてメインクーンか!

 確かアメリカで飼われてるネコだったと思う。


「ふむふむ、なかなか」

 ミオはお姉さんを見て頷いている。

 確かにモフモフの代表格と言ったらネコは鉄板だろう。


「ターニャよ!魔王軍幹部として恥じない活躍を期待している!」

 お姉さんの名前はターニャと言うらしい。魔王軍幹部だが可愛いらしい名前だ。

 あと、活躍と言ってもモフモフ要員なのだが…


「ですが!魔王様!」

 流石にターニャさんも反論する。

 いきなりの人身御供なのだからしょうがない。


「これは人間族の情報収集の意味合いもある。勇者達と共に行動し、人間族に怪しい動きがあれば直ぐに報告しろ。その方がこちらも対応しやすいからな」

 魔王の正論攻撃!

 しかも、堂々とスパイ宣言だ!


「!!受け賜りました!」

 ターニャさんは納得がいった顔で頷いていた。

 メチャクチャチョロいな!


「それではミオ様、これから宜しくお願いします」

「呼び方どうしよう?ターニャだからタマで良いよね!」

「タ、タマ?」

「それじゃ、タマ!ミリルが軍団長だから、指示に従って!」

「軍団長!流石魔王様が好意を抱かれる御方だ!私も精一杯お仕え致します!」

 こうして、ミリルは魔王から好意を持たれ、魔王軍幹部を部下にした。


「…ミリルばっかりずるい」

「そうですね、構って欲しいです…」

 レンとムーちゃんが拗ねていた。


 僕は別件で魔王に色々聞きたいことがあったので、ついでに聞いてみる。


「魔王さんは、異世界召喚をご存知ですか?」

「ああ、使用中に大きな魔力の乱れがあるからな。前に調べたことがある」

「僕達が召喚された国の女王は、魔王を倒せば元の世界に戻れると言ってたんですが、本当ですか?」

「オレがその召喚自体に全く関わっていないのに、何でオレが関係あるんだ?」

「やっぱり、そうですよね!でももしかしたら強大な魔力が召喚の邪魔しているみたいなことはないですか?」

「先程オレより桁違いの魔力を持った者に降参したのだが」

「………」

「まあ、お前達が騙されているのだろうな。しかし、そうなるとそのクラスメイトとやらがオレを倒しに来ることになるな」

「ミオの戦闘力が異常ですので、城が消滅するようなことはないと思います。僕達も出会ったやつには伝えますので」

「そうか、もしここに辿り着く者がいればオレからも話しておこう。お前らの名前を出せば、疑いはせぬだろう」

「お願いします」


 僕の中の疑問がひとつ消えた。

 やっぱりあの王国と学校のスピーカーの声の神様はたぶんグルだろう。今のところ何も行動を起こしてはいないが対策は考えておくべきだ。


 話が終わったかと思うと、魔王が僕の傍に寄ってきて小声で耳打ちしてきた。


「何とかミリル嬢との仲を取り持ってはくれぬか?一緒に食事するだけでも良いのだ。長く生きてきたが、このような胸の高鳴りは初めてなのだ!」

「………」

「あの容姿、あの表情、あの声…オレはあの人に会うために魔王になったに違いない!」

 魔王が恋の病にかかっている。

 盲目状態を併発しており、かなりの重症だ!


「そうですね、僕も協力します!」

 片思い期間が長かった僕にとって、他人事ではないような気がして引き受けてしまった。


「でもミリルが嫌がることはしないですからね」

「当たり前だ!あの人の悲しむ顔は見たくない!そうだ……過去のオレは何て事をしてしまったんだ!あの時の自分を殺したくなる」

 魔王が勝手に落ち込んでしまった。


「まだ大丈夫です!さっきのプレゼント作戦で少しは挽回してるはずです!」

「そ、そうか!では定期的にターニャに連絡させるように言ってあるから、その時にお前…お前では不味いな、名はタクミと言ったか…タクミ殿にアドバイスを貰うとしよう!」

 こうして、僕と魔王の密談は終わった。



 そして、ふと僕は思った。

 何で異世界で魔王の恋愛相談を受け、協力しているのだろうかと。











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